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やっとこさ本編
……久し振りの再会
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月曜日から学校を休み、昨日はひかりちゃん、明日香ちゃん、梨乃ちゃんがお見舞いに来てくれたお蔭でお土産のストラップを渡す事が出来ました。しかも僕の誕生日を覚えてくれてて、調理実習でバースデーケーキを作ってくれたんです!お菓子作りが得意な友奈ちゃんが中心になってクラス皆で作った、って……晩御飯の後家族皆で美味しく頂きました、皆の気持ちがとても嬉しかったです!
その甲斐あって今朝ようやっと平熱に戻り、明日から学校に行けそうです。早くクラスの皆に会いたいなぁ、きちんとお礼も言わなきゃね。そんな事を考えながら上機嫌で明日の支度をしていると、ピンポン♪とチャイムが鳴りました。誰だろ?今僕一人だし……宗教とか新聞の勧誘とかだと嫌だけど、お父さんかお母さん宛の宅配便かも知れないし……取り敢えずその可能性を示唆して印鑑をポケットに入れてインターフォン用の画面を確認すると、伽月君と同じ制服の男の子が立っていました。
この子誰だろ?ネクタイの色も彼と同じだし……細身を通り越して痩せ過ぎてる印象、でも何となくだけど知ってる人、だと思います。取り敢えず勧誘ではない事が分かったので通話ボタンを押し、はいと声を掛けてみました。
『平泉遵斗です、誠君はご在宅でしょうか?』
えっ!!?遵斗君って……あの遵斗君!?
「はいっ!僕誠ですっ!すぐ開けるねっ!」
僕は慌てて玄関まで走り、ロックを解除して八年振りの会う“友人”を出迎えました。
高校生になった遵斗君は僕よりずっと身長が高くなっていました。伽月君と輝君の間くらいかな?お母様も身長高いし……やっぱりこういうのって遺伝するんだね、ウチもお母さんが身長高いんだけどなぁ……僕はお父さんに似た様です。
「ひっ久し振りだね……八年会ってないから見違えちゃってるね」
「そう……かもな。誠は全然変わってない」
うっ、それは『成長してない』って事かな?確かに高校一年生の男子が百五十二センチってチビには違いないけど、僕だってあれから三十センチ以上は大きくなってるんですっ。とは言っても遵斗君雰囲気まで大人びてて同い年とは思えません……。
「そっそう?」
「あぁ、ちっちゃくて可愛いまんま」
「僕可愛くないよ……」
むうぅ〜、何か釈然としない……男に“可愛い”ってどうなんだろう?
「褒めてんだから拗ねんなよ」
「男に“可愛い”は褒め言葉じゃないって……立ち話も何だから上がってって」
僕は遵斗君を招き入れて先に部屋に行ってもらいます。彼が遊びに来てた当時は物置だった部屋だと伝えるとすぐに分かってくれました。僕はキッチンでお茶の支度をしてから二階に上がります。
「一人部屋、貰えたんだな」
「うん、春からやっとね」
「お前んとこきょうだい多いもんな……それより“綾”って?」
そっか、遵斗君が家に来てた頃はお姉ちゃん学生寮に入ってたんだった、知らなくても当然だよね。
「十一歳年上の姉だよ、当時は大学生で寮生活してたから」
「そっか、八年経つと色々変わるよな……」
遵斗君は感慨深げ……と言うより少し寂しそうに言いました。来た時からそうなんだけど、何となく哀愁を漂わせてる感じがするんです。何かあったのかな……?仮にあったとして聞いてもいいのかな?
「あのな、誠……」
「うん?」
「俺……今月末に引っ越すんだ、長崎に」
えっ?僕は思わず遵斗君をじっと見つめてしまいます。
「長い事連絡も寄越さなかったくせに何を今更って気もするけど、最後くらいちゃんとしときたくてさ。このまま別れるのも後味悪いし」
遵斗君は弱々しいながらも笑いかけてくれました。確かに三年ほどほぼ音信不通状態だったけど、それでも記憶の片隅に僕の事が残ってたのはとても嬉しく思えました。
「それは仕方無いよ、色々あったんでしょ?」
「……」
「言いにくければ答えなくていいよ、今こうして会いに来てくれた事凄く嬉しいから」
「……中身はしっかり大人なんだな、俺今の自分が恥ずかしいよ……」
そんな事無いよ。そう言いたかったのですが、言葉にしてしまうととても安っぽくなって逆に傷付けてしまいそうな気がしました。遵斗君は昔から少々やんちゃなところがありますが、とても繊細で感受性が物凄く鋭いんです。
「ゴメンね、少しは気の利いた事言えたら良いんだけど……」
「良いよ、『言葉にしたら安っぽくなる』って思ったんだろ?その気持ちだけ有難く頂いとく」
やっぱりさすがです、相手の心をサッと読んで気を遣ってくれるんです。悪意や打算も読み取れちゃう分傷付き易いんだよね。
「それともう一個……あの時の『特典』行使していいか?」
『特典』……あっ、昔遵斗君がトランプで買った時の『王様ごっこ』の事だね。そう言えばあと一個命令できる権利が残ってたはず、その事言ってるんだよね?スゴイ!覚えててくれてたんだぁ、懐かしいな。
「『王様ごっこ』の事だよね?うん、良いよ」
僕は当時の事を思い出して頬が緩んでしまいます。遵斗君って育ちが良いから王様役結構サマになってたんだよね、ふふふ、どんな命令してくれるのかな?彼優しいからあんまり無茶な事言ってこないと思います。
……と思ってたのですが、遵斗君ただのお遊びのはずなのに物凄く真剣な表情で僕の顔を見つめてきます。そんなに見つめられるほどの顔じゃないよ僕、浅黒い肌に目と鼻と口しか付いてないよ。
その甲斐あって今朝ようやっと平熱に戻り、明日から学校に行けそうです。早くクラスの皆に会いたいなぁ、きちんとお礼も言わなきゃね。そんな事を考えながら上機嫌で明日の支度をしていると、ピンポン♪とチャイムが鳴りました。誰だろ?今僕一人だし……宗教とか新聞の勧誘とかだと嫌だけど、お父さんかお母さん宛の宅配便かも知れないし……取り敢えずその可能性を示唆して印鑑をポケットに入れてインターフォン用の画面を確認すると、伽月君と同じ制服の男の子が立っていました。
この子誰だろ?ネクタイの色も彼と同じだし……細身を通り越して痩せ過ぎてる印象、でも何となくだけど知ってる人、だと思います。取り敢えず勧誘ではない事が分かったので通話ボタンを押し、はいと声を掛けてみました。
『平泉遵斗です、誠君はご在宅でしょうか?』
えっ!!?遵斗君って……あの遵斗君!?
