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発展編
分かり合えること 16
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「瑞樹のこと、本気で好きなのか」
「えっ」
瑞樹が眠ってしまったので、瑞樹の彼氏とふたりで飲む羽目になっていた。俺が上京できるチャンスがそう多くないから、今のうちに聞けることは聞いておきたい。
「あー悪いな。不躾に……その、俺は都会なんて数回しか来た事ないから分からないんだよ。男と男とか……そういう関係の人も身近にいなかったし。その……受け入れられないとは別の次元で……なんだかまだ信じられなくてな」
ただ男が男に性的に狙われるというのは理解していた。何故なら瑞樹が高校生位の時、変質者の男に付きまとわれる事件があったから。あの頃は暫く学校の送り迎えをしてやったんだ。本当に心配だったし大変だった。
そんな危なっかしい瑞樹をひとりで上京させるのが不安で、古めかしく規則の厳しい大学の寮に入れたんだ。寮は大学の敷地内にあるから安全だと信じて。
瑞樹の方は一体いつから男を受け入れられるようになったんだ?お前には高校時代はちゃんと彼女がいたよな?同じ高校の……あーでも彼女は札幌の大学に進み瑞樹は東京だったから、遠距離で結局駄目になったんだっけ。
「成程……そういうことですか。お兄さん、さっき俺たちのキスをちゃっかり見てましたよね」
うっ……嫌な男だ。冷静に痛い所をついてくる。
「あ?あぁ悪かったな。その……さっきは興味本位だったことを認めるよ」
「どうでした?男同士でキスし合うのを見るのは、気持ち悪かったですか」
さっき盗み見した二人のキスシーンを回想してみたが、気持ち悪くなんてなかった。正直実際にこの目で見るまでは、吐くほど気持ちわるいんじゃと危惧していたが全然違った。ふたりはごく自然に唇を重ねていた。そしてあのいつも冷静で大人しかった瑞樹が頬を染め、耳たぶを赤くして自分からも求めていたのが分かった。
「いや……違う。そういう感情はなかった。それより瑞樹が幸せそうな顔していると……」
「ありがとうございます。そう思っていただけてホッとしました」
「くそっやっぱお前、同い年と思えんほど落ち着いてんな。なんだか老成してんぞ」
「老成?はは……俺の方も……実は先に話しておかないといけないことがあって」
「なんだ?これ以上驚かせる気か」
「……驚くかもしれません。実は俺は離婚歴があって、四歳の息子と暮らしています」
「なんだって!」
呆気にとられた。瑞樹が男と付き合っているだけでもカルチャーショックなのに、離婚だと!子供だと!
「おいっ!まさか今日は小さな子供を一人にしてここにいるのか」
「いや、金曜日は俺の実家に泊まることになっていて」
「あぁそうか。なら良かった」
おいおい、ここは怒る所だろう。そんな立場で瑞樹と付き合うなんて!!と……なのに、子供のことを心配してしまうなんて……俺って一体。
「心配してくれたんですね。芽生……あっ息子の名前です。瑞樹は芽生のこと実の弟のように可愛がってくれています。やっぱり実際に弟さんがいるから慣れているんですね」
「……そうだな。あいつの弟も……その位の歳だったからな」
「え?」
「あぁ……いや何でもない」
俺と潤が瑞樹とは血のつながらない兄弟だということは伏せておこう。俺は瑞樹のことをちゃんと血のつながった実の兄弟だと、引き取った当初から思っているのだから。潤はともかく……
「お前さんの事情はまぁ分かったよ。話してくれてありがとうな。どんな事情があったか知らんが、男手一つで小さな子供を育てるのは大変だろう」
つい彼の立場に寄り添った話をすると、滝沢って男は破顔した。
「あぁやっぱり瑞樹のお兄さんらしい発言ですね。瑞樹と考え方が似ている。見かけは真逆なのに」
「おい……それよりまだ帰らないのか、もう零時回ってんぞ」
「あー実は車で来たので帰れません。こんなにビール飲まされては」
「ったく世話ないな。いいぞ泊ってけ。ってここは瑞樹の家だがな」
「ありがとうございます。で、俺どこで眠れば?」
瑞樹のベッドで眠りたい!って顔に書いてあるが絶対に駄目だ!駄目!
