231 / 1,657
第4章
※安志編※ 太陽の欠片 9
しおりを挟む
summer camp 4
俺の名前はBilly。
背は190cm以上ありハイスクールではアメフト部の主将だった。自分で言うのもなんだが金髪碧眼の容姿は端麗で、未だかつて女に困ったことはない。
今の彼女はチアリーディング部で俺達を応援してくれていたLisaだ。明るいブラウンの髪と眼のエキゾチックな顔立ちの美人で、周りにも公認のステディな仲だ。
俺は秋から地元のニューヨーク大学へ進学する。一応世界大学ランキングでも30位に入る優秀な大学で、いずれは「スポーツビジネス」など専門分野の経営を学ぶ修士課程を目指し、勉学にも励むつもりだ。
ところが!
こんな順風満帆だった俺の人生を刺激する、どうしても気になってしまう、つい目で追ってしまう奴がいる。
そいつは告白されることに慣れきっていた俺に、自分から惚れるということを初めて教えてくれた。それは男で、日本人のRyo(涼)だ。Ryoは日本人といっても幼い頃からこっちで過ごしているネイティブで、考え方も溌剌として明るい。何よりRyoはハイスクールでは、ちょっとした有名人だった。
陸上部で、その走る姿がカモシカのようにしなやかで美しいと評判だった。風を斬って走るRyoの姿を一度見たら、女も男も目が離せなくなると噂されているほどだ。
実際、俺もアメフト部に入ったばかりの一年生の夏に、グランドで走るRyoを垣間見て一気に心を奪われた一人だからな。
日本人ならではの線の細さに加えて、しっとりとした象牙色の滑らかな肌。日本人にしては少し明るめの黒髪は、太陽の光を浴びると栗毛色に輝いていた。そしてその顔立ちがなんとも優し気で憂いを帯びていて、目が離せなくなる。
男のくせに長い睫毛、滑らかな肌に、綺麗な形の唇……本当に整った綺麗な顔立ちだった。
そうだな。まるでギリシャ神話とかに出てきそうな美少年のようだ。同じ男でも……こんなに綺麗な奴がいるなんてと驚いたものだ。
ただしRyoは俊足の上、空手も嗜んでいるので動きも俊敏で、女みたいな綺麗な顔のくせに、女っぽいところなんて微塵もなく男らしかった。
その証拠にRyoに手を出そうとしてコテンパにされた奴がごまんといたからな。
そんなRyoがハイスクール卒業後は日本へ戻ってしまうと聞いたのは、かなりショックだった。俺と同じようにショックを受けた連中が多かったのだろう。プロムでRyoは、夏休みの誘いを山のように受けていた。
プロムで女装したRyoの美しさは抜群だった。余興だったから他にも大勢女装した奴がいたのに、Ryoの周りだけは爽やかな空気が吹き抜けていた。
湖のような深い水色のドレスに漆黒のストレートのロングヘアのウィッグをつけたRyoに、みんな釘づけだったな。あれはまさにオリエンタルビューティーだ。
そんなRyoが数ある夏のヴァカンスの誘いの中からアメフト仲間で企画した俺達のキャンプに来てくれると聞いて勝ち誇った気分になったよ。
「Ryo、来てくれて嬉しいよ」
車でRyoの家に迎えに行く約束をした。バスで行くと遠慮するRyoを途中からガールフレンドのLisaも同乗することで説き伏せたんだ。役得だなと皆にも羨ましがられたものだ。
「悪いな、わざわざ」
「いや、ついでだし。気にするな」
ニコっと笑って助手席に乗ってくるRyoに思わず見惚れてしまう。
可愛い!平静を装い運転しながら、ちらっと助手席に座ったRyoを見てしまう。
まっすぐ伸びた細い脚に濃い色のジーンズが良く似合っている。象牙色の肌を引き立てる濃紺のTシャツも、細い腰に巻きつけた白いリネンのシャツも清楚な雰囲気でいっぱいだ。
Ryoには付き合っている奴はいないのだろうか。女の子と仲良さそうにいつも話してはいるが、ステディなガールフレンドがいるという噂は聞いたことがない。
でも最近のRyoは以前と違う。
プロムの後、久しぶりに会ったRyoはふとした瞬間、切なそうな表情が艶めいていて、まるで誰かに恋しているような雰囲気になっていた。
一体誰なんだよ。Ryoの心を捉えたのは。
「Hi!Ryo~」
「ビリー、俺は後ろに移動するからLisaに助手席に座ってもらって」
「いいよ、このままで」
「いや、Lisaは君の大事に相手だろう。ちゃんと優先しないと怒られるぞ」
途中Lisaが乗って来たので、Ryoは後部座席に移動した。
助手席からRyoが消えてしまい寂しく感じた俺は、バックミラーでRyoをちらちらと確認してしまった。車の揺れが心地よいのか、最初はLisaと俺の会話に相槌を打っていた声は小さくなって、やがて寝息に変わって行った。
「Billy、ねっRyoってば可愛い。小さい子供みたいに寝ちゃったみたい。ねっキスして」
「今運転中だからあとでな」
「もーケチっ!」
Lisaには悪いがそれどころじゃない。Ryoの奴、あんなに気持ち良さそうに、まるで天使が羽を休めているような無防備な寝顔を見せるなんて……いくらLisaが同乗したからって油断しすぎじゃないか。
ずっと見つめていたい美しい寝顔だ。あの形のよい唇にキスをしたら嫌がるだろうか。きつく抱きしめたら怒るだろうか。
そんなことを考えていると下半身がムラムラしてきてしまった。
「Billyってば、もう~Ryoもいるのにここじゃ駄目よ」
Lisaは勘違いして頬を赤らめていた。
俺の名前はBilly。
背は190cm以上ありハイスクールではアメフト部の主将だった。自分で言うのもなんだが金髪碧眼の容姿は端麗で、未だかつて女に困ったことはない。
今の彼女はチアリーディング部で俺達を応援してくれていたLisaだ。明るいブラウンの髪と眼のエキゾチックな顔立ちの美人で、周りにも公認のステディな仲だ。
俺は秋から地元のニューヨーク大学へ進学する。一応世界大学ランキングでも30位に入る優秀な大学で、いずれは「スポーツビジネス」など専門分野の経営を学ぶ修士課程を目指し、勉学にも励むつもりだ。
ところが!
