運命の紅い糸

谷内 朋

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EXTRA EDITION Ⅰ

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 家族に見送られたあおいは、自宅マンションの来客用駐車場に停車しようとしていた国産車を見てぱっと輝く笑みを見せた。それでも今駆け寄るのは危険と判断して様子を伺っていると、無事に停車させて中から若い男性が車から出てきた。

 「お待たせ、遅くなってごめん」

 彼はあおいの職場である児童養護施設の後輩職員で、名前は峰石譲みねいしじょう)という。教員資格を取得している点を買われ、子供たちに勉強を教える要員として彼女が結婚した年に入職した。

 産休に入ってからも何かと彼女を気に掛け、夫である司が仕事柄家庭を顧みれないところを手助けしてきた。今は小学校に通っている拓海に勉強を教えたりと、家族ぐるみの交流をしていくうちにあおいと深い仲になっていった。

 「ううん、私もさっき出てきたところ」

 始めのうちは隠れて逢瀬を重ねていたのだが、一年も経たないうちに夫に知られる事となった。ところが叱られるどころか『妻の支えになってくれてありがとう』と感謝され、今のような関係性を提案したのも夫からだった。

 司がそうした理由の中には拓海のトラウマがあった。あおいがまだ朝比奈家の嫁だった頃、義母に毎日の様に折檻されてきている姿を陰で見てきた息子は極端に修羅場を嫌う節があった。拓海も子供心ながら母の不倫に気付いており、それでもあの頃と違いいきいきとしている姿を見ているのがむしろ嬉しかったようだ。

 『みんながなかよくできるほうほうはないの?』

 息子のその一言をきっかけに、司は二人での話し合いの場を持った。拓海は継父である彼の事も先生である讓の事も大好き、どちらかが別れなきゃならないのはイヤだと主張した。
 
 司も妻の不倫を知ったところで離婚する意思はなく、かと言って讓とも馬が合ったので彼を恨む気にもなれなかった。そうした二人の気持ちをまとめてあおいに伝え、彼も混ぜての話し合いの結果、日程を決めて双方と交際するという形に収まっている。

 「そう。司さんに挨拶だけしておこうかと思ったんだけど」

 「大丈夫、出る前に『宜しく』って言ってたから」

 「ならメールだけでもしておくよ」

 二人は早速車に乗り込み、讓はケータイを掴んで司宛のメール作成を始める。その間あおいはバックをごそごそと漁って、お気に入りの音楽CDと小さな箱を取り出していた。
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