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12章
聖夜を迎えよう7 ~安志編~
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「空さんに会えなくて、残念でしたね」
つい頭の中で考えていたことを、言葉にしてしまった。すると陸さんは途端に困惑した表情になった。
「まさか、洋から何か聞いたのか」
「え?」
「その……空のことを」
「いえ、だって空さんと陸さんって……本当に仲がいいから、帰国したら真っ先に会いたいんだろなって思っただけですよ。洋兄さんの結婚式にもふたりで来ていたし」
「あぁ、なるほど、そうだな……うん、そうか」
僕、何か変なことを言ってしまったのかな?
「それより、涼はあの男と、まだつきあってんのか」
「りっ陸さん! なんでそれ知って……あっ」
まずい、つい……。慌てて自分の口を手で塞いだ。
「焦るなって。洋の結婚式でお前たちの熱々な様子を見たら、普通気付くだろ」
「そ、それは……」
陸さんにバレバレだったのかと思うと、猛烈に恥ずかしい。
「安心しろ。俺はそういうの大丈夫だ。ただ……いいか。この世界はそう甘くない。潰されたくなかったら、絶対に隠せ。死守しろよ」
そう言い切る陸さんにも、きっと守りたい人がいるのだろう。
僕も改めて忠告されて、気が引き締まった。
僕も守る。いつも安志さんに守ってもらってばかりだが、僕だって!
****
「乾杯! この一年間お疲れさまでした。今年はニューフェイスに月乃 涼くんが加わり、事務所も最高に盛り上がり、過去最高の業績でした。ただ惜しいことに長年我が社のトップモデルを務め、牽引してくれていたSoilがこの秋引退してしまいました。しかし、なんとなんと! 今日は特別に彼が皆さんへのお礼を込めて、駆けつけてくれました」
スタッフの華々しい挨拶で、モデル事務所のクリスマス&忘年会が始まった。今日の主役の陸さんは、さっきから皆に引っ張りだこだ。
しかも見れば見るほど……モデルを辞めてしまうの、惜しいよな。人混みを器用にすり抜ける所作も洗練されていて、つい目で追ってしまう。
「さぁさぁ涼くん~私と乾杯しよう。って君はまだ、お酒駄目なのか」
「あっはい。未成年ですので」
「まぁまぁ、いいから飲んじゃえって。酔って、しどけない姿を私にも見せて欲しいなぁ」
「……」
確かこの人は有名なメイクアーティストだったよな。さっきから執拗に酒を勧めてきて、嫌な感じだ。馴れ馴れしく背中を撫でてくるのが手が気持ち悪い。その手が下りてきて僕のヒップを掠めそうになって「ひっ!」と声が漏れそうになった。
コイツ……最低だ。
「涼、こっちに来い!」
どう対処したらいいのか困っていると、陸さんがグイッと手を掴んで会場から一度抜け出させてくれた。
「お前さ、気をつけろ。業界はああいう奴が多いんだよ。涼は前よりずっと色っぽくなっているから、心配だ。あぁ……しかし何でこんなことまで……俺は保護者か」
陸さんに嘆くように言われて、恥ずかしくなった。
「すみません。気を付けます。でも、いざとなったら俺結構強いんですよ」
「分かっているが、油断するな。今の涼には悲しむ相手がいるだろう。だから無理すんな、嫌なもんは、ちゃんと嫌って言えよ」
「ありがとうございます。安志さんとのことも黙っていてくれて」
「まぁな。俺も同じ穴の貉《むじな》なだけさ」
ニヤリと不敵に笑う陸さんは、やっぱり最高にクールでカッコいい。
「あの……そういえば、いつまで日本にいるんですか」
「んっなんでだ?」
「実は24日は洋兄さんに誘われていて……月影寺でクリスマスパーティーをするんです。もしよかったら一緒にどうですか。兄さんもきっと喜びます」
結婚式にも来ていたから大丈夫な気がして、ついそんな誘いを勝手にしてしまった。すると陸さんは、また困った顔を浮かべた。
久しぶりに会った陸さんは、本当にいろんな表情を見せてくれる。前はもっとポーカーフェイスだった。
「……あいつは……洋は、あれから元気にやってるか」
「ええ、あのお寺で、皆に囲まれて、とても幸せそうです」
「……そうか。それなら、よかったよ。それを聞くだけで今は充分だ。伝えてくれないか。俺が二年後に一人前になったら、絶対にまた会おうと伝えてくれ」
「あ……わかりました」
そうだった。陸さんはインテリアデザイナーになるためにアメリカで頑張っている最中だ。きっと今の……不完全な立場のままでは会いたくないのだろう。
陸さんと洋兄さんの間には、僕が入り込めないものがある。だから余計な口出しはしない。
「気遣ってくれて、ありがとな。さぁ会場に戻ろう」
ポンっと、優しく背中を押された。
****
****
会場に戻ると、ちょうど抽選会が始まるところだった。
一等はこのホテルの宿泊券だそうだ。
それ、欲しい!
