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22 彼女の秘密【レオン視点】
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俺はレベッカさんのことを何も知らなかった。知らないまま彼女の優しさと、彼女の愛にずっと守られていたんだ。
人生に絶望していたあの日、彼女に頭を撫でてもらい『泣いていいよ』と言ってもらった瞬間に心が救われた。魔法をかけてもらったから、レベッカさんが好きなんじゃない。彼女の優しい微笑みに、一目惚れしたんだ。
ああ、俺はどうして彼女がずっと抱えていた哀しい秘密に気が付かなかったのだろう。大好きなレベッカさんと付き合えたと浮かれていた自分が嫌になる。
――結婚して欲しいなんて。
彼女から様々な物を奪った俺。どの口がそんなことを言うのか。
婚約したい結婚したい……と言う俺に良い返事をしてくれないのは、自分がまだ彼女に相応しい大人の男になれていないだけだと思っていた。
彼女に苦労をかけない金と地位が欲しい。そしてレベッカさんの隣にいても恥ずかしくないように、魔法使いとして一人前になりたいと思って必死に頑張ってきた。
「ごめん、レベッカさん」
俺は自分のことばかり考えていた。彼女はどんな気持ちで俺の言葉を聞いていたのだろう。
知らぬ間にずっと傷付けていたこと……謝っても許されることじゃない。
♢♢♢
「団長、これお土産です」
俺は旅行から帰った翌日レベッカさんと一緒に買ったかなり良い酒を、団長の執務室に届けた。
「おっ、いいじゃねぇか。さすがレベッカ嬢!酒の味をわかってるな。センスがいい」
「どうせ俺はまだ酒のことわかりませんよ」
彼女のチョイスだとすぐに気が付かれたことが悔しくて、唇を尖らせた。
「くっくっく、お前はまだまだガキだからな。大人の味はまだ早いだろうよ」
だめだ。このまま団長のペースに乗せられたら、揶揄われて終わってしまう。
「団長のおかげで旅行とっても楽しかったです。ありがとうございました」
俺はレベッカさんに言われた通り、冷静に淡々と団長にそう告げた。すると、団長は少し驚いた顔をした後……ニィッと意地悪く微笑んだ。
――なんか嫌な予感。
その予感は的中していた。団長は俺の肩を強引に抱き寄せた。
「悪かったな、ガキ扱いして。お前はもう男だもんな?」
「……?」
一体何の話をしているのか?俺は生まれてからずっと男だ。
「ちゃんと優しくできたんだろうな?だけど、ずっと惚れてた女が初めてなんて、お前も幸せじゃねぇか」
バシバシと肩を叩かれて、初めてその意味がわかった。
「なっ……!してませんよ。そういうことは結婚してからって決めてますから」
俺は真っ赤になりながら、団長に怒りの声をあげた。
「はあぁ!?お前……俺が何のために気を利かせて同じ部屋にしてやって、金まで払ってやったと思ってんだ!それでも男か、このへタレ!!」
「知りませんよ。団長が勝手にしただけでしょう!俺達はこれからずっと一緒ですから、ゆっくり関係を深めます。時間はいくらでもあるんですから、焦る必要なんてありませんしね」
怒りのままそう言うと、団長は急に真面目な顔になった。
「……時間が無限だと思ってるところがクソガキなんだよ」
「え?」
「魔法使いはいつ死ぬかわからない。俺達はそれくらいリスクのある仕事をしてる。大事な女だって事故や病気……急に死ぬことだってあるんだぜ?」
静かなトーンで淡々と話す団長に揶揄いの色は全くない。
「俺はお前の何倍も生きてきて、色んな人間が死ぬ場面を何度も見てきた。だから一日一日後悔がないように生きろ」
「団長……?」
「時間は常に有限だ。それだけ忘れるな」
いつもと違う雰囲気に戸惑っている俺に「さっさと任務に行け」としっし、と手で払われて執務室を追い出された。
それがどういう意味かなんて……この時の俺はよくわかっていなかった。
それから数日後、俺は書類を出すために事務室へ寄った。レベッカさんに逢えると、ご機嫌で向かったがそこに彼女はいなかった。
「あれ?あの……事務長、レベッカさん席を外しているんですか?」
俺は必要な書類を、事務長に渡しながら彼女がどこにいるのか尋ねた。せっかく逢えると思っていたのに残念だ。
「レベッカ嬢の兄君が急にこちらに来られてね。話したいことがあるようだったから、早めの休憩に行ってもらったんですよ」
「えっ!?レベッカさんの兄上が来られているんですか!!」
なんというチャンスだろう。本来なら先にご両親に会うべきなのはわかっているが、せっかくの機会なので彼女の兄上にご挨拶をしたい。
「どこへ行かれたかわかりますか?」
「ミーティングルームを使ってもいいかと聞かれましたので、そこで食べているかもしれませんね」
「なるほど!ありがとうございます」
「あ、レオン君。悪いけどこの書類を団長まで届けてくれるかな?」
事務長から書類を渡されて「もちろんです」と受け取った。一度戻る時間も惜しく、俺はそのままミーティングルームへ向かった。
行く前にピッと制服の襟を正して、身だしなみを整えた。そんなことで何が変わるわけではないだろうが、レベッカさんの家族に少しでも嫌われたくなかった。
ミーティングルームに近付くと、言い争うような声が聞こえてきた。
何を言っているかまでは聞こえないが、レベッカさんの声が聞こえる。いつも冷静な彼女が声を荒げるのは珍しい。
――喧嘩……?
