重なる月

志生帆 海

文字の大きさ
上 下
227 / 1,657
第4章

※安志編※ 太陽の欠片 7

しおりを挟む
summer camp 2

「Ryo着いたよ」
「あぁ……悪い寝てた?」
「少しな」

 途中からビリーの彼女のLisaも同乗したので、僕は助手席を譲って後ろの席に移動した。二人きりでなくなりほっとしたのか、その途端眠気に襲われて……どうやら小一時間は寝てしまったようだ。Lisaはチアダンスをやっている胸の大きなセクシーな女の子だ。そんなLisaが寝起きの僕の顔を覗き込み、随分ご機嫌だ。

「あーん~やっぱりRyoって寝顔もとっても可愛いのね! 」
「Risaっその可愛いってやめてくれよ。僕は男だから嬉しくないよ」
「ふふっだってね~ビリー、あのプロムでRyoの女装見ちゃったら誰もがそう思うわよね」
「あぁあれは絶品だった!」

 ビリーも後ろを振り向きながらニヤニヤするから、本当に頭にくる。

「もう忘れろ!二人ともそれ以上言ったら、このまま帰るからなっ」


****

 summer campのプログラムは1週間だ。到着後すぐに他の六人とも合流し、ホールで説明を受けた。

 ハイスクールを卒業したばかりの人を対象とした特別プログラムで、今日から一週間男女別のキャビンに泊まりダイニングホールで食事を共にしていくそうだ。キャンプのアクティビティはとても多様で、ミュージカル、オーケストラ、ダンス、ロックバンド、アート、乗馬、ヨット、水上スキー、水泳、バスケットボール、テニスなど数多くあるのでワクワクしてくる。

 ここは施設もかなり充実しているそうだ。

 ミュージカルの舞台、オーケストラ場、ピアノ練習室、ダンススタジオ、最新の機種が並ぶフィットネスセンター、体育館、ロックスタジオ、アートセンター、大小のグランド、馬場、プールにプライベートビーチ、四百人を収容するダイニングホール。設備は最高だ。

「すごい! 今迄で一番豪華なキャンプだ。一週間だけなんてもったいないな」

 僕は身体を動かすことが大好きで好奇心も旺盛な方なので、昔からsummer campは大好きだ。それにしても今回のような大規模なキャンプは珍しく興奮してしまう。日本に行ったら、もうこのような体験をすることはないだろう。これが最後かも……そう思うと最初は乗り気でなかったが、いろいろ吹っ切れ、このメンバーで思う存分楽しもうと思えてきた。

「俺たちはこのバンガローみたいだ」
「うわぁ……何これ? すごく狭い……」

 男四人で一軒のバンガローに泊まることになっていた。入ってみると六畳ほどの一間に二段ベッドがニ台置いてあるだけのログハウスだ。

「施設が豪華なのに、これは狭すぎるなぁ」

 思わず苦笑してしまう位、狭かった。
 屈強なアメフト部の男たちには、流石に辛いだろう。

しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

泣くなといい聞かせて

mahiro
BL
付き合っている人と今日別れようと思っている。 それがきっとお前のためだと信じて。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。

今日くらい泣けばいい。

亜衣藍
BL
ファッション部からBL編集部に転属された尾上は、因縁の男の担当編集になってしまう!お仕事がテーマのBLです☆('ω')☆

別に、好きじゃなかった。

15
BL
好きな人が出来た。 そう先程まで恋人だった男に告げられる。 でも、でもさ。 notハピエン 短い話です。 ※pixiv様から転載してます。

帰宅

papiko
BL
遊んでばかりいた養子の長男と実子の双子の次男たち。 双子を庇い、拐われた長男のその後のおはなし。 書きたいところだけ書いた。作者が読みたいだけです。

処理中です...