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12章
番外編SS 安志×涼 「クリスマス・イブ」3
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「お疲れ様!」
スタジオでの撮影が、ようやく一区切りついたようだ。
カメラの熱を浴び続けたせいで、僕の額には大粒の汗が浮き上がっていたので、タオルで汗を拭っていると、マネージャーと撮影監督が近づいて来た。
「涼、お疲れ様。一旦休憩していいよ。次の撮影は3時間後だから、これ鍵。上の階でシャワー使っておいで。そのまま仮眠を取ってもいいし」
「えっ、いいんですか」
「涼が頑張ったお陰でスムーズに進んだからご褒美だよ。3時間だけど自由時間だ」
「嬉しいです! ありがとうございます!」
2日間スタジオに缶詰を覚悟していたのに、思いがけず外に出ることが出来た。しかも遠方からのモデルの宿泊先として使っている部屋での仮眠付きだ。
とにかく汗を流したかったし疲れ果てて眠かったので、ぼんやりとエレベーターに乗り込もうとしたら、降りて来た人の大きな荷物にぶつかりそうになってしまった。
「あっすいません」
「いーえ」
大きな紙袋だな。ちらっと見ると僕もよく知っている有名なケーキ屋さんのロゴが印刷されていた。更にいつものロゴの他にツリーのイラストが入っていた。
あ……そうか、クリスマスケーキなのか。
そうだ…今日はクリスマスイブだった! すっかり時間感覚が失われていたことに気が付いた。
1週間前に安志さんと電話した時に「クリスマスに会えない」と告げると、あっさりと「仕事を頑張れよ」と言われてしまったんだよな。
僕は意気込んでいたのでがっかりしてしまったのに……安志さんは同じ気持ちじゃなかったのかな。そう思ったら「それでも会いたい」という一言は言えずに……呑み込んでしまった。
安志さんは10歳も年上の大人の男性だから、僕がそんな子供じみた我が儘言って困らせたくない。そもそもモデルの仕事で会えないのだから、僕のせいなんだ。
「それでもやっぱり安志さんに会いたいな。せめて声だけでも聴きたい」
その気持ちに勇気をもらい、安志さんへ電話をかけてみた。
もう時計の針は23時過ぎ。この時間なら絶対家にいるはずだ。なのに、何度コールしても安志さんは出なかった。
会えないと会いたくなる。
話せないと話したくなる。
もう3週間も会っていない。
そろそろ限界だ。
この3週間、子供っぽく安志さんのこと束縛したくなくて、僕も意地を張ってしまった。安志さんの方も、僕が忙しいと気遣ってたまにメールをくれる程度だった。電話も何度かあったのに運悪く撮影中だったり、逆に僕がかけると会議中だったりと行き違いばかりだった。
電話越しにすら、まともに喋っていない。
「そうか……僕が直接行けばいいんだ」
3時間あれば行って帰って来られる。まだ電車も動いているし、なんとかなりそうだ。
ダッフルコートのフードを目深に被り、僕はエレベーターには乗らずに外に向かって走り出していた。
安志さんの傍に行きたい。
ただそれだけの想いに突き動かされていた!
スタジオでの撮影が、ようやく一区切りついたようだ。
カメラの熱を浴び続けたせいで、僕の額には大粒の汗が浮き上がっていたので、タオルで汗を拭っていると、マネージャーと撮影監督が近づいて来た。
「涼、お疲れ様。一旦休憩していいよ。次の撮影は3時間後だから、これ鍵。上の階でシャワー使っておいで。そのまま仮眠を取ってもいいし」
「えっ、いいんですか」
「涼が頑張ったお陰でスムーズに進んだからご褒美だよ。3時間だけど自由時間だ」
「嬉しいです! ありがとうございます!」
2日間スタジオに缶詰を覚悟していたのに、思いがけず外に出ることが出来た。しかも遠方からのモデルの宿泊先として使っている部屋での仮眠付きだ。
とにかく汗を流したかったし疲れ果てて眠かったので、ぼんやりとエレベーターに乗り込もうとしたら、降りて来た人の大きな荷物にぶつかりそうになってしまった。
「あっすいません」
「いーえ」
大きな紙袋だな。ちらっと見ると僕もよく知っている有名なケーキ屋さんのロゴが印刷されていた。更にいつものロゴの他にツリーのイラストが入っていた。
あ……そうか、クリスマスケーキなのか。
そうだ…今日はクリスマスイブだった! すっかり時間感覚が失われていたことに気が付いた。
1週間前に安志さんと電話した時に「クリスマスに会えない」と告げると、あっさりと「仕事を頑張れよ」と言われてしまったんだよな。
僕は意気込んでいたのでがっかりしてしまったのに……安志さんは同じ気持ちじゃなかったのかな。そう思ったら「それでも会いたい」という一言は言えずに……呑み込んでしまった。
安志さんは10歳も年上の大人の男性だから、僕がそんな子供じみた我が儘言って困らせたくない。そもそもモデルの仕事で会えないのだから、僕のせいなんだ。
「それでもやっぱり安志さんに会いたいな。せめて声だけでも聴きたい」
その気持ちに勇気をもらい、安志さんへ電話をかけてみた。
もう時計の針は23時過ぎ。この時間なら絶対家にいるはずだ。なのに、何度コールしても安志さんは出なかった。
会えないと会いたくなる。
話せないと話したくなる。
もう3週間も会っていない。
そろそろ限界だ。
この3週間、子供っぽく安志さんのこと束縛したくなくて、僕も意地を張ってしまった。安志さんの方も、僕が忙しいと気遣ってたまにメールをくれる程度だった。電話も何度かあったのに運悪く撮影中だったり、逆に僕がかけると会議中だったりと行き違いばかりだった。
電話越しにすら、まともに喋っていない。
「そうか……僕が直接行けばいいんだ」
3時間あれば行って帰って来られる。まだ電車も動いているし、なんとかなりそうだ。
ダッフルコートのフードを目深に被り、僕はエレベーターには乗らずに外に向かって走り出していた。
安志さんの傍に行きたい。
ただそれだけの想いに突き動かされていた!
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