714 / 1,657
完結後の甘い話の章
『蜜月旅行 95』終わりは始まり
しおりを挟む
「丈、この後はお前達だけの時間だ。新婚旅行の最終日は、この部屋で二人きりで過ごせよ」
流兄さんから、思ってもいなかった言葉をもらった。今晩は同じフロアのツインルームへ兄さん達は移動するとのことだった。その言葉通り、ホテルのボーイが兄さん達の荷物を手早くまとめ、あっという間に去って行った。
「じゃあ、今から明日のチェックアウトまでは自由行動だ。ゆっくりな」
「兄さん……お気遣いありがとうございます」
「優しい兄だろう?」
「ええ、すごく」
部屋に戻ると、洋がまだ水着姿でソファに座っていた。相当喉が渇いていただらしく、手に持っているペットボトルの水は空っぽになっていた。
「洋、まだそんな恰好じゃ風邪をひくぞ」
「ん、でも喉が渇いてね、それにしても良かったのか。なんだか翠さん達に気を遣わせてしまったね」
「あぁ。兄さん達からの結婚祝いだと思えばいい」
「そうか……でもなんだかやっぱりこういうの慣れないな」
「そうか私は嬉しいだけだがな。さぁおいでシャワーを浴びよう。さっきは慌ただしかっただろう」
シャワールームの熱いお湯の中に、洋を水着のまま閉じ込める。
「ちょっと待って!服、脱がないと」
「脱がしてやるから、洋は大人しくしてろ」
そう言いながら洋をシャワールームのガラスの壁に押し付けて、洋の薄い水着にそっと触れた。
「んっ」
可愛いヒップのそのハート型の穴は、兄さん達にはバレバレだったが、洋だけは何も気が付かず、魅惑的に尻を見せながら廊下を歩くもんだから、思わず手で覆って隠したくなったよ。
流兄さんや翠兄さんにさえ、見せたくないと思ってしまった。
「おいっ丈、なんで水着から?」
まだTシャツを着ている洋が、私の手を制止しながら聞いて来る。
「それはTシャツが濡れて、乳首が透けているのが色っぽいから、そっちは後だ」
などと言い訳でもないが思ったままのことを口にして、水着を足元から抜き、急いで丸めてごみ箱に放り投げた。
「あれ?その水着、捨てちゃうのか」
「これは洋には色っぽすぎて心配だから、もう着るな」
洋は苦笑していた。
「丈は最近面白いな。それじゃあ支離滅裂だよ。くくっ」
「そうか、洋といると確かにおかしい言動が増えたような気がする」
「それって、俺が魅力的だってことでいいのか」
「こいつっ」
甘く魅惑的に微笑む洋は、出逢った頃とは別人のようだ。
いつから私にこんな口を聞くようになったのか。だがそんな甘いことを言えるほど、洋は明るく自分に自信を持てるようになったと思うと、あの月のように朧げで今にも消えそうだった洋が、ここまで本来の自分を取り戻したということに、悦びを感じた。
「丈……確かに新婚旅行もとうとう最後の夜だね。好きにしていいよ。丈の好きなように抱いていいから」
あぁ、甘い甘い誘い文句に酔いそうだ。
「あっでもマンゴージェラードをまだ食べていない」
「後でルームサービスに頼もう」
****
「兄さん、この部屋でいいですか」
通されたのはスイートルームに比べたら、あまりに普通のツインルームだった。それでも誰の目も気にせず、二人だけで過ごせる夢のような部屋に満足した。
「いいよ。どこでもいい。流と一緒なら」
兄さんの口からこんな台詞を聴けるとは、やはり夢のようだ。
そうだ、ここからは兄じゃない。俺の翠になる。
「翠……ありがとう」
翠の細い腰を抱きしめる。まだ下半身は水着のままで、砂もついている。
「翠、まずは風呂に入ろう。砂がついていて気持ち悪いだろう」
「うん、そうだね」
脱衣場で、翠の着ているものを性急に剥いで行く。
「さぁ」
翠の二の腕を引っ張って、シャワールームに閉じ込める。全裸の翠を、透明のガラスの扉に押し付けて抱きしめる。細身だが、それなりに鍛えている翠の躰はしなやかで美しい。硬質の弾力ある太腿をすっと撫であげてやる。
「あっ……」
切なげな声をあげる翠の眼は、もう赤く潤みだしていた。俺は翠の前にしゃがみ、胸の下の所有の証に口づけた。
「流……何故ここばかり」
「覚えていないのか。ここは……」
「え……」