その時に、耳を疑うような言葉が聞こえてきた……話しているのはきっと彼女の兄上だろう。
「大事な妹の命を奪った奴が恋人だなんて、私は絶対に認めない。きっと父上や母上も同じ気持ちだ」
一瞬意味がわからなかった。大事な妹はレベッカさんのこと、恋人とは俺のことだろう。
――命を奪った?
とても嫌な予感がする。レベッカさんは切った髪が伸びないだけだと言っていた。でも……それが彼女の嘘だったら?
俺は頭が真っ白になって、手に持っていた書類がバサバサと床に散らばった。
物音に気が付いて、扉を開けたレベッカさんが酷く驚いているのがわかる。
「レベッカ……さ……ん、どういう……意味?命を奪うって……どういう……」
レベッカさん、お願いだから違うと言ってくれ。お願いだから……。
彼女の苦しそうな顔を見て、残念ながら事実なのだと血の気が引いていった。そして俺は後ろにいた男性に胸ぐらを乱暴に掴まれた。
「レオンって言うのはお前か。どんな理由があったにしろ、私はお前を許さない。二度と妹に近付くな!」
「お兄様っ!やめてくださいませ」
やはりこの人はレベッカさんの兄上か。彼女が必死に止めようとしているが、彼は俺をギロリと睨みギリギリと首を絞めていく。
「それは私の妹の命と引き換えに手に入れた幸せだと、ちゃんとわかってるんだろうな?」
「命……と引き換え。髪が……伸びないだけじゃ……」
「はっ、冗談も休み休み言え。お前も魔法使いならわかるだろう。魔法は対価がないと発動しない。死にかけてたお前を助けた対価が髪だけなわけないだろ!!」
そんな話は聞いていない。いや、本当に?俺は一度も疑問に思わなかったのか?自分に都合の悪い可能性をわざと考えないようにしてたのではないか。
この国で片手ほどしかいないSランク級の魔力を持った人間を生き返らせるのに、対価が髪だけなんて安すぎる。
「お前知らずにレベッカの恋人でいたのか?テメエはどれだけ脳内お花畑なんだ。妹は優しいからその事実を言えなかっただけだ。それをまともに信じている時点で、お前は妹を任せるに値しない男だ」
胸に言葉が突き刺さる。俺のせいで……俺のせいでレベッカさんを苦しめていたんだ。
兄上はレベッカさんを家に連れ戻すと言っていた。彼女が魔法省を辞めたら、二度と逢うことなど出来ないだろう。
彼が出て行った後、レベッカさんは魔法のことを詳しく話してくれた。そして俺のことをすごく心配してくれているのがわかる。
なんで俺なんかの心配するんだよ。自分の命が俺のせいで減っていて、明日生きていられるのかすらわからないのに。
どうして人のことばかり考えるんだ。どうしてそんな優しいんだ。どうして……そんな……当たり前のように死ぬことを受け入れているんだ。
俺はレベッカさんに八つ当たりをした。絶対に言ってはいけないことを彼女に言ってしまった。
『あのまま死ねばよかった』
そんなことは口が裂けても言っていいはずがない。だけど、どうしてもやりきれなかった。
彼女に思い切り頬を打たれ、正気を取り戻した。レベッカさんは怒りと哀しみの表情をしていた。
『死ねばよかったなんて二度と言わないで』
彼女にこんな……こんな酷い顔をさせたいわけじゃない。レベッカさんにはいつだって笑っていて欲しい。そのはずだったのに。俺は彼女を抱き締めて、何度も何度も謝った。
あなたの命を奪ってごめん。
あなたの嘘に気が付かなくてごめん。
あなたを好きになってしまってごめん。
あなたとあの日出逢ってしまってごめん。
いくら謝っても足りそうにない。いつもあなたに優しく守られて、俺ばっかり幸せで……まだ何も返せていない。
――俺が絶対にあなたを死なせたりしない。
何を犠牲にしたとしても、彼女を助ける。それが俺の使命だと心に誓った。
人生に絶望していたあの日、彼女に頭を撫でてもらい『泣いていいよ』と言ってもらった瞬間に心が救われた。魔法をかけてもらったから、レベッカさんが好きなんじゃない。彼女の優しい微笑みに、一目惚れしたんだ。
ああ、俺はどうして彼女がずっと抱えていた哀しい秘密に気が付かなかったのだろう。大好きなレベッカさんと付き合えたと浮かれていた自分が嫌になる。
――結婚して欲しいなんて。
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「ごめん、レベッカさん」
