重なる月

志生帆 海

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第4章

時を動かす 20

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 丈の手のひらが俺の躰のラインをゆっくりと辿り始め、下半身にまでやってくる。丈の指先が絡みつくと、まるで待っていたかのように俺のそれは膨らみ始める。丈の指先は優しくそれを掴み……ゆるゆると上下に動き出す。

「んっ……ふっ……あっ」

 俺の口から次第に深い吐息が漏れ出してしまう。ぶるっと上り詰めるものがあって、立っているのが辛くなる。

「丈……このまま、ここで?」
「嫌か……洋のここ可愛いよ。ピンク色になって、随分濡れているな」
「いちいち言わなくていい。そんなことは」
「そうか? ぴくぴくしていて可愛いのに」

 丈の口から低く響く艶っぽい声で、そんなこと言われたら恥ずかしくてしょうがない。いつだって、まるで初めて丈を受け入れるように俺の躰はリセットされ、そしてまた抱かれ……感じて……その繰り返しだ。

 指先での愛撫を繰り返されれば足が震え、背後の丈にもたれるように寄りかかってしまう。するとぴたりと尻に丈の昂ぶりを感じてしまうので、また俺の躰が熱くなっていく。

 月明かりが降り注ぐ屋根裏部屋の空気が、どんどん濃密なものになっていく。 二人の熱い息遣いだけが、広がっていく。

「あっ……丈、俺もうイキそう! 手っ離せよっ」
「いいんだよ、洋……このままイッテ」
 
 丈が俺の先端の割れ目を爪でかりっと刺激すれば、躰がぶるっと震え、あっけなく達してしまった。

「ああっ!」
「洋。私も欲しい」
「えっちょっと待って」

 丈の切羽詰まった声が耳元に届く。達したばかりの躰はまだ敏感で、正直今触れられるのは辛い。だが俺は無言で頷くのみだ。

 丈にだけ……丈にしか、もう触らせない……俺の躰。

 ふわっと横抱きにされたかと思うと、脱がされたパジャマの上にそっと寝かされた。

「ベッドにと思ったが我慢できない。ここでいいか」
「うん……俺ももう」

 膝頭を丈に掴まれ、そのまま左右に大きく開かれる。

「くっ」

 何度丈と躰を重ねても、この姿勢は女のようで恥ずかしい。丈が俺の裸の腰をぐっと抱き寄せれば、その瞬間、躰が戦慄く。丈の指は先ほど俺が放ったもので濡れていて、その指で入口を丁寧に解される。

「あっ……やっ……ふっ…ん」

 どんどん開かれていく躰。丈の指先によって俺は丈を迎える躰に変化していくようだ。

「洋、凄いよ。指しめつけてくるな」
「もう言うなよ。恥ずかしくなる」
「ふっこんな姿を見せているのに、これ以上恥ずかしくなるのか」
「今日の丈は……意地悪だ」
「散々じらされたからな」

 言葉でも指先でも攻められて、俺の腰は本能的に、物欲しげに揺れてしまう。

「丈の」
「なんだ? 聴こえない」
「挿れてくれ……もう」
「ふっ……いい子だ。ちゃんと言えるようになったな」

 恥ずかしいけど気持ちがいい。丈のもので躰の隙間を埋めて欲しい。丈の指先によって、俺の後ろの蕾が開かれ、左右をかきわけてググっと侵入してくる。

「くっ」

 喉が鳴ってしまう。何度躰を重ねてもこの瞬間、この圧迫感に躰が強張ってしまう。

「洋……力を抜いて」

 丈がいつものように髪を撫でてくれ、優しい口調でなだめてくれれば、躰の力がふわっと抜けて行く。そしてそれと引きかえに、ズズっと丈のものが躰の奥深い所に更に入り込んで来る。俺の感じるところを刺激し出せば、もう喘ぐような声しか発せられないほど乱れてしまう。

「あっ……ああ…んー」

 ずり上がりそうになる俺の太腿を丈の手の平が押さえつけ、そこにも愛撫を加えてくる。そこは酷く敏感な部分で泣きたいくらい恥ずかしくて気持ちがいい。もう何も考えられないよ。

「洋……気持ちいいか」
「あっ…嫌だ……深い! まだ動かさないで」

 丈はさらに腰を沈めてくる。そしてゆったりと腰を動かしてくる。

「あぁ……」

 丈と俺の躰がぴったりと合わさり、大きく躰ごと揺さぶられる。すると快楽の波が一気に押し寄せて、大きな大きな波にのまれそうになる。

 のまれないように、俺は丈と手を繋ぐ。
 ぎゅっと離れない様に、強くしっかりと。
 丈となら怖くない。
 この先何があっても丈となら乗り越えられる。

「あっ……やっ」
「洋……」
「丈っ」
「くっ」

 最後に丈が俺に重く圧し掛かり深く口づけされた。その瞬間、躰の奥深い所に滲み出るような熱を感じた。俺も深い絶頂感と共に達した。

「はっ……はぁ」

 涙が滲む目を閉じれば、浮かんでくるよ。大きな波を乗り越えた先に見えるものが……

 それは、穏やかな海に浮かぶ満月だった。
 時を動かす力は、今満ちたようだ。

 今の俺達なら出来る。
 そう確信した瞬間だ。

『時を動かす』了
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