運命の紅い糸

谷内 朋

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FOUTH TIME Ⅳ

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 司との逢瀬の後、あおいは帰宅したその場で夫との離婚を決意した。

 「あなたに付いて行くことは出来ません」

 それを聞いた夫朝比奈誠史朗は絶句し、姑はなら一人で出て行けとなじった。

 「いえ、みどりだけは連れて行きます」

 彼女は乳飲み子である長女を抱え反旗を翻す。長男は今後この家の跡取りになるので仕方がない、不本意ではあるが離婚の合意を取り付けるには妥協として目を瞑る覚悟を決めていた。

 「何を言っているの?きょうだいを引き離すだなんて」

 こんな時だけ常識人を気取る姑にあおいは本気で辟易とする。これまでどれだけ非情な仕打ちをしてきたか忘れたのか?

 「子供一人くらい良いじゃないですか、拓海は置いていくんですから朝比奈家は何も失わないでしょう?」

 「子供はこの家の宝なのよ」

 「それは私の台詞です、産んだ張本人なのですから。それに碧は私だけ・・の子、朝比奈家の血は入っておりません」

 「何処までも汚い女……!」

 姑は本性を剥き出して目を吊り上げ、脇に置いているステッキを掴んであおいに向け振り上げる。生まれてこのかた母の粗暴な姿を見たことの無かった誠史朗は仰天し、異常な光景に目を見開いていた。

 あおいは碧を守るためさっと立ち上がって後ろに下がる。いつまでもむざむざと殴られ続けると思うな、自分の気持ちに正直な決断をしただけで気力が漲るのを感じていた。

 普段と違う動きを見せる嫁に姑が逆上する。意味不明の叫び声を上げながら、ステッキを振り回してじりじりと距離を詰める。あおいは入り口の襖に手をかけて逃げの体制をとると、ようやっと正気を取り戻した夫が姑の動きを封じた。

 その隙を突いたあおいは、簡単に荷物をまとめて朝比奈家を出る。その際長男の拓海もママと一緒にいたい、と彼女について来た。それ以来朝比奈家の敷居を跨ぐ事なく大倉の家に駆け込み、全ての問題を片付けた後故郷に帰ることにした。
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