「はいっ!僕誠ですっ!すぐ開けるねっ!」
僕は慌てて玄関まで走り、ロックを解除して八年振りの会う“友人”を出迎えました。
高校生になった遵斗君は僕よりずっと身長が高くなっていました。伽月君と輝君の間くらいかな?お母様も身長高いし……やっぱりこういうのって遺伝するんだね、ウチもお母さんが身長高いんだけどなぁ……僕はお父さんに似た様です。
「ひっ久し振りだね……八年会ってないから見違えちゃってるね」
「そう……かもな。誠は全然変わってない」
うっ、それは『成長してない』って事かな?確かに高校一年生の男子が百五十二センチってチビには違いないけど、僕だってあれから三十センチ以上は大きくなってるんですっ。とは言っても遵斗君雰囲気まで大人びてて同い年とは思えません……。
「そっそう?」
「あぁ、ちっちゃくて可愛いまんま」
「僕可愛くないよ……」
むうぅ〜、何か釈然としない……男に“可愛い”ってどうなんだろう?
「褒めてんだから拗ねんなよ」
「男に“可愛い”は褒め言葉じゃないって……立ち話も何だから上がってって」
僕は遵斗君を招き入れて先に部屋に行ってもらいます。彼が遊びに来てた当時は物置だった部屋だと伝えるとすぐに分かってくれました。僕はキッチンでお茶の支度をしてから二階に上がります。
「一人部屋、貰えたんだな」
「うん、春からやっとね」
「お前んとこきょうだい多いもんな……それより“綾”って?」
そっか、遵斗君が家に来てた頃はお姉ちゃん学生寮に入ってたんだった、知らなくても当然だよね。
「十一歳年上の姉だよ、当時は大学生で寮生活してたから」
「そっか、八年経つと色々変わるよな……」
遵斗君は感慨深げ……と言うより少し寂しそうに言いました。来た時からそうなんだけど、何となく哀愁を漂わせてる感じがするんです。何かあったのかな……?仮にあったとして聞いてもいいのかな?
「あのな、誠……」
「うん?」
「俺……今月末に引っ越すんだ、長崎に」
えっ?僕は思わず遵斗君をじっと見つめてしまいます。
「長い事連絡も寄越さなかったくせに何を今更って気もするけど、最後くらいちゃんとしときたくてさ。このまま別れるのも後味悪いし」
遵斗君は弱々しいながらも笑いかけてくれました。確かに三年ほどほぼ音信不通状態だったけど、それでも記憶の片隅に僕の事が残ってたのはとても嬉しく思えました。
「それは仕方無いよ、色々あったんでしょ?」
「……」
「言いにくければ答えなくていいよ、今こうして会いに来てくれた事凄く嬉しいから」
「……中身はしっかり大人なんだな、俺今の自分が恥ずかしいよ……」
そんな事無いよ。そう言いたかったのですが、言葉にしてしまうととても安っぽくなって逆に傷付けてしまいそうな気がしました。遵斗君は昔から少々やんちゃなところがありますが、とても繊細で感受性が物凄く鋭いんです。
「ゴメンね、少しは気の利いた事言えたら良いんだけど……」
「良いよ、『言葉にしたら安っぽくなる』って思ったんだろ?その気持ちだけ有難く頂いとく」
やっぱりさすがです、相手の心をサッと読んで気を遣ってくれるんです。悪意や打算も読み取れちゃう分傷付き易いんだよね。
「それともう一個……あの時の『特典』行使していいか?」
『特典』……あっ、昔遵斗君がトランプで買った時の『王様ごっこ』の事だね。そう言えばあと一個命令できる権利が残ってたはず、その事言ってるんだよね?スゴイ!覚えててくれてたんだぁ、懐かしいな。
「『王様ごっこ』の事だよね?うん、良いよ」
僕は当時の事を思い出して頬が緩んでしまいます。遵斗君って育ちが良いから王様役結構サマになってたんだよね、ふふふ、どんな命令してくれるのかな?彼優しいからあんまり無茶な事言ってこないと思います。
……と思ってたのですが、遵斗君ただのお遊びのはずなのに物凄く真剣な表情で僕の顔を見つめてきます。そんなに見つめられるほどの顔じゃないよ僕、浅黒い肌に目と鼻と口しか付いてないよ。
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