安志さんと、このお洒落なホテルに泊まったら……つい頭の中で妄想してしまう。ホテルの夜景を見ながらとか、いつもと違うシチュエーションって、どんな感じだろう。そんなお洒落な大人っぽいデートはしたことがないので、興味津々だ。
当たれ!っと心の中で念じたが、あっけなく僕は違うものを当ててしまったようだ。
「じゃあ~次は18等。これは……プププ。えーっと、15番は誰かな」
「あっ僕です!」
「えぇぇ……これ涼くんに当たっちゃったの? うわー! いいのか。 まぁ……いいか。はい、どうぞ!」
妙に司会のスタッフに大袈裟に騒がれて『?』マークが頭に沢山浮かんでしまった。手渡された可愛い包みの中には、細長い箱が入っていた。
「涼、何を当てた?」
「んーなんだろう? みんなは驚いていたけれども、結局中身は教えてもらえなかった」
「ふーん、見せてみろ」
「あっ!」
陸さんに取り上げられて、中身を見られてしまった。すぐに陸さんはぷはっと噴き出した。
「くくくっ、お前にぴったりのもんだよ。好奇心の塊のひよっこにさ!」
「なんですか。それ!」
取り返して中身を覗くと、抹茶色の物体で……何かのおもちゃみたいだった。なんだ、これ?
「陸さん。これって、何ですか」
「くくっ、そうか、やっぱり知らないよな」
「何に使うんですか」
「それ、俺に聞く? 彼氏にしっかり教えてもらえよ」
「え?」
そんな会話をしていると、抽選はいよいよ1等の番になっていた。
「1等はジャジャジャーンっと14番です! 誰が当たったでしょうか」
14って、僕の前だから陸さんだ。
陸さんが1等の宿泊券を当てた! すごい!
