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プロローグ

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『もしかして……あの子……?』


「何か言いました?」
「え、何も言ってないけど?」


花や植物が大好きでフラワーショップでアルバイト中のわたしーーー立花芽以(たちばなめい)は18歳の大学生。
大好きといっても触れ合うのが好きなだけで、特に花の知識があるわけでもないけどね!
今日はバイトの日でテンションも高めだ!

「今日もみんな元気だね~ みんなの力でお客さんを笑顔にしよう~!」
店内の花たちにわたしはそう言って話しかける。
「……ぷ、芽以ちゃんはほんと面白ね!」
目尻にほんのり涙を浮かべているのは、オーナーの由加さん。いつも花に話しかけるわたしを面白がって見ている。面白がってはいるけど馬鹿にしたりはしない。
「でも、芽以ちゃんがバイトに入ってる日って、本当に花たちが元気に見えるんだよね。 気のせいかしら?」
「ええ、ほんとですか? そうなら嬉しいです!」と、少し白々しく喜んで見せた。なぜ白々しくかというと、元気がない花や植物にわたしが触れると、その子達がたちまち元気になったり、少しだけ感情を感じたりできる不思議な能力(ちから)を持っているから……なぜそんな能力があるのかはわからないけど。花や植物が元気になる能力なら、わたしは大歓迎だ。

子供の頃は、この能力が異質なものだと思わなくて、ただ無邪気に『芽以が触ったら元気になったよ~!』なんてよく言っていた。まあ子供の言うこともあって、微笑ましいといった感じで周りの大人は見ていたけど……段々と自分だけが持っている能力だと気付いて口にすることはなくなった。言ったところで誰も信じないだろうし、逆に気味悪がられたり変人扱いされるのがオチ。なので両親もこの能力のことは知らないし、今でもわたしだけの大切な秘密。
でも、わたしが触れなくても花や植物が元気なら嬉しい。由加さんの言葉に機嫌を良くしたわたしは、単純だけど楽しく仕事をすることができた。


「芽以ちゃん、わたしちょっと奥の部屋にいってるから、何かあったら呼んでね~」

「は~い!」

今朝入荷した花たちを桶に活けながら、わたしは花たちの調子を確認していた。
「うん! 今日の子達も元気だ!……ん? 業者の人、間違えて入れたのかな?」
頼んでない苗が紛れている。その苗を手に取ると感情が伝わってきた……歓喜のようなものが……わたしは震えた。これだけハッキリと伝わってくるのは初めてだったから……。


『やっと見つけた!』


そんな声が聞こえた瞬間、店内が白銀の光に包まれたーーーー

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