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11章
有明の月 2
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R18
僕の裸の胸に、流の手が触れる。
意思を持った指先は、執拗に乳首を摘まんだり擦ったりしてくる。
それだけで、冷え切った躰が温まる。
こんな寒空の下、僕を抱くつもりか。
そう言おうと思ったが、もう言葉は発せなかった。
気が付くと流が用意した寝袋の上に寝かされていた。
僕がどこにも逃げられないように、流が深く体重をかけて覆い被さってくる。
声を出す暇もないほど唇を吸われ、唾液までも吸い上げられていく。
「んっ……ん…」
息苦しくて堪らないが、この苦しみは、流がここで僕を見つけるまでの不安の代償なのだから受け入れようと思った。
僕の眼前に現れた流の服が泥まみれで手や顔にかすり傷を作っていたのを見て、流がどんなに必死に、ここを探してくれたのかを察した。
「翠……」
名を呼ばれると共に流の動きが止まったので不思議に思って見上げると、流が辛そうな表情で僕を見つめていた。
「翠……心配したんだ。また何かあったら、また助けられなかったらと思うと怖かった。恐ろしかった。俺はまた翠を失うことになるのではと」
「流、ごめんよ……無茶なことをした。僕を抱いて僕を感じてくれ。ちゃんとお前の傍にいることを確かめて」
今は、もうどんな言い訳も話もしたくなかった。
ただこの躰で流を感じたくなった。流も同じことを考えたのだろう。
貪り合うように、身体を求めよう。
遠い昔叶わなかったことは、僕たちが成就していく。
僕たちの意志で進んでいこう。
滑るように下半身のズボンも下着ごと下げられ、いよいよ裸に剥かれる。
「寒くないか」
「お前に温めてもらえれば……」
流も服を脱ぎ捨て、僕を裸身の肌で包み込む。
人肌が温かい。血の流れを近くに感じる。
同じ血が流れている躰を、僕も深く抱きしめる。
「翠……翠っ」
何度も繰り返し確かめるように呼ばれる。
首筋。耳元。喉元。胸元。脇腹……そして下半身に及ぶまで、温かい流の舌が駆け巡っていく。まるで熟れた果実のように僕の乳首はツンと立ち上がり、流の両唇で擦られる。
「んっ……あっ……あ…」
小刻みに声が漏れていく。
太腿をそれぞれ掴まれ左右に大きく開かれ、その中央の幹に流がかぶりついて来る。
仰向けの姿勢で、僕は流の頭を抱え込んで上下に揺さぶられる。
まるで何かに見せつけるように、流は僕を抱く。
「あうっ……もう離せ! 駄目だ! このままじゃ」
「いいから」
流の口淫は休まることを知らない。
激しく僕の弱いところを確実に狙われ、息も絶え絶えに僕は白濁を吐く。
「流……馬鹿っ、飲むな」
「翠のものだ」
流はむくっと起き上がり、濡れた唇を手の甲でグイっと拭い笑った。
精悍で逞しい弟であり、僕の愛しい人。
いにしえの人から受け継いだ流の愛を、この躰で受け止めたい衝動に駆られる。
性欲が薄いと思っていた僕のどこに、こんな逸る気持ちが隠れていたのか。
心の叫び。
心の欲求。
もう僕は隠さない。
この廃屋で長い年月眠り続けた流水さんにも見せてやりたい。
僕たちの歩む道を。しかと……
いつの間にか流が用意した潤滑油を蕾にたっぷり注がれ、もう一度腰を抱えられる。
そのまま流の質量のあるものが、ズンッと突き刺さって来る。
受け止める。
受け入れるだけだ。
「あぁ……」
そのまま揺さぶられていく。
流の動きに合わせて、僕の身体が月夜の影を踏むように揺れる。
「んっ──んんっ」
久しぶりの逢瀬だった。
月影寺ではやはりままならないので、流とここまで深く繋がるのは久しぶりで、あまりの気持ち良さに恍惚としてしまう程だ。
「翠……凄くいい顔だ。艶やかだ。俺で感じてくれているのか」
「流……流っ」
生きているから繋がれる。
肉体で繋がれるのは生きている間だけだ。
だから肉欲、性欲を恥じたりはしない。
どんなに禁忌だろうと、もう僕たちは立ち止まらない。迷わない。
僕が流を愛しているから。
流が僕を愛しているから。
(そうだ。何も恥じることはない。俺の思いは成就した。君たちの営みを見せてくれてありがとう。俺達が叶わなかった日々を君たちの意志で生きて行って欲しい。ありがとう。ここを見つけてくれて……必ず俺を湖翠のもとへ連れて帰ってくれ)
いにしえの声が、遥か彼方から聞こえたような気がした。
その後も、流は僕の躰が折れるほど執拗に何度も何度も求め続けた。
有明の月が浮かぶ空の下。
