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quatre-vingt-un

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 翌日も仕事である私はある程度の時間で就寝させていただき、オカマ四人は早朝までがっつり起きていたようだ。起床した時間には既にお帰りになっていたが、ご丁寧に朝食を人数分作ってくれていた。
 「おはよう、てつこは?」
 お風呂上がりらしき姉はすっぴんでパジャマに着替えていた。この時間だと秋都も帰宅してると思う。
 「そこでまだ寝てる。普段からこれくらい図太ければねぇ」
 「そろそろ起こす?」
 「寝かせてあげなさい、色々あって疲れてるんでしょ」
 ん?聞き流しかけたけど『色々あって』?まぁリビングに男物のスーツ、玄関に革靴で何となく察しは付くか。
 「お姉ちゃんも何か聞いてるの?」
 「ん~、多少はね。てつこのお母さんとはたまにスーパーでお会いするから」
 「そこで聞くの?」
 「ほとんどそうね。『最近結婚する気になったみたい』だって聞いてるわ」
 そっか、じゃあ実母の暗躍は知らないっってことでいいんだよね。
 「それはそうと今日は随分とゆっくりね」
 おっと今日は会長の運転手だって言うの忘れてた。
 「今日は会長のお供なの、だから十時までに会社に入れば間に合うよ」
 「そっか。多分運転三昧ね」
 多分そうなると思うんだけど今日は何も聞いていない。普段であれば何処に行くとか教えてくださるんだけど。
 「……ん」
 と男のうめき声がっててつこなんだけど、ようやっと目が覚めたようでもそもそと動いている。ちょっと茶色がかった癖っ毛がひょこっと出てきて辺りをきょろきょろと見回してる。
 「あぁ……」
 やっと分かったみたいだね、アンタ大体九時間くらいそこで寝てたよ。
 「おはようてつこ、お風呂使うでしょ?」
 「……すみません、寝過ぎました」
 「構わないわよ、下着はそれ使って」
 下着?てつこはリビングテーブルに置いてあるコンビニの袋を見やってる。
 「すみませんはるさん、こんなことまでしてもらって」
 「なつじゃ男の下着のことは分らないでしょ。私と同じサイズのにしたけど」
 「えぇ、大丈夫です」
 へぇ。姉は確かメンズSサイズだったと思う。てつこは身長百七十センチの姉よりちょこっと高いくらいくらいだから多分Mサイズにしたんだろうな。
 「あ~腹減ったぁ。おはようてつこちゃん」
 とタオルで頭をごしごし拭きながら二階から降りてきた秋都。何故髪の毛を乾かさない?今日はスウェット着てるだけマシだけど、普段は下半身にタオルを巻くのみで家中をうろつき回ってる。
 「もう、髪の毛乾かしなさいよ」
 「飯食ってから、てつこちゃんも食うだろ?」
 「いやさすがにそこまでは……」
 ひと晩ソファーを占拠してがっつり睡眠摂ってる時点で遠慮するとかやめてほしい。それにあのオカマ連中結構な料理上手なんだよ……ぐすん。
 「大丈夫だって、アンジェリカの飯は折り紙付きの美味さだからさ」
 アンジェリカ?てつこも面識はあるからちょっと顔が引き攣ってる。うん、あのゴリマッチョからここまで女子力満載の朝食が出てくるとは思わないよね?
 「そういう遠慮は無しにしてちょうだい、なつが作ったものじゃないから安心して」
 姉よ、それは一体どういう意味でしょうか?確かに私が作る飯は不味いさ、けどだからってだからって……泣くぞ。
 「まぁなつが作ったものなら即刻帰ります」
 「その感じだと昨夜で分かったようね」
 「えぇ、『何か手伝おうか?』はホラーです」
 あの、本人ここにいるのでディスるのやめていただけません?普通に凹みます。
 「けどさはる姉、そろそろレンジで調理は教えてもいいんじゃねぇの?一生涯何もさせないって訳にもいかないだろ」
 秋都の助け船(?)に姉はう~んと唸ってる。ただ温めるだけならできるし、電気ケトルはクリアしてるよ。ただ私人生で電子レンジは二度破壊してますので、姉の信頼度はまだ零に近いと思う。
 「きっとガスよりはマシよ」
 取り敢えずは自己アピールさせて頂きます。
 「破壊した回数だけでしょうが」
 えぇコンロは五度破壊させてますので。
 「でもそれ米炊けないお湯沸かせないレベルの時の話だろ?今はできてるんだから案外大丈夫なんじゃねぇの?」
 うん、秋都のおバカ脳でも自炊こなせてるもんね。何か大丈夫な気がしてきた。
 「ってかそもそも破壊する意味が分からん」
 それを言わないでくれてつこ、破壊した本人だって何をどうしてそういう事態になったのか分かんないんだから。
 「婚活の前に電子レンジは使えるようにした方が良さそうね」
 姉はそう言ってため息を吐いた。これで私の婚期はさらに遠くなったようで……ある?
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