どら焼は恋をつなぐ

谷内 朋

文字の大きさ
上 下
82 / 145
やっとこさ本編

語り部ジャック 星哉編 伽月急転直下!

しおりを挟む
 今朝から弟伽月の体温が急に跳ね上がって三十八度六分なんてインフルエンザ患者並みの体温になってやがる。月曜日に退院した時から微熱程度ではあったから、体調次第ではこの展開も予測は出来たんだろうけど……昨日はむしろ回復の兆しを見せてて食欲も上がってただけにちょっと心配になってくる。波那は泰地に任せるつもりで出勤の支度はしてるけど、伽月の部屋をチラチラ気にしてて何時もより準備がもたついてる。
 「波那、今日は仕事休め」
 えっ?波那は意外そうに俺の顔を見る。
 「大丈夫だよ、泰地が居てくれるのに」
 「そうじゃなくてお前の事、気が完全に分散しちまってるじゃねぇかよ」
 「そりゃやっぱり気になるよ……」
 そんな精神状態で仕事をこなせるほどコイツは丈夫に出来てない、元々仕事にウエイトなんか置いてねぇんだから、高校生相手に多少過保護ではあるが看病させてる方が安心だ。
 「そうしなよ波那ちゃん、俺も一人よりは心強いからさ」
 ここで泰地の助け船的な言葉、さすが気が利くし勘も良い。俺とはほぼ真逆だな……って放っとけ!
 「じゃあ会社に……」
 「会社には俺が連絡してやる、風邪でも引いた事にしとけば良いさ」
 ケータイを掴む波那の動きを制止した俺は、庶務課の外線番号をタップして通話ボタンを押す。時間的にちょっと早いけど、早朝出勤の奴くらいいるはずだ。何度かのコールで通話に出たのは聞き覚えのある女性の声だ。
 『お電話ありがとうございます、江戸食品庶務課須藤スドウが承ります』
 良かった、須藤さんなら話が早い。何せ恒例のバーベキューメンバーだからな。
 「お疲れ様です、畠中です」
 『畠中さん?波那ちゃんに何かあったの?』
 「看病疲れで熱出しちまったんです、今日は休ませたくて」
 『きっと何日かは無理そうだね……課長に伝えれば多分今週いっぱい休みが取れるよう手配してくれると思うよ』
 「そうして頂けると助かります」
 『了解しました。ただ、念のため明日も連絡もらえるかな?今週の早朝出勤は私だから。波那ちゃんに『お大事に』って伝えておいてね』
 分かりました。俺はとっとと通話を切って波那の方を見る……がどこ行きやがった?
 「波那は?」
 「伽月の部屋、様子見に行ってるよ。昨日のホットドッグ余っちゃってるんだけど……」
 「俺持って行くわ、昼飯ん時に食うよ」
 「じゃあラップにくるんでクーラーバッグに入れておくよ」
 おぅ。泰地はキッチンに入ってホットドッグをラップで巻く作業に入り、俺は途中になってた身支度を再開させる。

 「行ってくる、なるべく定時で上がれる様にすっから」
 行ってらっしゃい。波那は玄関まで出てきて見送ってくれる。白のポロシャツにデニムのカプリパンツ、我が嫁(?)ながら何着てても可愛い。俺は調子こいて嫁にディープキスをすると、五秒もしないうちに胸元をトントン叩いて降参しやがる。
 「朝から濃いって、遅刻しちゃうよ」
 「キスくらい自由にさせろ」
 俺は懲りずにもう一度キスをする、今度は波那の腰に腕を回して逃げられない様に抱き寄せてやる。波那は俺の首に腕を巻き付けて体を寄せてんっ、とエロく喉を鳴らす。ヤベェ!抱きたくなってきた!さすがにそれはマズいからキスで留めておくけど、その時見せたとろんとした表情が更に俺の性欲をそそる!これが三年後に四十を迎える男の仕草か?朝から濃いのは一体どっちだ?
 「何エロい顔してんだよ?」
 「もうっ!誰のせいだよ!?」
 波那は顔を紅くしてムッとした表情を見せてる、それもまた可愛い……ってそれしか言ってねぇな。しょうがない、俺の嫁は世界一……いや、唯一無二の存在だからな。結婚して井戸端会議とかで配偶者をディするアレ、俺には全く理解出来ねぇ。今度はチュッと音を立てた軽いキスをお見舞いしてやり、俺は伽月の病状が気になりつつも上機嫌で職場に向かった。