俺は自分のことばかり考えていた。彼女はどんな気持ちで俺の言葉を聞いていたのだろう。
知らぬ間にずっと傷付けていたこと……謝っても許されることじゃない。
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俺は旅行から帰った翌日レベッカさんと一緒に買ったかなり良い酒を、団長の執務室に届けた。
「おっ、いいじゃねぇか。さすがレベッカ嬢!酒の味をわかってるな。センスがいい」
「どうせ俺はまだ酒のことわかりませんよ」
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「くっくっく、お前はまだまだガキだからな。大人の味はまだ早いだろうよ」
だめだ。このまま団長のペースに乗せられたら、揶揄われて終わってしまう。
「団長のおかげで旅行とっても楽しかったです。ありがとうございました」
俺はレベッカさんに言われた通り、冷静に淡々と団長にそう告げた。すると、団長は少し驚いた顔をした後……ニィッと意地悪く微笑んだ。
――なんか嫌な予感。
その予感は的中していた。団長は俺の肩を強引に抱き寄せた。
「悪かったな、ガキ扱いして。お前はもう男だもんな?」
「……?」
一体何の話をしているのか?俺は生まれてからずっと男だ。
「ちゃんと優しくできたんだろうな?だけど、ずっと惚れてた女が初めてなんて、お前も幸せじゃねぇか」
バシバシと肩を叩かれて、初めてその意味がわかった。
「なっ……!してませんよ。そういうことは結婚してからって決めてますから」
俺は真っ赤になりながら、団長に怒りの声をあげた。
「はあぁ!?お前……俺が何のために気を利かせて同じ部屋にしてやって、金まで払ってやったと思ってんだ!それでも男か、このへタレ!!」
「知りませんよ。団長が勝手にしただけでしょう!俺達はこれからずっと一緒ですから、ゆっくり関係を深めます。時間はいくらでもあるんですから、焦る必要なんてありませんしね」
怒りのままそう言うと、団長は急に真面目な顔になった。
「……時間が無限だと思ってるところがクソガキなんだよ」
「え?」
「魔法使いはいつ死ぬかわからない。俺達はそれくらいリスクのある仕事をしてる。大事な女だって事故や病気……急に死ぬことだってあるんだぜ?」
静かなトーンで淡々と話す団長に揶揄いの色は全くない。
「俺はお前の何倍も生きてきて、色んな人間が死ぬ場面を何度も見てきた。だから一日一日後悔がないように生きろ」
「団長……?」
「時間は常に有限だ。それだけ忘れるな」
いつもと違う雰囲気に戸惑っている俺に「さっさと任務に行け」としっし、と手で払われて執務室を追い出された。
それがどういう意味かなんて……この時の俺はよくわかっていなかった。
それから数日後、俺は書類を出すために事務室へ寄った。レベッカさんに逢えると、ご機嫌で向かったがそこに彼女はいなかった。
「あれ?あの……事務長、レベッカさん席を外しているんですか?」
俺は必要な書類を、事務長に渡しながら彼女がどこにいるのか尋ねた。せっかく逢えると思っていたのに残念だ。
「レベッカ嬢の兄君が急にこちらに来られてね。話したいことがあるようだったから、早めの休憩に行ってもらったんですよ」
「えっ!?レベッカさんの兄上が来られているんですか!!」
なんというチャンスだろう。本来なら先にご両親に会うべきなのはわかっているが、せっかくの機会なので彼女の兄上にご挨拶をしたい。
「どこへ行かれたかわかりますか?」
「ミーティングルームを使ってもいいかと聞かれましたので、そこで食べているかもしれませんね」
「なるほど!ありがとうございます」
「あ、レオン君。悪いけどこの書類を団長まで届けてくれるかな?」
事務長から書類を渡されて「もちろんです」と受け取った。一度戻る時間も惜しく、俺はそのままミーティングルームへ向かった。
行く前にピッと制服の襟を正して、身だしなみを整えた。そんなことで何が変わるわけではないだろうが、レベッカさんの家族に少しでも嫌われたくなかった。
ミーティングルームに近付くと、言い争うような声が聞こえてきた。
何を言っているかまでは聞こえないが、レベッカさんの声が聞こえる。いつも冷静な彼女が声を荒げるのは珍しい。
――喧嘩……?