****
忘年会もお開きになり帰ろうとすると、僕のマネージャーが飛んで来た。
「おっと~帰っちゃ駄目だよ! 涼はこのままこのホテルに宿泊になったから。明日は直接ロケに行くからね」
「えっ……そうだったんですか……聞いてなかった」
「ごめんごめん。明日のロケは開園前に撮影だから早朝なんだ。今日はもう速攻寝てね」
「はい……」
「これ明日の衣装ね。あと今日の泊り道具一式」
マネージャーに、客室のカードキーと荷物を渡された。
そうか……今日は家に戻れないのか。安志さんに連絡出来るかな。このままここに泊まって、明日はロケに直行だなんて、本当に息をつく暇もない。これでは、まるで軟禁状態だと苦笑してしまった。
そんな俺の様子を見ていた陸さんが、またポンっと背中を優しく叩いてくれた。
「涼は頑張ってんな。すっかり売れっ子で頼もしいぞ。でも、無理すんな。年末年始は洋に会えるんだろう? 身内に甘えて来いよ。さてと俺はもう帰るよ」
「陸さん、帰るって? まさか、もうNYに帰ってしまうのですか」
「あーちょっと目的が逸れたからな。それにさ、今年のクリスマスは久しぶりに両親と過ごしてみようかなと急に思ったんだ。柄にもなく、そんな気分なんだ」
空さんに会えないことが、やはりショックだったらしい。
「それはいいですね。本当は僕もNYの両親の元に帰らないといけないんですが、出席日数とテストがまずくて……今年は無理そうです」
「そうか、学業を疎かにするなっていっても、まぁこの売れっ子状態じゃしょうがないよな。俺も大学に途中から通えなくなったから分かるよ。学業とモデルの両立は大変だが、頑張れよ。それと彼との仲もな!」
耳元で囁かれウィンクされた。
「陸さんっ、もうっ」
「ははっ、じゃあまた会おう!」
別れ際に陸さんが思い出したように僕を呼び止めた。
「そうだ、涼にこれやるよ! 恋人と、たまにはゆっくり過ごせ」
渡されたのは、さっき陸さんが当てた1等の宿泊券。
「えっ、でもこれ」
「……今の俺には必要ないものだ。涼、幸せはちゃんと掴まえておけよ。定期的なご褒美も大事だぞ。年上だって、甘えたい時があるもんだ。……まぁ俺も人のこと言えないが」
まるで陸さん自身のことのように感情が籠って、とても優しい笑みを浮かべていた。
陸さんとの久しぶりの再会は、爽やかな時間だった。
洋兄さんに会ったら、すぐに伝えよう。陸さんの充実した笑顔のこと、モデル時代よりもっと輝いて優しくなっていたと。
それから僕の大切な安志さんにも伝えよう。
僕たちの休暇の提案を……初めてのふたりでのホテル宿泊を実現させようと。
早く安志さんに会いたい。
夜になれば、いつも願うこと。
僕の焦れた躰と心を、早く届けたい。
早く……クリスマス・イブになれ!
つい頭の中で考えていたことを、言葉にしてしまった。すると陸さんは途端に困惑した表情になった。
「まさか、洋から何か聞いたのか」
「え?」
「その……空のことを」
「いえ、だって空さんと陸さんって……本当に仲がいいから、帰国したら真っ先に会いたいんだろなって思っただけですよ。洋兄さんの結婚式にもふたりで来ていたし」
「あぁ、なるほど、そうだな……うん、そうか」
僕、何か変なことを言ってしまったのかな?
「それより、涼はあの男と、まだつきあってんのか」
「りっ陸さん! なんでそれ知って……あっ」
まずい、つい……。慌てて自分の口を手で塞いだ。
「焦るなって。洋の結婚式でお前たちの熱々な様子を見たら、普通気付くだろ」
「そ、それは……」
陸さんにバレバレだったのかと思うと、猛烈に恥ずかしい。
「安心しろ。俺はそういうの大丈夫だ。ただ……いいか。この世界はそう甘くない。潰されたくなかったら、絶対に隠せ。死守しろよ」
そう言い切る陸さんにも、きっと守りたい人がいるのだろう。
僕も改めて忠告されて、気が引き締まった。
僕も守る。いつも安志さんに守ってもらってばかりだが、僕だって!
