重なる月

志生帆 海

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14章

それぞれの想い 15

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「じゃあ今から行くか」
「あぁ! そうしたい」

 丈に手を引かれ立たされると、内股を湿らせるのは、寝起きに「もう一度だけ」と静かに挿入され、中に出されたものだった。

「あっ……」
「すまない。今、処理をしてやるから」
「いいって、自分でする」
「洋は、無理をするな」

 丈は半裸の状態で、全裸の俺を横抱きする。

 相変わらず逞しい身体だ。

「は、恥ずかしいんだ」
「ここには私達しかいない。それにシャワーを浴びないと出掛けられない状態だろう。お互いに」

 丈が夜明けの太陽に照らされている。

 それだけで……俺、涙が溢れてしまうのだ。

「分かってるよ。なぁ……俺、昨日から変だ……遠い昔やこの世に生まれた時のことを思い出している」
「洋、それはきっと私が完全に目覚めたからだろう」

 丈がまるで羽化するように変化していく。
 遠い昔……一時も離れず俺を守り、俺を支えてくれたあの頃のように。

「なぁ丈……ヨウ将軍は生涯医官のジョウを傍に置いたようだね。墓まで一緒だったしな。それに丈の中将と洋の君は、都を離れ宇治の山荘で終焉の時まで仲睦まじく暮らしたようだよ」
「洋? また何か思い出したのか。それは私たちが彼らの運命を変えた後の話だな」
 
 自分でもどうしてそのような事を口走ってしまうのか、分からなかった。

「何も思い出していないのに……朝になったら知っていた。俺の……何度も何度も生まれ変わった魂は疲弊している。だから、もう今生を最期にする。俺達の輪廻転生は終焉の地を定めるんだよ。だから一緒に働いて、衣食住の全てを共にしたいんだ。翠兄さんと流兄さんに憧れが……俺も……丈ともっと一緒にいたいんだ」

 丈に湯船の中で背後から抱かれながら、俺は訴えた。

 丈も静かに同意してくれた。

「洋……そうしよう。だから彼の地を見に行くぞ。さぁここを処理するぞ」

 湯の中で淡い蕾を撫でられる。

「んんっ……」
「そうだ、ゆっくり息を吐いて……洋、そうだ。それでいい」
「ん……」


 ****

「身体を冷やすなよ」
「……ありがとう」

 助手席に座ると、丈が俺にブランケットを掛けてくれた。

 俺は女ではないのに、こんなに至れり尽くせりでいのか。

「洋……昨日、かなり無理をさせたな」
「ん、大丈夫だ。それよりあの『月下美人』はどうなった?」
「あぁ、次の蕾を咲かせるために萎んだよ」
「そうか……最上の香りだったな」
「かなり煽られた」
「お互いにな」

 途中、ベーカリーに寄って朝食のパンとコーヒーを買った。

 こうやって……少しずつまた日常に戻って行く。

 やがて、朝日に照らされた眩い海が見えてきた! 
 
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