 俺今伽月と誠の代わりに語り部とやらをしてっけど自己紹介とか要るか?まぁ一応名乗っておくか。名前は小泉星哉、畠中伽月の兄貴、こんくらいで充分だろ?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

風紀“副”委員長はギリギリモブです

柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。 俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。 そう、“副”だ。あくまでも“副”。 だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに! BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。

管理委員長なんてさっさと辞めたい

白鳩 唯斗
BL
王道転校生のせいでストレス爆発寸前の主人公のお話

元会計には首輪がついている

笹坂寧
BL
 【帝華学園】の生徒会会計を務め、無事卒業した俺。  こんな恐ろしい学園とっとと離れてやる、とばかりに一般入試を受けて遠く遠くの公立高校に入学し、無事、魔の学園から逃げ果すことが出来た。  卒業式から入学式前日まで、誘拐やらなんやらされて無理くり連れ戻されでもしないか戦々恐々としながら前後左右全ての気配を探って生き抜いた毎日が今では懐かしい。  俺は無事高校に入学を果たし、無事毎日登学して講義を受け、無事部活に入って友人を作り、無事彼女まで手に入れることが出来たのだ。    なのに。 「逃げられると思ったか?颯夏」 「ーーな、んで」  目の前に立つ恐ろしい男を前にして、こうも身体が動かないなんて。

【R18】保健室のケルベロス~Hで淫らなボクのセンセイ 【完結】

瀬能なつ
BL
名門男子校のクールでハンサムな保健医、末廣司には秘密があって…… 可愛い男子生徒を罠にかけて保健室のベッドの上でHに乱れさせる、危ないセンセイの物語 (笑)

温厚寮長をやっていますがこの度プッチンします。

するめ烏賊
BL
全寮制男子校の寮長を務めている伊部銀次郎(いべぎんじろう)は、編入生のマリモの日々の付きまとい行為と寮内で起こす問題にほとほと困っていた。 その件のせいで生徒指導部や理事長、各種委員会に始末書の提出や報告をしなければならず、趣味に没頭すら出来ない日々。 そんなある日、マリモが舎監室に飾っていた大切な写真を壊し​─────── ​───────プッチンしました。

俺の番が変態で狂愛過ぎる

moca
BL
御曹司鬼畜ドS‪なα × 容姿平凡なツンデレ無意識ドMΩの鬼畜狂愛甘々調教オメガバースストーリー!! ほぼエロです!!気をつけてください!! ※鬼畜・お漏らし・SM・首絞め・緊縛・拘束・寸止め・尿道責め・あなる責め・玩具・浣腸・スカ表現…等有かも!! ※オメガバース作品です!苦手な方ご注意下さい⚠️ 初執筆なので、誤字脱字が多々だったり、色々話がおかしかったりと変かもしれません(><)温かい目で見守ってください◀

一人ぼっちの受けが攻めにセックスの快感を教え込まれる話

よしゆき
BL
発情する体質の生徒が通う学校。発情期はいつも一人で過ごしていた受けだが、偶然後輩の攻めと発情期を過ごす事になった話。 両親と弟妹から酷い扱いをされ育ったので受けは自己肯定感が低く卑屈。

鬼騎士団長のお仕置き

天災
BL
 鬼騎士団長のえっちなお仕置きの話です。

処理中です...