胸の下のキスマークの下には、うっすらとした火傷の痕がまだしつこく残っていた。あの日、翠に何があったのか聞けない。翠も言えない。それならば、俺が出来ることはただ癒すことだけ。
「翠……ずっと守って来た。あの日から俺はずっと守って来た。これからも翠のこと守らせてくれ」
「流……」
翠の手が俺の髪を梳く。優しく五本の指に絡めながら、撫でるように労わるように梳いて来る。
「僕は、ずっと流に重い足枷をはめてしまったんだな」
翠の声はどこか寂しそうだった。
「違う!俺は足枷だなんて思ったことはない!」
「僕は流を置いて結婚したのに、お前はずっと待っていてくれた。僕は流を蔑ろにしたも同然なのに……」
「いいんだ。翠が今、何もかも飛び越えてここに来てくれただけで、もうすべて帳消しだ!」
「流……」
太腿に這わしていた手をそのまま翠の股間へと運ぶと、勃つ兆しを見せていた。ボディソープを手に取り、翠のそこを優しく包んでやる。ソープの滑りを借り扱いてやると、翠が啼いた。
「あっ……んっ」
そのまま全身も泡立てたスポンジで綺麗に洗ってやる。どこもかしこも、爪の先まで俺は翠のことを見つめた。
翠はもう逃げないで、俺にすべてを見せてくれていた。
「翠……もう恥ずかしくないのか」
「いや、恥ずかしいさ。でもいいんだ。流に見ておいて欲しいから」
「そんな最後みたいなこと言うなよ。始まったばかりじゃないか。俺達は」
「そうだね、旅は終わるが始まったんだね」
「そうだ」
切ないことを言う口は、もう塞ごう!
震える躰はガラスに押し付け抱きしめよう!
今から俺は翠を抱くよ……
我慢した分、思う存分抱かせてくれ。
流兄さんから、思ってもいなかった言葉をもらった。今晩は同じフロアのツインルームへ兄さん達は移動するとのことだった。その言葉通り、ホテルのボーイが兄さん達の荷物を手早くまとめ、あっという間に去って行った。
「じゃあ、今から明日のチェックアウトまでは自由行動だ。ゆっくりな」
「兄さん……お気遣いありがとうございます」
「優しい兄だろう?」
「ええ、すごく」
部屋に戻ると、洋がまだ水着姿でソファに座っていた。相当喉が渇いていただらしく、手に持っているペットボトルの水は空っぽになっていた。
「洋、まだそんな恰好じゃ風邪をひくぞ」
「ん、でも喉が渇いてね、それにしても良かったのか。なんだか翠さん達に気を遣わせてしまったね」
「あぁ。兄さん達からの結婚祝いだと思えばいい」
「そうか……でもなんだかやっぱりこういうの慣れないな」
「そうか私は嬉しいだけだがな。さぁおいでシャワーを浴びよう。さっきは慌ただしかっただろう」
シャワールームの熱いお湯の中に、洋を水着のまま閉じ込める。
「ちょっと待って!服、脱がないと」
「脱がしてやるから、洋は大人しくしてろ」
そう言いながら洋をシャワールームのガラスの壁に押し付けて、洋の薄い水着にそっと触れた。
「んっ」
可愛いヒップのそのハート型の穴は、兄さん達にはバレバレだったが、洋だけは何も気が付かず、魅惑的に尻を見せながら廊下を歩くもんだから、思わず手で覆って隠したくなったよ。
流兄さんや翠兄さんにさえ、見せたくないと思ってしまった。
「おいっ丈、なんで水着から?」
まだTシャツを着ている洋が、私の手を制止しながら聞いて来る。
「それはTシャツが濡れて、乳首が透けているのが色っぽいから、そっちは後だ」
などと言い訳でもないが思ったままのことを口にして、水着を足元から抜き、急いで丸めてごみ箱に放り投げた。
「あれ?その水着、捨てちゃうのか」
「これは洋には色っぽすぎて心配だから、もう着るな」
洋は苦笑していた。
「丈は最近面白いな。それじゃあ支離滅裂だよ。くくっ」
「そうか、洋といると確かにおかしい言動が増えたような気がする」
「それって、俺が魅力的だってことでいいのか」
「こいつっ」
甘く魅惑的に微笑む洋は、出逢った頃とは別人のようだ。
いつから私にこんな口を聞くようになったのか。だがそんな甘いことを言えるほど、洋は明るく自分に自信を持てるようになったと思うと、あの月のように朧げで今にも消えそうだった洋が、ここまで本来の自分を取り戻したということに、悦びを感じた。
