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完結後の甘い話の章
完結後の甘い物語 『流れる星 2』
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緊張した面持ちでお菓子や抹茶を運ぶ洋くんの姿は、たどたどしくもあり可愛らしい。
それにしても、本当に可憐な美しさが滲み出ている。こんなにも綺麗な人と丈は過ごせるなんて、本当に幸せものだ。
今日のために特別に用意した練り切りは、月をイメージした淡黄蘗色のものだ。それから夜毎に姿を変えていく月を模した干菓子も注文した。
どれも洋くんからの希望だった。彼は何故こんなにも月に拘るのだろうか。我が寺の名も「月影寺」……深い縁をやはり感じてしまう。
洋くんの手から皆の懐紙へと、月はゆっくりと移ろいで行く。
「お点前頂戴いたします」
茶室に響く……それぞれの声。
『一期一会』
お茶の心得でよく言われる言葉。今この時間、集う人との関係は二度と同じものはなく、かけがいのないものだ。皆も時を忘れ、この茶席の清寂の精神を感じて欲しい。
翠兄さんの凛とした佇まいのように……
身が引き締まり、清々しい時を皆で共有できた。
「流、美味しかったよ。ありがとう」
皆が去った後、さりげなく翠兄さんが近づいてきて、肩に手を置いてこう言ってくれた。
その言葉だけで満たされる。
いやその言葉だけじゃ満たされない。
どちらにも行けない俺の心。
無骨な俺が茶席を好むのは、翠兄さんに少しでも触れられるような気がするから。でも触れられない関係は続くいている。
****
歓談していると、安志のお母さんに呼ばれた。
「洋くん、ちょっといい?」
「おばさん、今日は来てくださって本当にありがとうございます」
「あのね、洋くんにお祝いがあるから見に来て頂戴」
呼ばれて寺の玄関の脇へ行くと、大量なデパートの包装紙が積んであった。
「これ……全部ですか」
「えっとね、気に入るか分からないけど、これから先の季節のお洋服を揃えてみたの」
「えっ」
こんなに沢山の洋服を俺に?洋服なんて母が亡くなってから……丈以外の誰かにこんなに買ってもらうなんてことなかったのに。
「洋くんの好みにあうか分からないけど、着てみてね」
「ありがとうございます。嬉しいです」
「あのね……夕が元気な頃よく一緒に買い物に行ったの。あなたと安志が、まだベビーカーの頃からよ。ふふっ懐かしい。洋くんは小さい時は本気で女の子と間違えられて、店員さんがピンクの服ばかり勧めてくるから、二人で笑ってしまったわ。でね……」
えっと、なんだか雲行きが怪しいけど、大丈夫か。安志のお母さんは本当にいつまでも少女みたいに無邪気な人で憎めないが。
「でね、少しピンク色のものも買ってしまったの。きっと似合うわよ」
「ピンクっ!?」
「あ、スーツとかシャツとかそういうのよ。女性物じゃないから安心して」
「はぁ…」
渇いた笑いが出てしまった。
昔からよく女の子と間違えられたので、あえてそういう柔らかい色は着てこなかったのに。本当にいとも簡単におばさんは、俺のコンプレックスを飛び越えて来るな。
「せっかく似合うんだから、活かさないとね!これからは。もう安心して暮らせるのだから。それにきっと丈さんも喜ぶわよ。ふふふ……」
ふふふ……って、おばさん……
その時、後ろから別の女性の声がした。
「まぁ、ピンクのスーツですって!ナイスね。私も洋くんが着たところ見てみたいわ。そうだわ、お色直しで着ちゃいなさいよ」
なんだか少し強引で逞しくもある朗らかな声。雰囲気が流さんに似ている。
この人が丈のお母さんだ。
それにしても、本当に可憐な美しさが滲み出ている。こんなにも綺麗な人と丈は過ごせるなんて、本当に幸せものだ。
今日のために特別に用意した練り切りは、月をイメージした淡黄蘗色のものだ。それから夜毎に姿を変えていく月を模した干菓子も注文した。
どれも洋くんからの希望だった。彼は何故こんなにも月に拘るのだろうか。我が寺の名も「月影寺」……深い縁をやはり感じてしまう。
洋くんの手から皆の懐紙へと、月はゆっくりと移ろいで行く。
「お点前頂戴いたします」
茶室に響く……それぞれの声。
『一期一会』
お茶の心得でよく言われる言葉。今この時間、集う人との関係は二度と同じものはなく、かけがいのないものだ。皆も時を忘れ、この茶席の清寂の精神を感じて欲しい。
翠兄さんの凛とした佇まいのように……
身が引き締まり、清々しい時を皆で共有できた。
「流、美味しかったよ。ありがとう」
皆が去った後、さりげなく翠兄さんが近づいてきて、肩に手を置いてこう言ってくれた。
その言葉だけで満たされる。
いやその言葉だけじゃ満たされない。
どちらにも行けない俺の心。
無骨な俺が茶席を好むのは、翠兄さんに少しでも触れられるような気がするから。でも触れられない関係は続くいている。
****
歓談していると、安志のお母さんに呼ばれた。
「洋くん、ちょっといい?」
「おばさん、今日は来てくださって本当にありがとうございます」
「あのね、洋くんにお祝いがあるから見に来て頂戴」
呼ばれて寺の玄関の脇へ行くと、大量なデパートの包装紙が積んであった。
「これ……全部ですか」
「えっとね、気に入るか分からないけど、これから先の季節のお洋服を揃えてみたの」
「えっ」
こんなに沢山の洋服を俺に?洋服なんて母が亡くなってから……丈以外の誰かにこんなに買ってもらうなんてことなかったのに。
「洋くんの好みにあうか分からないけど、着てみてね」
「ありがとうございます。嬉しいです」
「あのね……夕が元気な頃よく一緒に買い物に行ったの。あなたと安志が、まだベビーカーの頃からよ。ふふっ懐かしい。洋くんは小さい時は本気で女の子と間違えられて、店員さんがピンクの服ばかり勧めてくるから、二人で笑ってしまったわ。でね……」
えっと、なんだか雲行きが怪しいけど、大丈夫か。安志のお母さんは本当にいつまでも少女みたいに無邪気な人で憎めないが。
「でね、少しピンク色のものも買ってしまったの。きっと似合うわよ」
「ピンクっ!?」
「あ、スーツとかシャツとかそういうのよ。女性物じゃないから安心して」
「はぁ…」
渇いた笑いが出てしまった。
昔からよく女の子と間違えられたので、あえてそういう柔らかい色は着てこなかったのに。本当にいとも簡単におばさんは、俺のコンプレックスを飛び越えて来るな。
「せっかく似合うんだから、活かさないとね!これからは。もう安心して暮らせるのだから。それにきっと丈さんも喜ぶわよ。ふふふ……」
ふふふ……って、おばさん……
その時、後ろから別の女性の声がした。
「まぁ、ピンクのスーツですって!ナイスね。私も洋くんが着たところ見てみたいわ。そうだわ、お色直しで着ちゃいなさいよ」
なんだか少し強引で逞しくもある朗らかな声。雰囲気が流さんに似ている。
この人が丈のお母さんだ。
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