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FOUTH TIME Ⅱ
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それから場所を移し、二人は昨年利用したホテルの一室に籠もっていた。結局妻への連絡を怠りあおいに魅了されていく司、彼女もまた家の事を一切忘れて情事に酔いしれていた。二人は食事も摂らぬまま互いの体を求め合い、疲れ切って体が離れた頃には部屋の中が真っ暗になっていた。
電気……彼は不倫相手の顔が見たくなって照明スイッチを探すも、視力が良くないせいかなかなか見つけられない。それに気付いたあおいは掛け布団から腕を出し、スイッチを探り当てて照明を点けた。
明るくなった部屋で二人はお互いの顔を見つめ合い、再び身体を寄せ合ったところでケータイのバイブ音が響き渡る。司にとっては耳慣れた振動音、出来れば無視しておきたかった。
しかし緊急の出勤要請かも知れないと、仕方なくベッドから出てケータイを掴むと妻詩織からの着信だった。これまでは無条件に嬉しかったはずなのに、この時ばかりは煩わしかった。彼はチラッとあおいの方を見ると、気にしなくていいと微笑みを浮かべて頷いていた。
「はい」
司は自身でも信じられないくらいの無機質な声で通話に出る。
『ごめんなさい、終電の時間が過ぎても連絡が無いからちょっと気になっただけ。仕事なの?』
妻との出逢いが職場でなければうん、と誤魔化していただろう。しかし今でも横の繋がりを持っている彼女相手にその嘘は通用しない。
「いや、古い知り合いとばったり会って。話し込んでしまってまだ店にいるんだ」
『そう』
彼女はそう答えただけで何の追求もしてこない。
「どこかホテルでも探して明るくなってから帰るよ。ごめん、連絡しなくて」
『ううん、こういうの珍しいから心配しちゃったの』
「帰る時に連絡するから、もう寝てていいよ」
おやすみ。用件が終わるとさっさと通話を切った司は、あおいのいるベッドに上がって身体を抱き寄せる。左手で長い黒髪を撫でながら右手でぷっくりとした紅い唇を触り、そのまま顔を寄せたところであのね、と制御の声が掛かった。
「夫の海外転勤が決まったの」
彼女は何の脈略もなく話を切り出した。
電気……彼は不倫相手の顔が見たくなって照明スイッチを探すも、視力が良くないせいかなかなか見つけられない。それに気付いたあおいは掛け布団から腕を出し、スイッチを探り当てて照明を点けた。
明るくなった部屋で二人はお互いの顔を見つめ合い、再び身体を寄せ合ったところでケータイのバイブ音が響き渡る。司にとっては耳慣れた振動音、出来れば無視しておきたかった。
しかし緊急の出勤要請かも知れないと、仕方なくベッドから出てケータイを掴むと妻詩織からの着信だった。これまでは無条件に嬉しかったはずなのに、この時ばかりは煩わしかった。彼はチラッとあおいの方を見ると、気にしなくていいと微笑みを浮かべて頷いていた。
「はい」
司は自身でも信じられないくらいの無機質な声で通話に出る。
『ごめんなさい、終電の時間が過ぎても連絡が無いからちょっと気になっただけ。仕事なの?』
妻との出逢いが職場でなければうん、と誤魔化していただろう。しかし今でも横の繋がりを持っている彼女相手にその嘘は通用しない。
「いや、古い知り合いとばったり会って。話し込んでしまってまだ店にいるんだ」
『そう』
彼女はそう答えただけで何の追求もしてこない。
「どこかホテルでも探して明るくなってから帰るよ。ごめん、連絡しなくて」
『ううん、こういうの珍しいから心配しちゃったの』
「帰る時に連絡するから、もう寝てていいよ」
おやすみ。用件が終わるとさっさと通話を切った司は、あおいのいるベッドに上がって身体を抱き寄せる。左手で長い黒髪を撫でながら右手でぷっくりとした紅い唇を触り、そのまま顔を寄せたところであのね、と制御の声が掛かった。
「夫の海外転勤が決まったの」
彼女は何の脈略もなく話を切り出した。
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