「丈……確かに新婚旅行もとうとう最後の夜だね。好きにしていいよ。丈の好きなように抱いていいから」
あぁ、甘い甘い誘い文句に酔いそうだ。
「あっでもマンゴージェラードをまだ食べていない」
「後でルームサービスに頼もう」
****
「兄さん、この部屋でいいですか」
通されたのはスイートルームに比べたら、あまりに普通のツインルームだった。それでも誰の目も気にせず、二人だけで過ごせる夢のような部屋に満足した。
「いいよ。どこでもいい。流と一緒なら」
兄さんの口からこんな台詞を聴けるとは、やはり夢のようだ。
そうだ、ここからは兄じゃない。俺の翠になる。
「翠……ありがとう」
翠の細い腰を抱きしめる。まだ下半身は水着のままで、砂もついている。
「翠、まずは風呂に入ろう。砂がついていて気持ち悪いだろう」
「うん、そうだね」
脱衣場で、翠の着ているものを性急に剥いで行く。
「さぁ」
翠の二の腕を引っ張って、シャワールームに閉じ込める。全裸の翠を、透明のガラスの扉に押し付けて抱きしめる。細身だが、それなりに鍛えている翠の躰はしなやかで美しい。硬質の弾力ある太腿をすっと撫であげてやる。
「あっ……」
切なげな声をあげる翠の眼は、もう赤く潤みだしていた。俺は翠の前にしゃがみ、胸の下の所有の証に口づけた。
「流……何故ここばかり」
「覚えていないのか。ここは……」
「え……」
胸の下のキスマークの下には、うっすらとした火傷の痕がまだしつこく残っていた。あの日、翠に何があったのか聞けない。翠も言えない。それならば、俺が出来ることはただ癒すことだけ。
「翠……ずっと守って来た。あの日から俺はずっと守って来た。これからも翠のこと守らせてくれ」
「流……」
翠の手が俺の髪を梳く。優しく五本の指に絡めながら、撫でるように労わるように梳いて来る。
「僕は、ずっと流に重い足枷をはめてしまったんだな」
翠の声はどこか寂しそうだった。
「違う!俺は足枷だなんて思ったことはない!」
「僕は流を置いて結婚したのに、お前はずっと待っていてくれた。僕は流を蔑ろにしたも同然なのに……」
「いいんだ。翠が今、何もかも飛び越えてここに来てくれただけで、もうすべて帳消しだ!」
「流……」
太腿に這わしていた手をそのまま翠の股間へと運ぶと、勃つ兆しを見せていた。ボディソープを手に取り、翠のそこを優しく包んでやる。ソープの滑りを借り扱いてやると、翠が啼いた。
「あっ……んっ」
そのまま全身も泡立てたスポンジで綺麗に洗ってやる。どこもかしこも、爪の先まで俺は翠のことを見つめた。
翠はもう逃げないで、俺にすべてを見せてくれていた。
「翠……もう恥ずかしくないのか」
「いや、恥ずかしいさ。でもいいんだ。流に見ておいて欲しいから」
「そんな最後みたいなこと言うなよ。始まったばかりじゃないか。俺達は」
「そうだね、旅は終わるが始まったんだね」
「そうだ」
切ないことを言う口は、もう塞ごう!
震える躰はガラスに押し付け抱きしめよう!
今から俺は翠を抱くよ……
我慢した分、思う存分抱かせてくれ。
10
お気に入りに追加
446
あなたにおすすめの小説
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
貴方の傍に幸せがないのなら
なか
恋愛
「みすぼらしいな……」
戦地に向かった騎士でもある夫––ルーベル。
彼の帰りを待ち続けた私––ナディアだが、帰還した彼が発した言葉はその一言だった。
彼を支えるために、寝る間も惜しんで働き続けた三年。
望むままに支援金を送って、自らの生活さえ切り崩してでも支えてきたのは……また彼に会うためだったのに。
なのに、なのに貴方は……私を遠ざけるだけではなく。
妻帯者でありながら、この王国の姫と逢瀬を交わし、彼女を愛していた。
そこにはもう、私の居場所はない。
なら、それならば。
貴方の傍に幸せがないのなら、私の選択はただ一つだ。
◇◇◇◇◇◇
設定ゆるめです。
よろしければ、読んでくださると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる