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14章
それぞれの想い 27
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「少し車の窓を開けてもいいか」
「もちろんだ」
舞い込む春風が、優しい想い出を運んでくれる。
ついさっきの出来事だ。
『青年僧侶の会』に行く翠を山門まで見送るために背後を歩いていると、翠が突然道端にしゃがみ込んだ。
「翠、どうした? 具合でも悪いのか」
「違うよ。ほらここにクローバーが群生している」
「へぇ? 竹林だけかと思ったら、ここだけいつの間にか原っぱになっているな」
「ここ、芽生くんの……楽しい遊び場になりそうだね」
「そうだな。確か白詰草って指輪や王冠を作れるんだよな」
俺も翠の横にしゃがんでみた。
「翠に指輪をつくってやるよ」
「え? どうやるんだ。僕が作りたい」
「分かったよ。じゃあ教えてやるよ」
翠が子供のように目を輝かせた。
「こう? このあとは?」
「そうそう、あとはここを丸め茎をまとめれば、指輪の完成だ」
「わ……出来た。僕にも出来た」
不器用な翠にしては素早い飲み込みで、上出来だった。
「なぁ、流……目を閉じて」
「ん?」
ここはプライベート・ガーデンのようなものだ。キスでもくれるのかと期待すると、指に何か通された。
「いいよ。目を開けて」
翠が作ったシロツメクサの指輪が、俺の人差し指に通されていた。
「どう?」
「なんで左手に?」
「何となく……ここが落ち着くなって」
「そうか、いい場所だ」
俺は知っている。人差し指は英語ではIndex finger《インデックスフィンガー》なので、人差し指につける指輪はインデックス・リングと呼ばれている。
人差し指は、物事を指すために使う指なので夢や願望を象徴し、集中力を高め幸運へと導いてくれる意味が強いそうだ。
「あの……ごめん。えっと……薬指にするべきだった?」
翠が照れ臭そうに謝るので、『違う』と首を横に振った。
「ここがいい。ここが俺たちの場所だ」
右手は「現実」左手は「精神」と結び付きがある。だから左手人差し指は、己の気持ちを導く指なのだ。つまりここに指輪をつけると前向きな気持ちになれる!
翠との関係にもっと自信を持ちたい。
翠と歩む人生にいつまでも積極的な気持ちでいたい。
そんな気持ちの後押ししてくれる場所だった。
「翠、ありがとうな。俺に清らかな指輪を贈ってくれて」
「な……そんな……シロツメクサで作った指輪でそんなに喜ばれたら……困るよ」
「だが、最高の贈り物だよ」
「も、もう――そんな顔するな」
「どんな顔だ?」
「カッコイイよ。豪快な流が繊細な白詰草を指につけているのが溜らないんだ」
翠は真っ赤になりながら教えてくれた。
「なんだ? ギャップ萌えかよ?」
「も、もうっ、言わないでくれ」
「ははっ、翠の百面相が見られて嬉しいよ」
「くすっ、そうだね。僕……朝から笑ってばかりだ」
「俺たち……幸せだな」
「あぁ」
今日みたいな一時も、至福の時。
小さな幸せは、確かに俺たちの周りにも転がっている。
見つけられるかどうかは、俺たち次第。
「もちろんだ」
舞い込む春風が、優しい想い出を運んでくれる。
ついさっきの出来事だ。
『青年僧侶の会』に行く翠を山門まで見送るために背後を歩いていると、翠が突然道端にしゃがみ込んだ。
「翠、どうした? 具合でも悪いのか」
「違うよ。ほらここにクローバーが群生している」
「へぇ? 竹林だけかと思ったら、ここだけいつの間にか原っぱになっているな」
「ここ、芽生くんの……楽しい遊び場になりそうだね」
「そうだな。確か白詰草って指輪や王冠を作れるんだよな」
俺も翠の横にしゃがんでみた。
「翠に指輪をつくってやるよ」
「え? どうやるんだ。僕が作りたい」
「分かったよ。じゃあ教えてやるよ」
翠が子供のように目を輝かせた。
「こう? このあとは?」
「そうそう、あとはここを丸め茎をまとめれば、指輪の完成だ」
「わ……出来た。僕にも出来た」
不器用な翠にしては素早い飲み込みで、上出来だった。
「なぁ、流……目を閉じて」
「ん?」
ここはプライベート・ガーデンのようなものだ。キスでもくれるのかと期待すると、指に何か通された。
「いいよ。目を開けて」
翠が作ったシロツメクサの指輪が、俺の人差し指に通されていた。
「どう?」
「なんで左手に?」
「何となく……ここが落ち着くなって」
「そうか、いい場所だ」
俺は知っている。人差し指は英語ではIndex finger《インデックスフィンガー》なので、人差し指につける指輪はインデックス・リングと呼ばれている。
人差し指は、物事を指すために使う指なので夢や願望を象徴し、集中力を高め幸運へと導いてくれる意味が強いそうだ。
「あの……ごめん。えっと……薬指にするべきだった?」
翠が照れ臭そうに謝るので、『違う』と首を横に振った。
「ここがいい。ここが俺たちの場所だ」
右手は「現実」左手は「精神」と結び付きがある。だから左手人差し指は、己の気持ちを導く指なのだ。つまりここに指輪をつけると前向きな気持ちになれる!
翠との関係にもっと自信を持ちたい。
翠と歩む人生にいつまでも積極的な気持ちでいたい。
そんな気持ちの後押ししてくれる場所だった。
「翠、ありがとうな。俺に清らかな指輪を贈ってくれて」
「な……そんな……シロツメクサで作った指輪でそんなに喜ばれたら……困るよ」
「だが、最高の贈り物だよ」
「も、もう――そんな顔するな」
「どんな顔だ?」
「カッコイイよ。豪快な流が繊細な白詰草を指につけているのが溜らないんだ」
翠は真っ赤になりながら教えてくれた。
「なんだ? ギャップ萌えかよ?」
「も、もうっ、言わないでくれ」
「ははっ、翠の百面相が見られて嬉しいよ」
「くすっ、そうだね。僕……朝から笑ってばかりだ」
「俺たち……幸せだな」
「あぁ」
今日みたいな一時も、至福の時。
小さな幸せは、確かに俺たちの周りにも転がっている。
見つけられるかどうかは、俺たち次第。
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