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「乾杯! この一年間お疲れさまでした。今年はニューフェイスに月乃 涼くんが加わり、事務所も最高に盛り上がり、過去最高の業績でした。ただ惜しいことに長年我が社のトップモデルを務め、牽引してくれていたSoilがこの秋引退してしまいました。しかし、なんとなんと! 今日は特別に彼が皆さんへのお礼を込めて、駆けつけてくれました」
スタッフの華々しい挨拶で、モデル事務所のクリスマス&忘年会が始まった。今日の主役の陸さんは、さっきから皆に引っ張りだこだ。
しかも見れば見るほど……モデルを辞めてしまうの、惜しいよな。人混みを器用にすり抜ける所作も洗練されていて、つい目で追ってしまう。
「さぁさぁ涼くん~私と乾杯しよう。って君はまだ、お酒駄目なのか」
「あっはい。未成年ですので」
「まぁまぁ、いいから飲んじゃえって。酔って、しどけない姿を私にも見せて欲しいなぁ」
「……」
確かこの人は有名なメイクアーティストだったよな。さっきから執拗に酒を勧めてきて、嫌な感じだ。馴れ馴れしく背中を撫でてくるのが手が気持ち悪い。その手が下りてきて僕のヒップを掠めそうになって「ひっ!」と声が漏れそうになった。
コイツ……最低だ。
「涼、こっちに来い!」
どう対処したらいいのか困っていると、陸さんがグイッと手を掴んで会場から一度抜け出させてくれた。
「お前さ、気をつけろ。業界はああいう奴が多いんだよ。涼は前よりずっと色っぽくなっているから、心配だ。あぁ……しかし何でこんなことまで……俺は保護者か」
陸さんに嘆くように言われて、恥ずかしくなった。
「すみません。気を付けます。でも、いざとなったら俺結構強いんですよ」
「分かっているが、油断するな。今の涼には悲しむ相手がいるだろう。だから無理すんな、嫌なもんは、ちゃんと嫌って言えよ」
「ありがとうございます。安志さんとのことも黙っていてくれて」
「まぁな。俺も同じ穴の貉《むじな》なだけさ」
ニヤリと不敵に笑う陸さんは、やっぱり最高にクールでカッコいい。
「あの……そういえば、いつまで日本にいるんですか」
「んっなんでだ?」
「実は24日は洋兄さんに誘われていて……月影寺でクリスマスパーティーをするんです。もしよかったら一緒にどうですか。兄さんもきっと喜びます」
結婚式にも来ていたから大丈夫な気がして、ついそんな誘いを勝手にしてしまった。すると陸さんは、また困った顔を浮かべた。
久しぶりに会った陸さんは、本当にいろんな表情を見せてくれる。前はもっとポーカーフェイスだった。
「……あいつは……洋は、あれから元気にやってるか」
「ええ、あのお寺で、皆に囲まれて、とても幸せそうです」
「……そうか。それなら、よかったよ。それを聞くだけで今は充分だ。伝えてくれないか。俺が二年後に一人前になったら、絶対にまた会おうと伝えてくれ」
「あ……わかりました」
そうだった。陸さんはインテリアデザイナーになるためにアメリカで頑張っている最中だ。きっと今の……不完全な立場のままでは会いたくないのだろう。
陸さんと洋兄さんの間には、僕が入り込めないものがある。だから余計な口出しはしない。
「気遣ってくれて、ありがとな。さぁ会場に戻ろう」
ポンっと、優しく背中を押された。
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会場に戻ると、ちょうど抽選会が始まるところだった。
一等はこのホテルの宿泊券だそうだ。
それ、欲しい!
安志さんと、このお洒落なホテルに泊まったら……つい頭の中で妄想してしまう。ホテルの夜景を見ながらとか、いつもと違うシチュエーションって、どんな感じだろう。そんなお洒落な大人っぽいデートはしたことがないので、興味津々だ。
当たれ!っと心の中で念じたが、あっけなく僕は違うものを当ててしまったようだ。
「じゃあ~次は18等。これは……プププ。えーっと、15番は誰かな」
「あっ僕です!」
「えぇぇ……これ涼くんに当たっちゃったの? うわー! いいのか。 まぁ……いいか。はい、どうぞ!」
妙に司会のスタッフに大袈裟に騒がれて『?』マークが頭に沢山浮かんでしまった。手渡された可愛い包みの中には、細長い箱が入っていた。
「涼、何を当てた?」
「んーなんだろう? みんなは驚いていたけれども、結局中身は教えてもらえなかった」
「ふーん、見せてみろ」
「あっ!」
陸さんに取り上げられて、中身を見られてしまった。すぐに陸さんはぷはっと噴き出した。
「くくくっ、お前にぴったりのもんだよ。好奇心の塊のひよっこにさ!」
「なんですか。それ!」
取り返して中身を覗くと、抹茶色の物体で……何かのおもちゃみたいだった。なんだ、これ?
「陸さん。これって、何ですか」
「くくっ、そうか、やっぱり知らないよな」
「何に使うんですか」
「それ、俺に聞く? 彼氏にしっかり教えてもらえよ」
「え?」
そんな会話をしていると、抽選はいよいよ1等の番になっていた。
「1等はジャジャジャーンっと14番です! 誰が当たったでしょうか」
14って、僕の前だから陸さんだ。
陸さんが1等の宿泊券を当てた! すごい!
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忘年会もお開きになり帰ろうとすると、僕のマネージャーが飛んで来た。
「おっと~帰っちゃ駄目だよ! 涼はこのままこのホテルに宿泊になったから。明日は直接ロケに行くからね」
「えっ……そうだったんですか……聞いてなかった」
「ごめんごめん。明日のロケは開園前に撮影だから早朝なんだ。今日はもう速攻寝てね」
「はい……」
「これ明日の衣装ね。あと今日の泊り道具一式」
マネージャーに、客室のカードキーと荷物を渡された。
そうか……今日は家に戻れないのか。安志さんに連絡出来るかな。このままここに泊まって、明日はロケに直行だなんて、本当に息をつく暇もない。これでは、まるで軟禁状態だと苦笑してしまった。
そんな俺の様子を見ていた陸さんが、またポンっと背中を優しく叩いてくれた。
「涼は頑張ってんな。すっかり売れっ子で頼もしいぞ。でも、無理すんな。年末年始は洋に会えるんだろう? 身内に甘えて来いよ。さてと俺はもう帰るよ」
「陸さん、帰るって? まさか、もうNYに帰ってしまうのですか」
「あーちょっと目的が逸れたからな。それにさ、今年のクリスマスは久しぶりに両親と過ごしてみようかなと急に思ったんだ。柄にもなく、そんな気分なんだ」
空さんに会えないことが、やはりショックだったらしい。
「それはいいですね。本当は僕もNYの両親の元に帰らないといけないんですが、出席日数とテストがまずくて……今年は無理そうです」
「そうか、学業を疎かにするなっていっても、まぁこの売れっ子状態じゃしょうがないよな。俺も大学に途中から通えなくなったから分かるよ。学業とモデルの両立は大変だが、頑張れよ。それと彼との仲もな!」
耳元で囁かれウィンクされた。
「陸さんっ、もうっ」
「ははっ、じゃあまた会おう!」
別れ際に陸さんが思い出したように僕を呼び止めた。
「そうだ、涼にこれやるよ! 恋人と、たまにはゆっくり過ごせ」
渡されたのは、さっき陸さんが当てた1等の宿泊券。
「えっ、でもこれ」
「……今の俺には必要ないものだ。涼、幸せはちゃんと掴まえておけよ。定期的なご褒美も大事だぞ。年上だって、甘えたい時があるもんだ。……まぁ俺も人のこと言えないが」
まるで陸さん自身のことのように感情が籠って、とても優しい笑みを浮かべていた。
陸さんとの久しぶりの再会は、爽やかな時間だった。
洋兄さんに会ったら、すぐに伝えよう。陸さんの充実した笑顔のこと、モデル時代よりもっと輝いて優しくなっていたと。
それから僕の大切な安志さんにも伝えよう。
僕たちの休暇の提案を……初めてのふたりでのホテル宿泊を実現させようと。
早く安志さんに会いたい。
夜になれば、いつも願うこと。
僕の焦れた躰と心を、早く届けたい。
早く……クリスマス・イブになれ!
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