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やっとこさ本編
やっぱりおかしいぞ遵斗……
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バイトを終えてライブハウスの最寄り駅に着いたのは大体七時二十分くらいだった。遵斗は駅で待っててくれて、ちょっと痩せた様にも見えたけど案外元気そうでひと安心する。
「悪ぃ、開演に間に合わなくて」
「構わないよ、それは分かってた事だし。メンバーの到着が遅れてかなり押してるらしいんだ」
開場すらしてないよ。俺たちは取り敢えずライブハウスの方向に向かい、途中ファーストフード店に立ち寄って腹ごなし。俺はここでも期待に応えて(?)二人分をあっさり完食、大概誰かにガン見されるけどそんなのもう慣れちまった。
「お前ホントすげぇ食欲……」
そおか?なんて事を言いつつも病み上がりの奴にはちょっとキツかったか……。
「……食欲湧かない時にはキツいか」
「あぁ、ちょっとな……」
遵斗は弱々しく笑うとトイレに立った。で、そのタイミングを見計らったかの様にケータイが動きを見せる。あっ、兄貴だ。
「仕事は?」
『休みだよ。今日ライブハウスじゃなかったか?』
「押してるんだ、それらしいのもウヨウヨしてるし」
『確かХХХだったよな?』
うん。俺はさっき渡されたチケットを確認する。
『出来る事なら引き返して欲しいところだけど……せめてライブ本編が終わったら帰れ』
「多分そうなるよ、波那ちゃんと兄さんにも『終電までに帰ってこい』って言われてっから」
それなら良いけど。普段なら羨ましがってくるのに何か反応が変だな。
「ХХХ好きだったじゃん」
『昔の話だ。最近は曲も良くないし黒い噂が後を絶たないからさ。実際行った知り合いも変だった、って言ってるし』
そうなのか?俺は兄貴の言葉に悩んでしまう。まぁこの事は遵斗には黙っておこう。
「父さんの七回忌、波那ちゃんの実家でやるのはどうか?って早苗さんが」
『何だか申し訳無い気もするけど……その方が近いからお寺さんも通いやすいかぁ』
「前乗り出来るんなら午前中にお願いする?」
『三日休みは貰えたけど前乗りは無理だな』
「じゃあ午後からで話しておくよ」
『悪いな、本来なら俺がする事なんだけど……』
「良いよ、そんなの。出来る奴がやれば済む話だろ?」
そろそろ遵斗戻ってくるかな?何気にトイレを見ると……あっ、出てきた。
「そろそろ切るよ、開場してるかも知れないから」
分かった。俺たちはそこで話を終えて遵斗を待つと、戻ってくるなり打ち上げ参加しね?と言ってきた。おいおい、明日も学校あるんだぞ……。
「ゴメン、終電までに帰ってこいって言われてる」
「はぁ?何だそれ?」
遵斗は急に不機嫌な表情を見せてくる。いやいや、俺たち高校生だぞ。
「保護者の体調が優れないんだ、変に心配かけて入院とかになるのも……」
ゴメン波那ちゃん、俺の嘘を許してくれ。
「……そうか、分かった」
そろそろ行こう。俺たちはファーストフード店を出て会場に向かう。その間俺たちはほとんど言葉を交わさず、何だか居心地の悪い雰囲気になってしまったけど、取り敢えずライブは目一杯楽しんで二時間押しでも十一時過ぎに無事終演した。オールスタンディングで揉みくちゃになって遵斗がどこにいるのかも分からない。終電は零時二十二分、多少探しても良かったんだろうけどとにかく外に出たかったんだ。開演前から変な匂いが充満してて頭がちょっとクラクラする、俺は帰る事だけメールすると一目散に外に出た。
あ~苦しかったぁ……。この辺りは飲み屋街だから普段はむしろ空気の悪い場所なのに今はここでも充分快適に感じられる位にライブハウス内の空気は最悪だった。子供の頃の話だけど俺喘息持ちで気管支が弱いんだ。俺の喉は久し振りにイガイガしてて咳をしたくなってきた。で、子供の頃から御守りの様にマスクを携帯してて、久し振りにそれを着用する。暑いけど無いよりずっと良いや。
さっ帰ろう、としてるのにいきなり腕を掴まれる。何なんだよ、今週入ってこの展開何度目だ?
「すんません、離してもらっていいすか?」
俺は一応声を掛けて腕を振りほどく。相手は見た事も無い知らない男、俺に何の用だ?
「何帰ろうとしてんだよ?これから打ち上げだよぉ」
「いえ、明日学校あるんで」
あのさぁ、成人だらけの打ち上げに高校生を誘うなよ。
「学校ぉ?んなのサボれば良いだろ?」
「いえ、単位足りなくてヤバイんすわ」
俺は大学生の振りをしたけど、高校だって単位はあるんだぞ。ってか明日は楽しみな人体学の授業なんだ、何が何でも授業に出たいんだよ!
「君いくつ?未成年な訳?」
「えぇ、十五です」
なんだガキじゃん……そいつが頭を掻いてる隙にそいじゃ、と駅に向かおうとすると今度は前に回り込んでくる。
「折角だから行こうよ、お酒は飲ませないからさ」
「勘弁してください、ウチ門限あるんで」
「門限ってどこの坊っちゃんなんだよ?」
……いや、普通だと思うけど。それにしてもくどいなぁ、俺がノリ悪いもんだから段々目がつり上がってるわ。
「アンタ高校生誘い込んで何かあったら責任取れるのか?」
ん?ここで思わぬ救世主(?)、聞いた事あるこの声は……。
「悪ぃ、開演に間に合わなくて」
「構わないよ、それは分かってた事だし。メンバーの到着が遅れてかなり押してるらしいんだ」
開場すらしてないよ。俺たちは取り敢えずライブハウスの方向に向かい、途中ファーストフード店に立ち寄って腹ごなし。俺はここでも期待に応えて(?)二人分をあっさり完食、大概誰かにガン見されるけどそんなのもう慣れちまった。
「お前ホントすげぇ食欲……」
そおか?なんて事を言いつつも病み上がりの奴にはちょっとキツかったか……。
「……食欲湧かない時にはキツいか」
「あぁ、ちょっとな……」
遵斗は弱々しく笑うとトイレに立った。で、そのタイミングを見計らったかの様にケータイが動きを見せる。あっ、兄貴だ。
「仕事は?」
『休みだよ。今日ライブハウスじゃなかったか?』
「押してるんだ、それらしいのもウヨウヨしてるし」
『確かХХХだったよな?』
うん。俺はさっき渡されたチケットを確認する。
『出来る事なら引き返して欲しいところだけど……せめてライブ本編が終わったら帰れ』
「多分そうなるよ、波那ちゃんと兄さんにも『終電までに帰ってこい』って言われてっから」
それなら良いけど。普段なら羨ましがってくるのに何か反応が変だな。
「ХХХ好きだったじゃん」
『昔の話だ。最近は曲も良くないし黒い噂が後を絶たないからさ。実際行った知り合いも変だった、って言ってるし』
そうなのか?俺は兄貴の言葉に悩んでしまう。まぁこの事は遵斗には黙っておこう。
「父さんの七回忌、波那ちゃんの実家でやるのはどうか?って早苗さんが」
『何だか申し訳無い気もするけど……その方が近いからお寺さんも通いやすいかぁ』
「前乗り出来るんなら午前中にお願いする?」
『三日休みは貰えたけど前乗りは無理だな』
「じゃあ午後からで話しておくよ」
『悪いな、本来なら俺がする事なんだけど……』
「良いよ、そんなの。出来る奴がやれば済む話だろ?」
そろそろ遵斗戻ってくるかな?何気にトイレを見ると……あっ、出てきた。
「そろそろ切るよ、開場してるかも知れないから」
分かった。俺たちはそこで話を終えて遵斗を待つと、戻ってくるなり打ち上げ参加しね?と言ってきた。おいおい、明日も学校あるんだぞ……。
「ゴメン、終電までに帰ってこいって言われてる」
「はぁ?何だそれ?」
遵斗は急に不機嫌な表情を見せてくる。いやいや、俺たち高校生だぞ。
「保護者の体調が優れないんだ、変に心配かけて入院とかになるのも……」
ゴメン波那ちゃん、俺の嘘を許してくれ。
「……そうか、分かった」
そろそろ行こう。俺たちはファーストフード店を出て会場に向かう。その間俺たちはほとんど言葉を交わさず、何だか居心地の悪い雰囲気になってしまったけど、取り敢えずライブは目一杯楽しんで二時間押しでも十一時過ぎに無事終演した。オールスタンディングで揉みくちゃになって遵斗がどこにいるのかも分からない。終電は零時二十二分、多少探しても良かったんだろうけどとにかく外に出たかったんだ。開演前から変な匂いが充満してて頭がちょっとクラクラする、俺は帰る事だけメールすると一目散に外に出た。
あ~苦しかったぁ……。この辺りは飲み屋街だから普段はむしろ空気の悪い場所なのに今はここでも充分快適に感じられる位にライブハウス内の空気は最悪だった。子供の頃の話だけど俺喘息持ちで気管支が弱いんだ。俺の喉は久し振りにイガイガしてて咳をしたくなってきた。で、子供の頃から御守りの様にマスクを携帯してて、久し振りにそれを着用する。暑いけど無いよりずっと良いや。
さっ帰ろう、としてるのにいきなり腕を掴まれる。何なんだよ、今週入ってこの展開何度目だ?
「すんません、離してもらっていいすか?」
俺は一応声を掛けて腕を振りほどく。相手は見た事も無い知らない男、俺に何の用だ?
「何帰ろうとしてんだよ?これから打ち上げだよぉ」
「いえ、明日学校あるんで」
あのさぁ、成人だらけの打ち上げに高校生を誘うなよ。
「学校ぉ?んなのサボれば良いだろ?」
「いえ、単位足りなくてヤバイんすわ」
俺は大学生の振りをしたけど、高校だって単位はあるんだぞ。ってか明日は楽しみな人体学の授業なんだ、何が何でも授業に出たいんだよ!
「君いくつ?未成年な訳?」
「えぇ、十五です」
なんだガキじゃん……そいつが頭を掻いてる隙にそいじゃ、と駅に向かおうとすると今度は前に回り込んでくる。
「折角だから行こうよ、お酒は飲ませないからさ」
「勘弁してください、ウチ門限あるんで」
「門限ってどこの坊っちゃんなんだよ?」
……いや、普通だと思うけど。それにしてもくどいなぁ、俺がノリ悪いもんだから段々目がつり上がってるわ。
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