その時に、耳を疑うような言葉が聞こえてきた……話しているのはきっと彼女の兄上だろう。
「大事な妹の命を奪った奴が恋人だなんて、私は絶対に認めない。きっと父上や母上も同じ気持ちだ」
一瞬意味がわからなかった。大事な妹はレベッカさんのこと、恋人とは俺のことだろう。
――命を奪った?
とても嫌な予感がする。レベッカさんは切った髪が伸びないだけだと言っていた。でも……それが彼女の嘘だったら?
俺は頭が真っ白になって、手に持っていた書類がバサバサと床に散らばった。
物音に気が付いて、扉を開けたレベッカさんが酷く驚いているのがわかる。
「レベッカ……さ……ん、どういう……意味?命を奪うって……どういう……」
レベッカさん、お願いだから違うと言ってくれ。お願いだから……。
彼女の苦しそうな顔を見て、残念ながら事実なのだと血の気が引いていった。そして俺は後ろにいた男性に胸ぐらを乱暴に掴まれた。
「レオンって言うのはお前か。どんな理由があったにしろ、私はお前を許さない。二度と妹に近付くな!」
「お兄様っ!やめてくださいませ」
やはりこの人はレベッカさんの兄上か。彼女が必死に止めようとしているが、彼は俺をギロリと睨みギリギリと首を絞めていく。
「それは私の妹の命と引き換えに手に入れた幸せだと、ちゃんとわかってるんだろうな?」
「命……と引き換え。髪が……伸びないだけじゃ……」
「はっ、冗談も休み休み言え。お前も魔法使いならわかるだろう。魔法は対価がないと発動しない。死にかけてたお前を助けた対価が髪だけなわけないだろ!!」
そんな話は聞いていない。いや、本当に?俺は一度も疑問に思わなかったのか?自分に都合の悪い可能性をわざと考えないようにしてたのではないか。
この国で片手ほどしかいないSランク級の魔力を持った人間を生き返らせるのに、対価が髪だけなんて安すぎる。
「お前知らずにレベッカの恋人でいたのか?テメエはどれだけ脳内お花畑なんだ。妹は優しいからその事実を言えなかっただけだ。それをまともに信じている時点で、お前は妹を任せるに値しない男だ」
胸に言葉が突き刺さる。俺のせいで……俺のせいでレベッカさんを苦しめていたんだ。
兄上はレベッカさんを家に連れ戻すと言っていた。彼女が魔法省を辞めたら、二度と逢うことなど出来ないだろう。
彼が出て行った後、レベッカさんは魔法のことを詳しく話してくれた。そして俺のことをすごく心配してくれているのがわかる。
なんで俺なんかの心配するんだよ。自分の命が俺のせいで減っていて、明日生きていられるのかすらわからないのに。
どうして人のことばかり考えるんだ。どうしてそんな優しいんだ。どうして……そんな……当たり前のように死ぬことを受け入れているんだ。
俺はレベッカさんに八つ当たりをした。絶対に言ってはいけないことを彼女に言ってしまった。
『あのまま死ねばよかった』
そんなことは口が裂けても言っていいはずがない。だけど、どうしてもやりきれなかった。
彼女に思い切り頬を打たれ、正気を取り戻した。レベッカさんは怒りと哀しみの表情をしていた。
『死ねばよかったなんて二度と言わないで』
彼女にこんな……こんな酷い顔をさせたいわけじゃない。レベッカさんにはいつだって笑っていて欲しい。そのはずだったのに。俺は彼女を抱き締めて、何度も何度も謝った。
あなたの命を奪ってごめん。
あなたの嘘に気が付かなくてごめん。
あなたを好きになってしまってごめん。
あなたとあの日出逢ってしまってごめん。
いくら謝っても足りそうにない。いつもあなたに優しく守られて、俺ばっかり幸せで……まだ何も返せていない。
――俺が絶対にあなたを死なせたりしない。
何を犠牲にしたとしても、彼女を助ける。それが俺の使命だと心に誓った。
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