重なる月

志生帆 海

文字の大きさ
上 下
33 / 1,657
第1章

君に抱かれる 1

しおりを挟む
 俺の方から誘ったんだ。

 いきなり丈に抱き付き「抱いて欲しい」と頼むなんて ……今までの俺にはありえない行動だ。そう頼んだ途端 いきなり横抱きにされベッドへ運ばれた。

 見上げると丈の男らし熱い眼差しが注がれていた。

 途端に高まる胸のうち……

 ドクンドクン 
 自分の心臓の音が耳に響いてくる。

 ギシッ 

 ベッドが軋む音が静まった部屋に響き、お互いの息遣いだけが妙に大きく聞こえるようで、心臓がバクバクしてきた。覚悟を決めた俺は、震える手を逞しい背中に伸ばし、自ら丈を誘った。

 無理したわけじゃない。そうしたかったんだよ。この瞬間を待っていたは俺の方なのかもしれない。

 丈から受け取る甘い情熱のこもった口づけ。口づけって……こんなに甘いものだなんて、何も知らなかったよ。

 甘くもっともっと欲しくなる丈の柔らかい唇の温かさ。俺の唇を吸い、中へ挿しこまれる舌の動きに頭がぼんやりとしてくる。 甘美なその口づけに酔いしれ 、ただ欲望のままにもっともっと欲しくなっていく。

「あっ」

 またこの感覚だ。 俺の中心が固くなっていくのが分かる。 

 そこに丈の男らしい骨ばった指が添えられると 、その熱は暴れ出し外へ外へ出したくなり、擦られた途端、熱がはじけてしまった。

 あっけないその自分のものに一気に恥ずかしさが込み上げてくる 。

「あぁ……やっ駄目」 

 もうもうもう 、頭が回らない 。
 この後の展開 、知っているよ。
 どうするかくらい。
 でも……もう苦しい 
 心が、先走る躰に追いつかないんだ !

「洋……落ち着いて……大丈夫だから」 

耳元で囁かれる丈の低く落ち着いた声に、痺れる。

「あ……あぁ」 

 丈が大丈夫って言ってくれるのなら、大丈夫だと思える 。信じられない位、素直な俺がいることに驚くばかりだ 。もうされるがままに 、すべて委ねよう。

 躰の力が抜けたところに 、丈の指がそっと侵入してくる 。

 ビクッ 

 躰は反応するが拒絶反応じゃない。確実に感じている。蠢く指に、なんだか奥の方がムズムズしてくるよ。

「洋……指増やすよ」 

 その声と共に、俺の中を圧迫する力が増していく。

「ふっ……あっ……あ」

 指は何かを探すように、俺の中を彷徨っている 。

「ここか?」 

 丈の指が的を絞ったように、一点をぐいと押し上げてきた。

「あっ!」 

 大きな声が漏れてしまった 。だってそこは ……そこは!
  
「洋……ここが気持ちいいか。ここだな」

 グイグイとリズムよく刺激される度に、甘い疼きが躰の中から沸き起こり、自然と腰が揺れ出してしまった。

「あうっ……うッ……丈!丈!もう今日はだ……め……ここまでにして……お願い !おかしくなる!」

 喘ぎ声と共に耐えがたい快楽に翻弄された口から……静止を求める声があがってしまう。嫌なわけじゃない。でも怖い。

 だってこの先は……。

 

しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

泣くなといい聞かせて

mahiro
BL
付き合っている人と今日別れようと思っている。 それがきっとお前のためだと信じて。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。

別に、好きじゃなかった。

15
BL
好きな人が出来た。 そう先程まで恋人だった男に告げられる。 でも、でもさ。 notハピエン 短い話です。 ※pixiv様から転載してます。

帰宅

papiko
BL
遊んでばかりいた養子の長男と実子の双子の次男たち。 双子を庇い、拐われた長男のその後のおはなし。 書きたいところだけ書いた。作者が読みたいだけです。

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版)

処理中です...