運命の紅い糸

谷内 朋

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FIRST TIME Ⅰ

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 とある結婚式会場のフィッティングルームにて。

 一人の女性が体調不良を訴えたとその場は一時騒然となる。数名のスタッフが血相を変えて右往左往し、救急車は呼んだのか?医師はいないのか?などといった叫び声にも近い会話が聞こえてくる。

 「何かあったんでしょうか?」

 別室で式場見学をしていた長身の美男美女カップルが周囲の喧騒を気にかけている。二人は絵になるほどに華やかな雰囲気を持っており、良くも悪くも非常に目立っていた。

 「お騒がせして申し訳ございません、フィッティングルームにいらしている女性客様が体調不良を訴えられているようでして……」

 「そうですか、容態は分かりますか?」

 特に男性の方がその様子を気におり、騒ぎの方向に顔を向けている。

 「いえそこまでは……お客様っ?」

 彼はスタッフ女性の言葉もろくに聞かず立ち上がると、少し席を外しますとだけ言ってさっさと室外へと出ていってしまう。

 「完全に職業病なんです」

 「えっ?」

 「彼、現役の医師ですので」

 女性はその後ろ姿に肩を竦めながらも美しい微笑みを絶やさず、既に見えなくなった婚約者の背中を見つめていた。
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