重なる月

志生帆 海

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第2章

月輪の約束 12

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「うっ……うう……」

 指輪を見て激しく動揺する洋に驚いた。

 何故、君は泣く?

 私たちの間に、一体何があったのか。

 それを知りたくて教えてもらいたくて……気持ちが焦る。すると激しく泣く洋が、突然自ら深い口づけをし、私をベッドに押し倒した。

 何を急ぐ?

 何を焦る?

 こんなに積極的な洋は見たことがない。私を押し倒した後、すぐに私の躰に覆いかぶさって来た。そしてそのまま華奢な肩を小刻みに震えさせている。顔を私の胸に埋めているので表情が読み取れない。

「洋……?」

 そっとその薄い肩を抱き寄せてやる。

「話してくれないか。洋の知っていること、思い出したことを」

「うっ……丈。驚かないで聞いてくれるか、俺を信じてくれるか」

「あぁ信じるよ。だから……話してみろ」

「俺はあの墓の前で倒れてから、昔の俺に会っていたようだ。今までも朧げにそいつの夢を見ていたが、あんなにもはっきりと見たのは今回が初めてだった。いつの時代か分からないが、あいつは泣いていたよ。お前を探しているようだった。そしてあいつが泣いた涙は……丈が持っていたあの指輪の中を潜り抜けた」

 洋は私の胸の上で泣きながら、倒れていた間に彷徨った世界のことを一気に話してくれた。確かにとても不思議な内容だ。

「もしかして……この指輪に見覚えがあるのか」

「あぁだってあいつの胸で揺れていたから」

「そうだったのか。実は私もこのネックレスに触れた時、遠い昔の時代劇に出てくるような白いガウンのようなものを羽織って、王宮の長い廊下を歩いている自分をふっと思い出したのだ」

「えっ……本当?それはきっとあいつがいた時代だ!丈はやっぱりあいつが探していた男の生まれ変わりなんだ!こんなことってあるのか。遠い遠い昔からのつながりだったなんて……丈と俺の関係が!」

 洋の興奮は止まらない。

「洋……私の記憶は朧げだが、君の話すことをすんなりと受け入れられる。何故だ?」

「丈……俺を抱いてくれ。俺達は間違ってなかった。これでいいんだ。もうずっと昔から探しあっていた! 求め合っていた!俺たちの出会いは運命だったんだよ!」

 泣きじゃくりながら懸命に話す洋を抱きしめてやる。そして今度は私の方から口づけしてやる。洋が顔をあげ躰を起こしたので、私も上体を起こし向かい合い、洋の細い腰に手を回しぐっと引き寄せてやった。

「丈……ぐすっ……」

 幼子のように泣きじゃくったせいで、目尻に浮かんだ今にも零れ落ちそうな大粒の涙を、そっと吸い取ってやり乱れた黒髪を整えてやった。そして一呼吸おいてから、洋の胸元に月輪のネックレスをかけてやった。

 その瞬間、指輪は月のようにしっとりと白く仄かに輝いた。

****

『悲しい月』春の虹~重なる月~とリンクする内容になっています。

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