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発展編
恋心……溢れて 14
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「瑞樹、起きたのか。しかし、よく眠ったな。よっぽど疲れたのだろう」
宗吾さんに言われて、明け方風呂場で僕たちがした行為をまざまざと思い出して、赤面してしまった。
「あれ? お兄ちゃん、お熱かな。お顔がなんだか赤いよ」
「えっ、あっこれは違うよ。その……お布団が……暑かったのかも」
「なら、よかった~」
ふぅ危ない。
一年分の……階段を上るように積み重ねられた僕と宗吾さんの我慢は、思ったより重症だな。
誰かと付き合っていく上で……躰を重ねることが全てではないのだが、人が人と愛を伝え合う大切な行為だとも思う。
朝食後、宗吾さんは約束通りにコータくんのお母さんに電話してくれた。
「もしもしコータくんのお母さんですか、滝沢です。あの、実は少し幼稚園での様子を聞きたくて……」
電話を切ると、宗吾さんは突然、今から遊園地に行こうと僕たちを誘った。
「なっいいだろう。今日はコータ君たちは遊園地に行くそうだ。俺たちも遊びに行くぞ!」
「わぁ~コータくんと会えるの? しかもゆうえんちだなんて、パパーありがとう!うれしいよ!」
芽生くんがパァーッと明るい顔になる。
僕も小さい頃遊園地が大好きだったから、その気持ち分かるよ。
「あぁ今、誘ってもらったんだ。瑞樹も一緒だぞ」
「あの……でも、僕もいいのですか」
「馬鹿、当たり前だろう」
「ですが……」
つい遠慮してしまう癖は相変わらず抜けないな。
でもたまには僕抜きで……血のつながった親子水入らずの時間も大切なのではと思ってしまって……
「瑞樹……君は俺にとって、もう家族なんだよ。芽生のこと、おこがましいが一緒に育てて欲しい」
「……はい」
さらりと、本当に簡単にそんなことを言ってのける宗吾さんが、やっぱり好きだ。いつも僕がウジウジ悩むことを、大股で軽々と飛び越えていってしまう!
宗吾さんといると景色が違う!
今までと全然違うのが、いい!
「さぁ早く支度するぞ! おっとまずは瑞樹はその寝癖を直さないと」
「あっ」
髪に慌てて手をやると、宗吾さんに乱暴にドライヤーしてもらったせいなのか、あらぬ方向に跳ねていた。
ううう……何だか恥ずかしい。もともとくせ毛で跳ねやすいから気を付けていたのに。でも同時にこうやって次々に素の姿を見せていくんだなと苦笑してしまった。
「お兄ちゃんの髪の毛、ピョンピョンしていて、ひよこみたいで、かわいいねぇ」
「そっそう?」
「ボク。おにいちゃんがよく着ている、あのひよこ色のベスト好き~今日もあれがいいな」
「うん、そうするね」
絶対に芽生くんは宗吾さん似だ。
僕をその気にさせるのが上手すぎるよ。
ここで暮らすようになってから、僕自身が幼くなっていくような、不思議な安心感を抱いている。
本当に居心地がいい空間だ。
ここを僕の家と……呼んでいいのかな。
まだ夢みたいだ。
信じられない程、落ち着いている……
明るい光に満ちた日常が、心から愛おしい。
****
そんな訳で本当に突然、以前訪れた都会のど真ん中にある近代的な遊園地にやってきた。
懐かしいな……ここに三人でやってきたのは、まだ僕と宗吾さんが出会って間もない頃だ。あの時、ふたりの想いを初めて重ね、唇を重ねた観覧車を見上げると、胸の奥がキュンっとしてくる。
「瑞樹何を見ている?」
「あ……あの、観覧車を」
「あぁあそこか。俺達にとった大切な場所だな。懐かしいな」
芽生くんと手を繋いで、3人で観覧車を見上げた。
「わぁ、あれすごく大きいね。ボクも乗りたい」
「うん、今日は三人で乗ろうね」
「やったぁ!」
芽生くんが嬉しそうに手をブンブン振った。
「宗吾さん……こっちの観覧車はやっぱり大きいですね」
「函館にもあったか」
「大沼にはなかったですが、函館市内に『こどもの遊園地』があって……大沼の両親と何度か行った想い出があります。そこには日本最古とも言われる観覧車があって、ふたり乗りでコトコト上昇していくのが好きだったんです」
「へぇ大きいのか」
「いえ……たぶん直径10メートルほどの小さなものでしたよ。でもこっちのようにガラスの仕切りがないので、とても爽快感があって面白かったんです」
「ふぅん……空中観覧車か」
「確かそんな名前でした。懐かしいな」
「よしっ明日はそれに乗ろう」
「えっ! 明日って……?」
一瞬何を言われたか分からなかった。
「あと3日間、君も俺も休みだろう。もうとっくにチケット手配済みだ!」
宗吾さんがさらりとそんな事を言うから、本当に驚いた。
「なんで……」
「サプライズだ」
「びっくりしました」
「驚いてもらえて嬉しいよ。おっと、今すぐキスしたくなるから、そんな顔するな」
「あっ……」
「函館の両親と大沼の両親に、俺達が同棲を始めたことを一番に報告しないとな」
「……嬉しいです」
なんというサプライズなんだ。
宗吾さんってすごい。僕が心の奥底で密に思っていたことを掬いだして、実現させてしまうのだから。