こんな順風満帆だった俺の人生を刺激する、どうしても気になってしまう、つい目で追ってしまう奴がいる。
そいつは告白されることに慣れきっていた俺に、自分から惚れるということを初めて教えてくれた。それは男で、日本人のRyo(涼)だ。Ryoは日本人といっても幼い頃からこっちで過ごしているネイティブで、考え方も溌剌として明るい。何よりRyoはハイスクールでは、ちょっとした有名人だった。
陸上部で、その走る姿がカモシカのようにしなやかで美しいと評判だった。風を斬って走るRyoの姿を一度見たら、女も男も目が離せなくなると噂されているほどだ。
実際、俺もアメフト部に入ったばかりの一年生の夏に、グランドで走るRyoを垣間見て一気に心を奪われた一人だからな。
日本人ならではの線の細さに加えて、しっとりとした象牙色の滑らかな肌。日本人にしては少し明るめの黒髪は、太陽の光を浴びると栗毛色に輝いていた。そしてその顔立ちがなんとも優し気で憂いを帯びていて、目が離せなくなる。
男のくせに長い睫毛、滑らかな肌に、綺麗な形の唇……本当に整った綺麗な顔立ちだった。
そうだな。まるでギリシャ神話とかに出てきそうな美少年のようだ。同じ男でも……こんなに綺麗な奴がいるなんてと驚いたものだ。
ただしRyoは俊足の上、空手も嗜んでいるので動きも俊敏で、女みたいな綺麗な顔のくせに、女っぽいところなんて微塵もなく男らしかった。
その証拠にRyoに手を出そうとしてコテンパにされた奴がごまんといたからな。
そんなRyoがハイスクール卒業後は日本へ戻ってしまうと聞いたのは、かなりショックだった。俺と同じようにショックを受けた連中が多かったのだろう。プロムでRyoは、夏休みの誘いを山のように受けていた。
プロムで女装したRyoの美しさは抜群だった。余興だったから他にも大勢女装した奴がいたのに、Ryoの周りだけは爽やかな空気が吹き抜けていた。
湖のような深い水色のドレスに漆黒のストレートのロングヘアのウィッグをつけたRyoに、みんな釘づけだったな。あれはまさにオリエンタルビューティーだ。
そんなRyoが数ある夏のヴァカンスの誘いの中からアメフト仲間で企画した俺達のキャンプに来てくれると聞いて勝ち誇った気分になったよ。
「Ryo、来てくれて嬉しいよ」
車でRyoの家に迎えに行く約束をした。バスで行くと遠慮するRyoを途中からガールフレンドのLisaも同乗することで説き伏せたんだ。役得だなと皆にも羨ましがられたものだ。
「悪いな、わざわざ」
「いや、ついでだし。気にするな」
ニコっと笑って助手席に乗ってくるRyoに思わず見惚れてしまう。
可愛い!平静を装い運転しながら、ちらっと助手席に座ったRyoを見てしまう。
まっすぐ伸びた細い脚に濃い色のジーンズが良く似合っている。象牙色の肌を引き立てる濃紺のTシャツも、細い腰に巻きつけた白いリネンのシャツも清楚な雰囲気でいっぱいだ。
Ryoには付き合っている奴はいないのだろうか。女の子と仲良さそうにいつも話してはいるが、ステディなガールフレンドがいるという噂は聞いたことがない。
でも最近のRyoは以前と違う。
プロムの後、久しぶりに会ったRyoはふとした瞬間、切なそうな表情が艶めいていて、まるで誰かに恋しているような雰囲気になっていた。
一体誰なんだよ。Ryoの心を捉えたのは。
「Hi!Ryo~」
「ビリー、俺は後ろに移動するからLisaに助手席に座ってもらって」
「いいよ、このままで」
「いや、Lisaは君の大事に相手だろう。ちゃんと優先しないと怒られるぞ」
途中Lisaが乗って来たので、Ryoは後部座席に移動した。
助手席からRyoが消えてしまい寂しく感じた俺は、バックミラーでRyoをちらちらと確認してしまった。車の揺れが心地よいのか、最初はLisaと俺の会話に相槌を打っていた声は小さくなって、やがて寝息に変わって行った。
「Billy、ねっRyoってば可愛い。小さい子供みたいに寝ちゃったみたい。ねっキスして」
「今運転中だからあとでな」
「もーケチっ!」
Lisaには悪いがそれどころじゃない。Ryoの奴、あんなに気持ち良さそうに、まるで天使が羽を休めているような無防備な寝顔を見せるなんて……いくらLisaが同乗したからって油断しすぎじゃないか。
ずっと見つめていたい美しい寝顔だ。あの形のよい唇にキスをしたら嫌がるだろうか。きつく抱きしめたら怒るだろうか。
そんなことを考えていると下半身がムラムラしてきてしまった。
「Billyってば、もう~Ryoもいるのにここじゃ駄目よ」
Lisaは勘違いして頬を赤らめていた。
10
お気に入りに追加
446
あなたにおすすめの小説
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる