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やっとこさ本編
語り部ジャック 波那編 ちょっと寄り道してきます
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さてさて、作戦決行の月曜日。仕事を終えてとっとと病院に行った僕は、とある学校の前の駄菓子屋さんで秘密兵器と待ち合わせしています。秘密兵器が通ってる学校は、クラブ活動が月曜日というちょっと珍しい時間割をしてるので、今日はそれが終わると帰宅できるそうなんです。そろそろ出てくるかな……?あっ、来た来た。イガグリ頭のノッポ君、もうお分かりでしょうか?
「すみません、ミーティングで遅くなってしまいました」
そう、ここは▼▼第二中学校。ここで登場してくる中学生と言えば勇君しか居ないですよね。何故彼が秘密兵器かって?だって今僕がしようと企んでる事を何年も前から密かに企ててる張本人だからです。しかもはなから長期戦設定で行動してる、きっと誰よりも適任だと思うよ。
「大丈夫だよ、さっき来たとこだから。ところで、帰宅途中に寄り道しても大丈夫?」
「大丈夫です、大人の方同伴なら」
「そう、ならあそこに入らない?」
僕は敢えて大人の雰囲気満載の純喫茶を指差しました。勇君ちょっと怖じ気付いてます、きっと入った事無いんだろうなぁ。
「そこ、両親がたまにデートに利用してるんです」
「入った事ある?」
予想通り、勇君は首を横に振りました。
「今からちょっと秘密めいた話をするからね、ああいった所の方が都合が良いんだ」
分かりました。オッサンの僕は、ほぼ同じ身長の中学生勇君を連れて純喫茶の中に入ります。うん、静かで密談には打ってつけ、客足もまばらでお店にとってはどうなのかはこの際無視しましょう。
なんて他人事の様に言っていますが、ここは僕にとっても馴染みのお店、星哉とのデートコースの中にこの純喫茶は大概含まれているんです。もちろんマスターとも顔馴染み、茶坊主並の口の固さで僕たちは初対面の様に接します。僕はホットティーを、勇君はミックスジュースを注文して、まずは近況を訊ねてみます。
「最近部活動忙しいみたいだね」
はい。勇君がレギュラーメンバーに入れてる事は誠君からリーク済みですから。
「地区予選は無事突破しました。もうじき地区大会決勝トーナメントが控えてます」
「試合には出たの?」
「はい、ピンチサーバーで何度か。あと最後の試合は途中出場しました」
凄いなぁ、一年生で。でも小学校のバレーボール部では四年生の後半からレギュラーメンバーだったから、本人としては当然の流れって考えもあるのかな?試合経験は豊富な方だろうし。
「でも上には上がいて、一年生で一試合フル出場した奴が一人居るんですよね。負けてられないっす」
「今から焦って一番になる必要無いよ、追われる方がしんどいから」
「はい、まずは追い付く事です。三年生の最後の大会までに追い抜けば良いんですから」
ホントこの子は冷静だ、小さい頃から学校の通信簿に『落ち着きがありすぎる』って毎度の様に書かれてる、って夏海さん苦笑いしてたもんなぁ。ちょっとフワフワしてる誠君のフォローをきっちりとこなし、天真爛漫な晋君への目配りも忘れない。完璧過ぎる真ん中っ子だよ、家で言うと三兄遼に近い感じかな。
学校生活は部活動を中心に充実してるみたいでオジサンひと安心、何かね、小田原三兄弟って産まれた頃から見てきてるから親戚の子供みたいで可愛いんです。もちろん三人の姉の子たちも可愛いんだけど、今は旦那さんの転勤とかで遠方で暮らしてるから、お盆と正月くらいしか会わなくて……連絡も滅多にしないし。今近くに居るのって麗未ちゃんくらいだな、しばらくは産休中だし、今度るりかの顔見に行こうかな?
おっと、話が脱線するところでした。ちょこっと浸ってる間にホットティーとミックスジュース来ちゃってるや。
「ところで波那ちゃん、『秘密めいた話』って伽月君と兄ちゃんの事ですよね?」
さすが気付いてたね、中学一年生にして星哉よりも鋭い勘してる。まぁ三十二歳にしてあの鈍感っ振りをいかんなく発揮してる彼の方が問題あるとは思うけど……彼が空気読める様になったらそれこそつまらない男になっちゃうから。
「うん、そう。このところ誠君の気持ちの変化が顕著に表れてる様な気がしてね」
「そうなんですっ!最近兄ちゃんに牽制はかけたんですけど……」
やっぱり、勇君ちょっとずつ動いてる。伽月をけしかけたのもきっと彼だ。
「伽月とは何か話した?」
「いえ、ここ一週間は何も。ただその前にちょっと……」
「『ちょっと……』、何?」
僕は予測こそあるけれど、勇君がどんな返答をするのかじっと顔を見つめます。彼はミックスジュースを一口飲んでから僕の方に向き直りました。
「すみません、ミーティングで遅くなってしまいました」
そう、ここは▼▼第二中学校。ここで登場してくる中学生と言えば勇君しか居ないですよね。何故彼が秘密兵器かって?だって今僕がしようと企んでる事を何年も前から密かに企ててる張本人だからです。しかもはなから長期戦設定で行動してる、きっと誰よりも適任だと思うよ。
「大丈夫だよ、さっき来たとこだから。ところで、帰宅途中に寄り道しても大丈夫?」
「大丈夫です、大人の方同伴なら」
「そう、ならあそこに入らない?」
僕は敢えて大人の雰囲気満載の純喫茶を指差しました。勇君ちょっと怖じ気付いてます、きっと入った事無いんだろうなぁ。
「そこ、両親がたまにデートに利用してるんです」
「入った事ある?」
予想通り、勇君は首を横に振りました。
「今からちょっと秘密めいた話をするからね、ああいった所の方が都合が良いんだ」
分かりました。オッサンの僕は、ほぼ同じ身長の中学生勇君を連れて純喫茶の中に入ります。うん、静かで密談には打ってつけ、客足もまばらでお店にとってはどうなのかはこの際無視しましょう。
なんて他人事の様に言っていますが、ここは僕にとっても馴染みのお店、星哉とのデートコースの中にこの純喫茶は大概含まれているんです。もちろんマスターとも顔馴染み、茶坊主並の口の固さで僕たちは初対面の様に接します。僕はホットティーを、勇君はミックスジュースを注文して、まずは近況を訊ねてみます。
「最近部活動忙しいみたいだね」
はい。勇君がレギュラーメンバーに入れてる事は誠君からリーク済みですから。
「地区予選は無事突破しました。もうじき地区大会決勝トーナメントが控えてます」
「試合には出たの?」
「はい、ピンチサーバーで何度か。あと最後の試合は途中出場しました」
凄いなぁ、一年生で。でも小学校のバレーボール部では四年生の後半からレギュラーメンバーだったから、本人としては当然の流れって考えもあるのかな?試合経験は豊富な方だろうし。
「でも上には上がいて、一年生で一試合フル出場した奴が一人居るんですよね。負けてられないっす」
「今から焦って一番になる必要無いよ、追われる方がしんどいから」
「はい、まずは追い付く事です。三年生の最後の大会までに追い抜けば良いんですから」
ホントこの子は冷静だ、小さい頃から学校の通信簿に『落ち着きがありすぎる』って毎度の様に書かれてる、って夏海さん苦笑いしてたもんなぁ。ちょっとフワフワしてる誠君のフォローをきっちりとこなし、天真爛漫な晋君への目配りも忘れない。完璧過ぎる真ん中っ子だよ、家で言うと三兄遼に近い感じかな。
学校生活は部活動を中心に充実してるみたいでオジサンひと安心、何かね、小田原三兄弟って産まれた頃から見てきてるから親戚の子供みたいで可愛いんです。もちろん三人の姉の子たちも可愛いんだけど、今は旦那さんの転勤とかで遠方で暮らしてるから、お盆と正月くらいしか会わなくて……連絡も滅多にしないし。今近くに居るのって麗未ちゃんくらいだな、しばらくは産休中だし、今度るりかの顔見に行こうかな?
おっと、話が脱線するところでした。ちょこっと浸ってる間にホットティーとミックスジュース来ちゃってるや。
「ところで波那ちゃん、『秘密めいた話』って伽月君と兄ちゃんの事ですよね?」
さすが気付いてたね、中学一年生にして星哉よりも鋭い勘してる。まぁ三十二歳にしてあの鈍感っ振りをいかんなく発揮してる彼の方が問題あるとは思うけど……彼が空気読める様になったらそれこそつまらない男になっちゃうから。
「うん、そう。このところ誠君の気持ちの変化が顕著に表れてる様な気がしてね」
「そうなんですっ!最近兄ちゃんに牽制はかけたんですけど……」
やっぱり、勇君ちょっとずつ動いてる。伽月をけしかけたのもきっと彼だ。
「伽月とは何か話した?」
「いえ、ここ一週間は何も。ただその前にちょっと……」
「『ちょっと……』、何?」
僕は予測こそあるけれど、勇君がどんな返答をするのかじっと顔を見つめます。彼はミックスジュースを一口飲んでから僕の方に向き直りました。
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