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第1章
君を抱く 1
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私は部屋に戻ったのはいいが、ずっと壁にもたれていた。どうにも座っていられない気分だ。
冷静になれ、落ち着け。一体この感情は何だ。眠ってしまった洋に勝手にキスするなんて、私も結局は……ただの意思の弱い男だったのか。
目を瞑り心をクールダウンしていると、ドアを小さくノックする音が響いた。洋以外、この部屋を叩く奴はいない。
「……どうした?」
ドアを開けると、真っ白なシャツに着替えた洋が俯いて立っていた。
「目が覚めたのか」
「んっ……その……」
「具合でも悪いのか」
帰宅後びしょ濡れで眠っていた姿を思い出し 、私は慌てて洋に近寄り額に手を当ててみた。
「良かった。熱はないようだな」
「あ……あの」
ますます俯いていく洋の顔を覗き込むと 、耳がみるみる赤くなっていった。
「洋?」
不審に思って額にもう一度手を当てると、洋の華奢な指がその上に重なった。
「丈……俺は……」
何かを決心したような 洋の思いつめた表情に不安が増す 。
「一体どうしたのだ?ハッキリ言え」
「……」
その瞬間……ふわりと洋が私に抱きついてきた。
「えっ!」
洋の表情が伺えないが、肩が小刻みに震えている。そして彼の手が私の背中へと遠慮がちに回された。
「……丈は俺のこと……」
そこまで言って言い淀んでいる。
早く……その先を早く告げてくれ。
「丈……さっき俺にキスしたよな」
「えっ!」
気が付いていたのか。それならば認めないわけにはいかないだろう。
「あぁ」
「どうして……した?」
「……」
もう全て話してしまおうか。このまま洋に距離を置かれることになってしまっても 、もうこの感情を我慢できない。私も意を決して洋の背中に手をまわし 、ぎゅっと力を込めて抱きしめてから 一気に想いを伝えた。
「洋……どうか驚かないで聞いてくれ。どうやら私は君のことが好きらしい。 好きな女に触れるのと同じように洋の躰にもっと触れたい、ひとつになりたいと思っている。こんなの気持ち悪いだろう。近頃ではそう思う気持ちが止められなくなってきている。だから思わずキスしてしまった。どうか許してくれ」
抱きしめている洋の肩がびくっと一瞬震えたが、私の腕から逃げることなく背にまわす手に力が込められたのを感じた。
暫しの沈黙の後 、消え入るような声だったが確かな意思を持った声で 、洋が答えてくれた。
「丈……俺も……君のことが好きなんだ。最近気になってしょうがないんだ。俺どうしたんだろう?こんな気持ちになるなんて自分が信じられないよ。持て余して参っている……」
さらにもっともっと小さな声で……
「丈になら、抱かれてもいい」
「……それは本気か」
「……本気だよ」
その言葉で躰中の血が、一気に沸き立つのを感じた。
理性というものはこんなにも簡単に吹き飛ぶものなのか。冷静沈着と言われ続けていた自分なのに、信じられないほど洋に対して欲情していた。
「ならば……」
「うわっ」
そのまま抱きしめている洋の脚を担ぎ、横抱きの状態でベッドへ連れて行った。そっと寝かせてやると……洋はまっすぐな瞳で私のことを見上げた。
顔を赤く染め、堪らなく恥ずかしそうな表情を浮かべているが、逃げる様子もなくじっとしていた。
「洋、いいのか……本当に?君をこのまま抱いても?」
冷静になれ、落ち着け。一体この感情は何だ。眠ってしまった洋に勝手にキスするなんて、私も結局は……ただの意思の弱い男だったのか。
目を瞑り心をクールダウンしていると、ドアを小さくノックする音が響いた。洋以外、この部屋を叩く奴はいない。
「……どうした?」
ドアを開けると、真っ白なシャツに着替えた洋が俯いて立っていた。
「目が覚めたのか」
「んっ……その……」
「具合でも悪いのか」
帰宅後びしょ濡れで眠っていた姿を思い出し 、私は慌てて洋に近寄り額に手を当ててみた。
「良かった。熱はないようだな」
「あ……あの」
ますます俯いていく洋の顔を覗き込むと 、耳がみるみる赤くなっていった。
「洋?」
不審に思って額にもう一度手を当てると、洋の華奢な指がその上に重なった。
「丈……俺は……」
何かを決心したような 洋の思いつめた表情に不安が増す 。
「一体どうしたのだ?ハッキリ言え」
「……」
その瞬間……ふわりと洋が私に抱きついてきた。
「えっ!」
洋の表情が伺えないが、肩が小刻みに震えている。そして彼の手が私の背中へと遠慮がちに回された。
「……丈は俺のこと……」
そこまで言って言い淀んでいる。
早く……その先を早く告げてくれ。
「丈……さっき俺にキスしたよな」
「えっ!」
気が付いていたのか。それならば認めないわけにはいかないだろう。
「あぁ」
「どうして……した?」
「……」
もう全て話してしまおうか。このまま洋に距離を置かれることになってしまっても 、もうこの感情を我慢できない。私も意を決して洋の背中に手をまわし 、ぎゅっと力を込めて抱きしめてから 一気に想いを伝えた。
「洋……どうか驚かないで聞いてくれ。どうやら私は君のことが好きらしい。 好きな女に触れるのと同じように洋の躰にもっと触れたい、ひとつになりたいと思っている。こんなの気持ち悪いだろう。近頃ではそう思う気持ちが止められなくなってきている。だから思わずキスしてしまった。どうか許してくれ」
抱きしめている洋の肩がびくっと一瞬震えたが、私の腕から逃げることなく背にまわす手に力が込められたのを感じた。
暫しの沈黙の後 、消え入るような声だったが確かな意思を持った声で 、洋が答えてくれた。
「丈……俺も……君のことが好きなんだ。最近気になってしょうがないんだ。俺どうしたんだろう?こんな気持ちになるなんて自分が信じられないよ。持て余して参っている……」
さらにもっともっと小さな声で……
「丈になら、抱かれてもいい」
「……それは本気か」
「……本気だよ」
その言葉で躰中の血が、一気に沸き立つのを感じた。
理性というものはこんなにも簡単に吹き飛ぶものなのか。冷静沈着と言われ続けていた自分なのに、信じられないほど洋に対して欲情していた。
「ならば……」
「うわっ」
そのまま抱きしめている洋の脚を担ぎ、横抱きの状態でベッドへ連れて行った。そっと寝かせてやると……洋はまっすぐな瞳で私のことを見上げた。
顔を赤く染め、堪らなく恥ずかしそうな表情を浮かべているが、逃げる様子もなくじっとしていた。
「洋、いいのか……本当に?君をこのまま抱いても?」
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