どうせ俺が函館に戻ったら……ふたりは……あー変なこと想像しちまったじゃねーか。
「あのソファ借りても?」
お?殊勝なことを。
「あのさぁ……お前たち、ぶっちゃけ深い関係になったのか……もう」
酒の勢いでとうとう聞いてしまった。言った傍から俺の方が赤面してしまう。滝沢は驚いた顔をした後、朗らかに笑った。
「ははは……お兄さんの心配はそこですか。安心してください。まだキス止まりですよ」
「そっか……そうなのか」
どこかホッとしてた。いや……もちろんこの部屋に住んでいた奴とはそうではなかっただろうが……この滝沢という男が思ったより忍耐強いことにホッとした。
そして瑞樹を大事に尊重してくれているのが、彼の言動からしっかりと伝わって来た。
「えっ」
瑞樹が眠ってしまったので、瑞樹の彼氏とふたりで飲む羽目になっていた。俺が上京できるチャンスがそう多くないから、今のうちに聞けることは聞いておきたい。
「あー悪いな。不躾に……その、俺は都会なんて数回しか来た事ないから分からないんだよ。男と男とか……そういう関係の人も身近にいなかったし。その……受け入れられないとは別の次元で……なんだかまだ信じられなくてな」
ただ男が男に性的に狙われるというのは理解していた。何故なら瑞樹が高校生位の時、変質者の男に付きまとわれる事件があったから。あの頃は暫く学校の送り迎えをしてやったんだ。本当に心配だったし大変だった。
そんな危なっかしい瑞樹をひとりで上京させるのが不安で、古めかしく規則の厳しい大学の寮に入れたんだ。寮は大学の敷地内にあるから安全だと信じて。
瑞樹の方は一体いつから男を受け入れられるようになったんだ?お前には高校時代はちゃんと彼女がいたよな?同じ高校の……あーでも彼女は札幌の大学に進み瑞樹は東京だったから、遠距離で結局駄目になったんだっけ。
「成程……そういうことですか。お兄さん、さっき俺たちのキスをちゃっかり見てましたよね」
うっ……嫌な男だ。冷静に痛い所をついてくる。
「あ?あぁ悪かったな。その……さっきは興味本位だったことを認めるよ」
「どうでした?男同士でキスし合うのを見るのは、気持ち悪かったですか」
さっき盗み見した二人のキスシーンを回想してみたが、気持ち悪くなんてなかった。正直実際にこの目で見るまでは、吐くほど気持ちわるいんじゃと危惧していたが全然違った。ふたりはごく自然に唇を重ねていた。そしてあのいつも冷静で大人しかった瑞樹が頬を染め、耳たぶを赤くして自分からも求めていたのが分かった。
「いや……違う。そういう感情はなかった。それより瑞樹が幸せそうな顔していると……」
「ありがとうございます。そう思っていただけてホッとしました」
「くそっやっぱお前、同い年と思えんほど落ち着いてんな。なんだか老成してんぞ」
「老成?はは……俺の方も……実は先に話しておかないといけないことがあって」
「なんだ?これ以上驚かせる気か」
「……驚くかもしれません。実は俺は離婚歴があって、四歳の息子と暮らしています」
「なんだって!」
呆気にとられた。瑞樹が男と付き合っているだけでもカルチャーショックなのに、離婚だと!子供だと!
「おいっ!まさか今日は小さな子供を一人にしてここにいるのか」
「いや、金曜日は俺の実家に泊まることになっていて」
「あぁそうか。なら良かった」
おいおい、ここは怒る所だろう。そんな立場で瑞樹と付き合うなんて!!と……なのに、子供のことを心配してしまうなんて……俺って一体。
「心配してくれたんですね。芽生……あっ息子の名前です。瑞樹は芽生のこと実の弟のように可愛がってくれています。やっぱり実際に弟さんがいるから慣れているんですね」
「……そうだな。あいつの弟も……その位の歳だったからな」
「え?」
「あぁ……いや何でもない」
俺と潤が瑞樹とは血のつながらない兄弟だということは伏せておこう。俺は瑞樹のことをちゃんと血のつながった実の兄弟だと、引き取った当初から思っているのだから。潤はともかく……
「お前さんの事情はまぁ分かったよ。話してくれてありがとうな。どんな事情があったか知らんが、男手一つで小さな子供を育てるのは大変だろう」
つい彼の立場に寄り添った話をすると、滝沢って男は破顔した。
「あぁやっぱり瑞樹のお兄さんらしい発言ですね。瑞樹と考え方が似ている。見かけは真逆なのに」
「おい……それよりまだ帰らないのか、もう零時回ってんぞ」
「あー実は車で来たので帰れません。こんなにビール飲まされては」
「ったく世話ないな。いいぞ泊ってけ。ってここは瑞樹の家だがな」
「ありがとうございます。で、俺どこで眠れば?」
瑞樹のベッドで眠りたい!って顔に書いてあるが絶対に駄目だ!駄目!
どうせ俺が函館に戻ったら……ふたりは……あー変なこと想像しちまったじゃねーか。
「あのソファ借りても?」
お?殊勝なことを。
「あのさぁ……お前たち、ぶっちゃけ深い関係になったのか……もう」
酒の勢いでとうとう聞いてしまった。言った傍から俺の方が赤面してしまう。滝沢は驚いた顔をした後、朗らかに笑った。
「ははは……お兄さんの心配はそこですか。安心してください。まだキス止まりですよ」
「そっか……そうなのか」
どこかホッとしてた。いや……もちろんこの部屋に住んでいた奴とはそうではなかっただろうが……この滝沢という男が思ったより忍耐強いことにホッとした。
そして瑞樹を大事に尊重してくれているのが、彼の言動からしっかりと伝わって来た。
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