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発展編
尊重しあえる関係 7
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「滝沢さん、随分遅いな」
ホテルのロビーで痺れを切らして待っていると、電話が入った。
「もしもし林さん?悪い。ちょっと息子のことで手間取って出るのが遅くなった。先にインタビュー出来そうなカップルの目星をつけておいてもらえるか」
「いいよ。要望は?」
「清楚系の美男美女でよろしく!」
「了解!」
なるほど、息子さんのことが遅刻の理由か。彼がシングルファザーで奮闘していることは知っているので、オレで出来ることは協力したいし応援したい。
カメラマンのオレと広告代理店に勤める滝沢さんとは、仕事で何回か顔を合わせるうちに意気投合した仲で、最近は滝沢さんの取材に専属で同行する事が多い。
二年前に……出版社のパーティーの二次会で、恋人が男だってことをうっかりカムアウトしてしまったオレの話を、親身に聞いてくれたのが滝沢さんだった。当時滝沢さんは女性と結婚していたが、本当の自分を隠すことに疲れてしまったと、オレの方も愚痴を聞いてやった。結局その後離婚したんだよな。何があったか分からないが、一人息子を滝沢さんが引き取ることになったのは聞いていた。おっと……今日はそういうことは関係ないよな。何しろ健全な男女のカップルの取材なんだから。
ホテルの披露宴を予約しているカップルにモデルになってもらい、大手の『7℃ムーン』宝飾会社の結婚指輪を宣伝をするというコンセプトだそうだ。
ホテルで堂々と結婚披露宴なんて、全くオレたちには縁がない話だよな。
披露宴の打ち合わせコーナーは地下1階。滝沢さんはもう少しかかりそうだから先に降りて、モデルになりそうなカップルを探してみるとするか。
****
受付には事前に『7℃ムーン』の方からの取材連絡が入っていたので、名刺を見せるとスムーズに中に入れてもらえた。室内を見渡すと5組ほどのカップルが仲良さそうに、披露宴の打ち合わせをしていた。
へぇ……男も女も蕩けるような笑顔を浮かべて幸せそうだな。
さてと、どのカップルに辺りをつけるか。
うーん、あっちはちょっと男性が歳取りすぎか。こっちは女性が年上すぎで表情が硬すぎるな。丹念にチェックしていくと、一番奥で打ち合わせ中の若いカップルに目が留まった。
まず広告の主役になる女性を確認すると、まるでモデルのように細くてすらっとしていて可愛いじゃないか。指もほっそり長くて完璧だ。よしっ次は男性だ。どうかすごい年上とかじゃありませんように。彼女と釣り合うカッコいい男性希望だ。
おそるおそる女性の横を見ると、これがまぁまた……オレの恋人とは正反対の清楚系の青年じゃないか。しかも顔が小さくて黒目がちで、えらい別嬪さんだ。
なんだよ、美男美女過ぎだろう。二人とも絵に描いたように完璧だ。
優しい笑みを浮かべながら女性と話している姿も、すでに撮影が始まっているようにいい雰囲気だ。しかし本当に素直そうな青年だな。うっかり別の目で見そうになり、慌てて仕事モードに戻った。
目星のカップルを見つけたことを、速攻滝沢さんにメールした。
「よし。俺ももうロビーに着く。ちょっと荷物が多いから一旦上に上がってもらえるか」
「了解!」
****
「パパーつぎはいつお兄ちゃんにあえるの?」
「来週の日曜日には会えるよ」
「えーほんとうはきょうがよかったのに」
「ごめんな。パパも瑞樹も今日は仕事なんだ」
「つまんない!つまんない!」
ちいさな芽生が涙目になっていくので、頭を撫でてやった。
「ごめん、ごめん。パパ今日はなるべく早く帰って来るから、おばあちゃんちでいい子にしていてくれ」
「うーん」
「ほら宗吾、もう行きなさい。仕事に遅刻するわよ、ところでそのお兄ちゃんって、どなたのことなの?」
おっと……母親に説明するのはまだ早いよな。
「時期が来たらちゃんと話しますよ、すいませんがよろしくお願いします」
芽生がピクニックに行けないことでふてくされてしまって、なかなか祖母の家に預けられなかった。手こずったな。すっかり遅刻だ。芽生のためにもなるべく休日出勤は避けたいが、致し方がない。
ホテルロビーに着くと、カメラマンの林さんが満面の笑みで立っていた。
「悪かったな、遅れて」
「いや~おかげで一足先に目の保養してきたよ」
「ん?どういう意味だ」
「理想的なカップルがいてねぇ。打ち合わせコーナーに」
「へぇ、じゃあ今日の仕事は安泰だな。林さんのお眼鏡に適うなら」
「あぁ、それがな、女性はもちろんだが、男性の方が特に最高なんだ」
「ははっ、変な目で見るなよ。これから結婚するカップルなんだから」
「まぁとにかく早く来てくれよ」
妙に浮かれた林さんの後について、地下へ向かった。
