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第四話
有終の美を飾りたい魂 ―1―
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「この前の“レリヒー星”には参ったな」
この日久し振りに顔を見せたヴィスキーオ、ヴィーンのコンビが先日の出来事を話題にしていた。
「マーケットとフードコートめちゃくちゃでしたもんね」
「四日も営業出来なかったからな。帰りマーケット寄って何か買いに行こう」
はい。先輩の誘いにヴィーンもにこやかに頷いた。
チリン……♪
「今日も【顧客】さんのお出ましだな」
「えぇ、でもクーさんお迎えに行きませんね」
二人組は呑気そうに座っているだけのクーを見つめてしまう。
「ん♪どしたの♪」
「今日は迎えに行かないんですか?」
「うん♪今から来る方はご常連だから♪」
「【顧客】にも常連ってあるのか?」
「うん♪レアケースだけどね♪」
と言っている間に一人の長身男性が店内に入ってきた。メルクリウスがいつものようにもお冷を差し出すと、男性は戸惑いなくそれを飲み干し、ヴィスキーオの隣の椅子に腰掛けた。
「よう、俺たちの事憶えてるか?」
その男性は二人を憶えていた様で軽く会釈してきた。
「……………………またお会いしましたな……………………」
「三百年振りくらいですよね?」
「だな。この世では息災にしてたか?」
「……………………お陰様で……………………」
男性は全身人影の様な出で立ちで顔の表情が全く分からないが、穏やかな雰囲気を醸し出しているので機嫌は良いと思われる。
「魔人族でもこの世ならデビル族の方が生き易かったんじゃないのか?」
「……………………この世の転生先に合わせて姿は変えております故……………………」
「へぇ、大概の魂は直前世の姿でここに来るのに……それって魂レベルかなり高いですよね?」
「あぁ少なくとも俺らよりはな。本当はとおに人類修行終えてんだろ?……インズのまんまでいいかい?」
「……………………えぇ構いません……………………」
インズと呼ばれた男性はゆっくりと頷いた。
「お待たせいたしやしたっす!」
いつもの様にプルートーがビールとつまみを【顧客】であるインズの前に置く。
「……………………久し振りに見ます………………直前世の惑星には無かったので……………………」
「そうなんすか?って事は……まぁ良いっす、多分つまみは懐かしの味だと思うっす!」
プルートーの言葉にインズは小皿に入った料理を見つめている。
「ん?見た事無い料理だな」
ヴィスキーオも興味津々で小皿を覗き込む。
「……………………“ディングバウ”、ですね……………………」
「“佃煮”って料理に似ていますね」
細い棒状のものがクタッとした茶色の料理を見ながらヴィーンも興味を示す。
「……………………召し上がりますか?……………………」
「そちらはあなたの分ですよ。僕たちは別で注文して頂きます」
ヴィーンはプルートーに“ディングバウ”を注文した。すぐさまプルートーがやって来て同じ小皿を置いていった。
「結構固いっすから食うの時間掛かるっす」
「……………………確かに。しかしハマるとやみつきになりますよ……………………」
インズは早速箸で“ディングバウ”を摘む。
「折角の再会だ、乾杯しないか?」
「……………………これは失礼……………………喜んで……………………」
三人はグラスを掲げて乾杯すると、まずは一杯飲んでから“ディングバウ”を一口かじった。
「ん~、結構しょっぱいな。“ノアソルティ”かい?」
「……………………いえ、確か水のみで煮ているはずです……………………」
「へぇ~、食材からこんなに味が出るんですね」
三人はガシガシと“ディングバウ”をかじり、良いペースで酒を飲んでいる。
「コレ酒のあてに打ってつけだな」
「ですね、米の酒の方が合いそうな気もしますね」
「だったらコレがオススメよぉ」
と酒担当のネプテューヌが真っ黒の液体を三つ持ってやって来た。
この日久し振りに顔を見せたヴィスキーオ、ヴィーンのコンビが先日の出来事を話題にしていた。
「マーケットとフードコートめちゃくちゃでしたもんね」
「四日も営業出来なかったからな。帰りマーケット寄って何か買いに行こう」
はい。先輩の誘いにヴィーンもにこやかに頷いた。
チリン……♪
「今日も【顧客】さんのお出ましだな」
「えぇ、でもクーさんお迎えに行きませんね」
二人組は呑気そうに座っているだけのクーを見つめてしまう。
「ん♪どしたの♪」
「今日は迎えに行かないんですか?」
「うん♪今から来る方はご常連だから♪」
「【顧客】にも常連ってあるのか?」
「うん♪レアケースだけどね♪」
と言っている間に一人の長身男性が店内に入ってきた。メルクリウスがいつものようにもお冷を差し出すと、男性は戸惑いなくそれを飲み干し、ヴィスキーオの隣の椅子に腰掛けた。
「よう、俺たちの事憶えてるか?」
その男性は二人を憶えていた様で軽く会釈してきた。
「……………………またお会いしましたな……………………」
「三百年振りくらいですよね?」
「だな。この世では息災にしてたか?」
「……………………お陰様で……………………」
男性は全身人影の様な出で立ちで顔の表情が全く分からないが、穏やかな雰囲気を醸し出しているので機嫌は良いと思われる。
「魔人族でもこの世ならデビル族の方が生き易かったんじゃないのか?」
「……………………この世の転生先に合わせて姿は変えております故……………………」
「へぇ、大概の魂は直前世の姿でここに来るのに……それって魂レベルかなり高いですよね?」
「あぁ少なくとも俺らよりはな。本当はとおに人類修行終えてんだろ?……インズのまんまでいいかい?」
「……………………えぇ構いません……………………」
インズと呼ばれた男性はゆっくりと頷いた。
「お待たせいたしやしたっす!」
いつもの様にプルートーがビールとつまみを【顧客】であるインズの前に置く。
「……………………久し振りに見ます………………直前世の惑星には無かったので……………………」
「そうなんすか?って事は……まぁ良いっす、多分つまみは懐かしの味だと思うっす!」
プルートーの言葉にインズは小皿に入った料理を見つめている。
「ん?見た事無い料理だな」
ヴィスキーオも興味津々で小皿を覗き込む。
「……………………“ディングバウ”、ですね……………………」
「“佃煮”って料理に似ていますね」
細い棒状のものがクタッとした茶色の料理を見ながらヴィーンも興味を示す。
「……………………召し上がりますか?……………………」
「そちらはあなたの分ですよ。僕たちは別で注文して頂きます」
ヴィーンはプルートーに“ディングバウ”を注文した。すぐさまプルートーがやって来て同じ小皿を置いていった。
「結構固いっすから食うの時間掛かるっす」
「……………………確かに。しかしハマるとやみつきになりますよ……………………」
インズは早速箸で“ディングバウ”を摘む。
「折角の再会だ、乾杯しないか?」
「……………………これは失礼……………………喜んで……………………」
三人はグラスを掲げて乾杯すると、まずは一杯飲んでから“ディングバウ”を一口かじった。
「ん~、結構しょっぱいな。“ノアソルティ”かい?」
「……………………いえ、確か水のみで煮ているはずです……………………」
「へぇ~、食材からこんなに味が出るんですね」
三人はガシガシと“ディングバウ”をかじり、良いペースで酒を飲んでいる。
「コレ酒のあてに打ってつけだな」
「ですね、米の酒の方が合いそうな気もしますね」
「だったらコレがオススメよぉ」
と酒担当のネプテューヌが真っ黒の液体を三つ持ってやって来た。
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