宗吾さん……あなたへの恋心が……溢れていく。
どこまでもどこまでも……五月の風に乗って広がっていく。
『恋心……溢れて』了
宗吾さんに言われて、明け方風呂場で僕たちがした行為をまざまざと思い出して、赤面してしまった。
「あれ? お兄ちゃん、お熱かな。お顔がなんだか赤いよ」
「えっ、あっこれは違うよ。その……お布団が……暑かったのかも」
「なら、よかった~」
ふぅ危ない。
一年分の……階段を上るように積み重ねられた僕と宗吾さんの我慢は、思ったより重症だな。
誰かと付き合っていく上で……躰を重ねることが全てではないのだが、人が人と愛を伝え合う大切な行為だとも思う。
朝食後、宗吾さんは約束通りにコータくんのお母さんに電話してくれた。
「もしもしコータくんのお母さんですか、滝沢です。あの、実は少し幼稚園での様子を聞きたくて……」
電話を切ると、宗吾さんは突然、今から遊園地に行こうと僕たちを誘った。
「なっいいだろう。今日はコータ君たちは遊園地に行くそうだ。俺たちも遊びに行くぞ!」
「わぁ~コータくんと会えるの? しかもゆうえんちだなんて、パパーありがとう!うれしいよ!」
芽生くんがパァーッと明るい顔になる。
僕も小さい頃遊園地が大好きだったから、その気持ち分かるよ。
「あぁ今、誘ってもらったんだ。瑞樹も一緒だぞ」
「あの……でも、僕もいいのですか」
「馬鹿、当たり前だろう」
「ですが……」
つい遠慮してしまう癖は相変わらず抜けないな。
でもたまには僕抜きで……血のつながった親子水入らずの時間も大切なのではと思ってしまって……
「瑞樹……君は俺にとって、もう家族なんだよ。芽生のこと、おこがましいが一緒に育てて欲しい」
「……はい」
さらりと、本当に簡単にそんなことを言ってのける宗吾さんが、やっぱり好きだ。いつも僕がウジウジ悩むことを、大股で軽々と飛び越えていってしまう!
宗吾さんといると景色が違う!
今までと全然違うのが、いい!
「さぁ早く支度するぞ! おっとまずは瑞樹はその寝癖を直さないと」
「あっ」
髪に慌てて手をやると、宗吾さんに乱暴にドライヤーしてもらったせいなのか、あらぬ方向に跳ねていた。
ううう……何だか恥ずかしい。もともとくせ毛で跳ねやすいから気を付けていたのに。でも同時にこうやって次々に素の姿を見せていくんだなと苦笑してしまった。
「お兄ちゃんの髪の毛、ピョンピョンしていて、ひよこみたいで、かわいいねぇ」
「そっそう?」
「ボク。おにいちゃんがよく着ている、あのひよこ色のベスト好き~今日もあれがいいな」
「うん、そうするね」
絶対に芽生くんは宗吾さん似だ。
僕をその気にさせるのが上手すぎるよ。
ここで暮らすようになってから、僕自身が幼くなっていくような、不思議な安心感を抱いている。
本当に居心地がいい空間だ。
ここを僕の家と……呼んでいいのかな。
まだ夢みたいだ。
信じられない程、落ち着いている……
明るい光に満ちた日常が、心から愛おしい。
****
そんな訳で本当に突然、以前訪れた都会のど真ん中にある近代的な遊園地にやってきた。
懐かしいな……ここに三人でやってきたのは、まだ僕と宗吾さんが出会って間もない頃だ。あの時、ふたりの想いを初めて重ね、唇を重ねた観覧車を見上げると、胸の奥がキュンっとしてくる。
「瑞樹何を見ている?」
「あ……あの、観覧車を」
「あぁあそこか。俺達にとった大切な場所だな。懐かしいな」
芽生くんと手を繋いで、3人で観覧車を見上げた。
「わぁ、あれすごく大きいね。ボクも乗りたい」
「うん、今日は三人で乗ろうね」
「やったぁ!」
芽生くんが嬉しそうに手をブンブン振った。
「宗吾さん……こっちの観覧車はやっぱり大きいですね」
「函館にもあったか」
「大沼にはなかったですが、函館市内に『こどもの遊園地』があって……大沼の両親と何度か行った想い出があります。そこには日本最古とも言われる観覧車があって、ふたり乗りでコトコト上昇していくのが好きだったんです」
「へぇ大きいのか」
「いえ……たぶん直径10メートルほどの小さなものでしたよ。でもこっちのようにガラスの仕切りがないので、とても爽快感があって面白かったんです」
「ふぅん……空中観覧車か」
「確かそんな名前でした。懐かしいな」
「よしっ明日はそれに乗ろう」
「えっ! 明日って……?」
一瞬何を言われたか分からなかった。
「あと3日間、君も俺も休みだろう。もうとっくにチケット手配済みだ!」
宗吾さんがさらりとそんな事を言うから、本当に驚いた。
「なんで……」
「サプライズだ」
「びっくりしました」
「驚いてもらえて嬉しいよ。おっと、今すぐキスしたくなるから、そんな顔するな」
「あっ……」
「函館の両親と大沼の両親に、俺達が同棲を始めたことを一番に報告しないとな」
「……嬉しいです」
なんというサプライズなんだ。
宗吾さんってすごい。僕が心の奥底で密に思っていたことを掬いだして、実現させてしまうのだから。
宗吾さん……あなたへの恋心が……溢れていく。
どこまでもどこまでも……五月の風に乗って広がっていく。
『恋心……溢れて』了
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