ホテルのロビーで痺れを切らして待っていると、電話が入った。
「もしもし林さん?悪い。ちょっと息子のことで手間取って出るのが遅くなった。先にインタビュー出来そうなカップルの目星をつけておいてもらえるか」
「いいよ。要望は?」
「清楚系の美男美女でよろしく!」
「了解!」
なるほど、息子さんのことが遅刻の理由か。彼がシングルファザーで奮闘していることは知っているので、オレで出来ることは協力したいし応援したい。
カメラマンのオレと広告代理店に勤める滝沢さんとは、仕事で何回か顔を合わせるうちに意気投合した仲で、最近は滝沢さんの取材に専属で同行する事が多い。
二年前に……出版社のパーティーの二次会で、恋人が男だってことをうっかりカムアウトしてしまったオレの話を、親身に聞いてくれたのが滝沢さんだった。当時滝沢さんは女性と結婚していたが、本当の自分を隠すことに疲れてしまったと、オレの方も愚痴を聞いてやった。結局その後離婚したんだよな。何があったか分からないが、一人息子を滝沢さんが引き取ることになったのは聞いていた。おっと……今日はそういうことは関係ないよな。何しろ健全な男女のカップルの取材なんだから。
ホテルの披露宴を予約しているカップルにモデルになってもらい、大手の『7℃ムーン』宝飾会社の結婚指輪を宣伝をするというコンセプトだそうだ。
ホテルで堂々と結婚披露宴なんて、全くオレたちには縁がない話だよな。
披露宴の打ち合わせコーナーは地下1階。滝沢さんはもう少しかかりそうだから先に降りて、モデルになりそうなカップルを探してみるとするか。
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受付には事前に『7℃ムーン』の方からの取材連絡が入っていたので、名刺を見せるとスムーズに中に入れてもらえた。室内を見渡すと5組ほどのカップルが仲良さそうに、披露宴の打ち合わせをしていた。
へぇ……男も女も蕩けるような笑顔を浮かべて幸せそうだな。
さてと、どのカップルに辺りをつけるか。
うーん、あっちはちょっと男性が歳取りすぎか。こっちは女性が年上すぎで表情が硬すぎるな。丹念にチェックしていくと、一番奥で打ち合わせ中の若いカップルに目が留まった。
まず広告の主役になる女性を確認すると、まるでモデルのように細くてすらっとしていて可愛いじゃないか。指もほっそり長くて完璧だ。よしっ次は男性だ。どうかすごい年上とかじゃありませんように。彼女と釣り合うカッコいい男性希望だ。
おそるおそる女性の横を見ると、これがまぁまた……オレの恋人とは正反対の清楚系の青年じゃないか。しかも顔が小さくて黒目がちで、えらい別嬪さんだ。
なんだよ、美男美女過ぎだろう。二人とも絵に描いたように完璧だ。
優しい笑みを浮かべながら女性と話している姿も、すでに撮影が始まっているようにいい雰囲気だ。しかし本当に素直そうな青年だな。うっかり別の目で見そうになり、慌てて仕事モードに戻った。
目星のカップルを見つけたことを、速攻滝沢さんにメールした。
「よし。俺ももうロビーに着く。ちょっと荷物が多いから一旦上に上がってもらえるか」
「了解!」
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「パパーつぎはいつお兄ちゃんにあえるの?」
「来週の日曜日には会えるよ」
「えーほんとうはきょうがよかったのに」
「ごめんな。パパも瑞樹も今日は仕事なんだ」
「つまんない!つまんない!」
ちいさな芽生が涙目になっていくので、頭を撫でてやった。
「ごめん、ごめん。パパ今日はなるべく早く帰って来るから、おばあちゃんちでいい子にしていてくれ」
「うーん」
「ほら宗吾、もう行きなさい。仕事に遅刻するわよ、ところでそのお兄ちゃんって、どなたのことなの?」
おっと……母親に説明するのはまだ早いよな。
「時期が来たらちゃんと話しますよ、すいませんがよろしくお願いします」
芽生がピクニックに行けないことでふてくされてしまって、なかなか祖母の家に預けられなかった。手こずったな。すっかり遅刻だ。芽生のためにもなるべく休日出勤は避けたいが、致し方がない。
ホテルロビーに着くと、カメラマンの林さんが満面の笑みで立っていた。
「悪かったな、遅れて」
「いや~おかげで一足先に目の保養してきたよ」
「ん?どういう意味だ」
「理想的なカップルがいてねぇ。打ち合わせコーナーに」
「へぇ、じゃあ今日の仕事は安泰だな。林さんのお眼鏡に適うなら」
「あぁ、それがな、女性はもちろんだが、男性の方が特に最高なんだ」
「ははっ、変な目で見るなよ。これから結婚するカップルなんだから」
「まぁとにかく早く来てくれよ」
妙に浮かれた林さんの後について、地下へ向かった。
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