この廃屋で。
誰も知らない空間で。
僕たちだけの濃密な時間を味わった。
僕の裸の胸に、流の手が触れる。
意思を持った指先は、執拗に乳首を摘まんだり擦ったりしてくる。
それだけで、冷え切った躰が温まる。
こんな寒空の下、僕を抱くつもりか。
そう言おうと思ったが、もう言葉は発せなかった。
気が付くと流が用意した寝袋の上に寝かされていた。
僕がどこにも逃げられないように、流が深く体重をかけて覆い被さってくる。
声を出す暇もないほど唇を吸われ、唾液までも吸い上げられていく。
「んっ……ん…」
息苦しくて堪らないが、この苦しみは、流がここで僕を見つけるまでの不安の代償なのだから受け入れようと思った。
僕の眼前に現れた流の服が泥まみれで手や顔にかすり傷を作っていたのを見て、流がどんなに必死に、ここを探してくれたのかを察した。
「翠……」
名を呼ばれると共に流の動きが止まったので不思議に思って見上げると、流が辛そうな表情で僕を見つめていた。
「翠……心配したんだ。また何かあったら、また助けられなかったらと思うと怖かった。恐ろしかった。俺はまた翠を失うことになるのではと」
「流、ごめんよ……無茶なことをした。僕を抱いて僕を感じてくれ。ちゃんとお前の傍にいることを確かめて」
今は、もうどんな言い訳も話もしたくなかった。
ただこの躰で流を感じたくなった。流も同じことを考えたのだろう。
貪り合うように、身体を求めよう。
遠い昔叶わなかったことは、僕たちが成就していく。
僕たちの意志で進んでいこう。
滑るように下半身のズボンも下着ごと下げられ、いよいよ裸に剥かれる。
「寒くないか」
「お前に温めてもらえれば……」
流も服を脱ぎ捨て、僕を裸身の肌で包み込む。
人肌が温かい。血の流れを近くに感じる。
同じ血が流れている躰を、僕も深く抱きしめる。
「翠……翠っ」
何度も繰り返し確かめるように呼ばれる。
首筋。耳元。喉元。胸元。脇腹……そして下半身に及ぶまで、温かい流の舌が駆け巡っていく。まるで熟れた果実のように僕の乳首はツンと立ち上がり、流の両唇で擦られる。
「んっ……あっ……あ…」
小刻みに声が漏れていく。
太腿をそれぞれ掴まれ左右に大きく開かれ、その中央の幹に流がかぶりついて来る。
仰向けの姿勢で、僕は流の頭を抱え込んで上下に揺さぶられる。
まるで何かに見せつけるように、流は僕を抱く。
「あうっ……もう離せ! 駄目だ! このままじゃ」
「いいから」
流の口淫は休まることを知らない。
激しく僕の弱いところを確実に狙われ、息も絶え絶えに僕は白濁を吐く。
「流……馬鹿っ、飲むな」
「翠のものだ」
流はむくっと起き上がり、濡れた唇を手の甲でグイっと拭い笑った。
精悍で逞しい弟であり、僕の愛しい人。
いにしえの人から受け継いだ流の愛を、この躰で受け止めたい衝動に駆られる。
性欲が薄いと思っていた僕のどこに、こんな逸る気持ちが隠れていたのか。
心の叫び。
心の欲求。
もう僕は隠さない。
この廃屋で長い年月眠り続けた流水さんにも見せてやりたい。
僕たちの歩む道を。しかと……
いつの間にか流が用意した潤滑油を蕾にたっぷり注がれ、もう一度腰を抱えられる。
そのまま流の質量のあるものが、ズンッと突き刺さって来る。
受け止める。
受け入れるだけだ。
「あぁ……」
そのまま揺さぶられていく。
流の動きに合わせて、僕の身体が月夜の影を踏むように揺れる。
「んっ──んんっ」
久しぶりの逢瀬だった。
月影寺ではやはりままならないので、流とここまで深く繋がるのは久しぶりで、あまりの気持ち良さに恍惚としてしまう程だ。
「翠……凄くいい顔だ。艶やかだ。俺で感じてくれているのか」
「流……流っ」
生きているから繋がれる。
肉体で繋がれるのは生きている間だけだ。
だから肉欲、性欲を恥じたりはしない。
どんなに禁忌だろうと、もう僕たちは立ち止まらない。迷わない。
僕が流を愛しているから。
流が僕を愛しているから。
(そうだ。何も恥じることはない。俺の思いは成就した。君たちの営みを見せてくれてありがとう。俺達が叶わなかった日々を君たちの意志で生きて行って欲しい。ありがとう。ここを見つけてくれて……必ず俺を湖翠のもとへ連れて帰ってくれ)
いにしえの声が、遥か彼方から聞こえたような気がした。
その後も、流は僕の躰が折れるほど執拗に何度も何度も求め続けた。
有明の月が浮かぶ空の下。
この廃屋で。
誰も知らない空間で。
僕たちだけの濃密な時間を味わった。
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