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長すぎる序章
昔話を少々……
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ピンポン♪お兄ちゃんは緊張した面持ちでインターフォンを押す。僕は繋いでいる手に力がこもっちゃうけど、嫌がらないでそのままにしててくれる。
『はい』
ちょっと高めだったけど、お父さんとそっくりな声がスピーカーから聞こえてきた。凄く耳障りの良い懐かしい感じ、でも一度苦い思いをしてるお兄ちゃんの緊張はピークを迎えてるみたい。
「ご無沙汰してます、畠中泰地です」
あぁ……スピーカー越しの星哉お兄ちゃんの声が低くなったような気がする、やっぱり僕たちの事キライなのかな……?
「そのままで結構です、今日は父の訃報を報せに伺いました。一昨日四十九日法要を済ませましたので」
『そんな報告要らねぇよ』
「父の遺言に従ってるだけです」
二人の会話はとてもピリピリしててちょっと怖くなってくる。僕の手からお兄ちゃんの緊張感が伝わってきちゃうから僕まで胸がざわざわして何だか落ち着かない。
『律儀モンだなお前。泰地、だっけ?』
星哉お兄ちゃんの声の感じがちょっと変わった?ような気がする……僕はお兄ちゃんを顔色を窺って見るけど今のところ余裕は無いみたい。
「はい。用は済みましたので僕たちはこれで」
失礼します、ってお兄ちゃんが言いかけた時、カチャッと音がしてそっと玄関のドアが開く。ドアのかなり近くに経ってた僕たちは慌てて後ろに下がると、背が高くてビックリするくらいにカッコイイ男の人が顔を出してきた。お父さんに見せてもらってた写真よりも少し大人びていて、何と言うか……色っぽい印象だったんだ。こう言っちゃうとイヤらしい気もするけどそんな感じじゃないよ、子供の僕には表現出来ないのがもどかしい……。
あの……イケメンを前にお兄ちゃん完全に萎縮してる?そりゃあ実のお兄ちゃんがこんなに格好良かったら……。
「この辺りに飲食店、ありますか?」
アレ?そうでもなかったみたい、さっきまでの緊張感からは想像出来ないよ、その質問。
「上がんなよ、この辺に飯屋なんて無いからさ」
僕たちは初対面の星哉お兄ちゃんの家に上がらせてもらう事になって、ここからの泰地兄ちゃんは凄かった……。
「「おじゃまします」」
部屋の中はそんなに散らかってないんだけど、家具が黒いのばっかりで印象がどうしても暗い。
「今昼飯作ってんだ、大したモンは作れねぇんだけど……」
その言葉の通り、キッチンだけは物が散乱してる。傍らにはケータイが置いてあって、お料理サイトを見ながら作ってたんだな、っていうのは想像できた。この散乱ぶりは僕が見ても分かるくらいにこの人料理苦手だ、きっと。
これに泰地兄ちゃんの火が点いたみたいで、肩に掛けてた鞄をダイニングの椅子に置いてキッチンを見てた。こっちのお兄ちゃんは料理得意だからね、何でも目分量で作るからたまに変なの出来上がっちゃう事もあるんだけど……ここだけの話だよ、聞かれたら機嫌損ねちゃうから。
「差し障り無ければ僕が作って良いですか?」
へっ!?星哉お兄ちゃんはビックリして声が上ずってる。そりゃそうだよね、普通客で上がってきて住人のキッチンを使おうなんて思わないもんね、しかも実質初対面だし……。
「ちょっと待て!初めて上げる奴にそんな事させられるかよ?」
「だからと言ってこのままあなたにお任せしたら日が暮れます。これ切るだけに何分掛かりました?」
泰地兄ちゃんはまな板の上の玉ねぎを見てる。僕もチラッと覗き見……うわっ、ヘタクソ!細切り、ザク切り、どっち?ってか何作ろうとしてたのかな?ピーマンとベーコンとトマトケチャップがあって、パスタだとナポリタン、ご飯だとオムライスかなぁ?
「知らねぇよ、イチイチ時計なんて見ねえだろ?」
「ケータイそこにあるんですから見れるでしょ?それにナポリタンくらいでこんなの見ないでください」
泰地兄ちゃんは早速流し台に散らばっている玉ねぎの皮を片付けて、パスタどこです?と星哉お兄ちゃんをこき使ってる。
「皮なんて後でいいだろ?……ほれ、パスタ」
「塩入れて茹でてください、その太さですと八分くらいです。具材の方は僕がしますので」
この家のキッチンを占拠した泰地兄ちゃんは、朝のガチガチ振りが嘘みたいにその場を取り仕切ってる。この後僕も手伝いに駆り出されてお膳の準備をする。
「おい、その子にまでさせんなよ」
「僕は構いませんよ、皆で手分けした方が早いですから」
僕は泰地兄ちゃんよりも先に星哉お兄ちゃんに声を掛けた。そうしないと容赦無い一言が飛び出しそうで……。
「お気遣いなく、あなたはパスタにだけ集中しててください」
たまにそういう事言うんだよねぇ、ここ自宅じゃないのに。
『はい』
ちょっと高めだったけど、お父さんとそっくりな声がスピーカーから聞こえてきた。凄く耳障りの良い懐かしい感じ、でも一度苦い思いをしてるお兄ちゃんの緊張はピークを迎えてるみたい。
「ご無沙汰してます、畠中泰地です」
あぁ……スピーカー越しの星哉お兄ちゃんの声が低くなったような気がする、やっぱり僕たちの事キライなのかな……?
「そのままで結構です、今日は父の訃報を報せに伺いました。一昨日四十九日法要を済ませましたので」
『そんな報告要らねぇよ』
「父の遺言に従ってるだけです」
二人の会話はとてもピリピリしててちょっと怖くなってくる。僕の手からお兄ちゃんの緊張感が伝わってきちゃうから僕まで胸がざわざわして何だか落ち着かない。
『律儀モンだなお前。泰地、だっけ?』
星哉お兄ちゃんの声の感じがちょっと変わった?ような気がする……僕はお兄ちゃんを顔色を窺って見るけど今のところ余裕は無いみたい。
「はい。用は済みましたので僕たちはこれで」
失礼します、ってお兄ちゃんが言いかけた時、カチャッと音がしてそっと玄関のドアが開く。ドアのかなり近くに経ってた僕たちは慌てて後ろに下がると、背が高くてビックリするくらいにカッコイイ男の人が顔を出してきた。お父さんに見せてもらってた写真よりも少し大人びていて、何と言うか……色っぽい印象だったんだ。こう言っちゃうとイヤらしい気もするけどそんな感じじゃないよ、子供の僕には表現出来ないのがもどかしい……。
あの……イケメンを前にお兄ちゃん完全に萎縮してる?そりゃあ実のお兄ちゃんがこんなに格好良かったら……。
「この辺りに飲食店、ありますか?」
アレ?そうでもなかったみたい、さっきまでの緊張感からは想像出来ないよ、その質問。
「上がんなよ、この辺に飯屋なんて無いからさ」
僕たちは初対面の星哉お兄ちゃんの家に上がらせてもらう事になって、ここからの泰地兄ちゃんは凄かった……。
「「おじゃまします」」
部屋の中はそんなに散らかってないんだけど、家具が黒いのばっかりで印象がどうしても暗い。
「今昼飯作ってんだ、大したモンは作れねぇんだけど……」
その言葉の通り、キッチンだけは物が散乱してる。傍らにはケータイが置いてあって、お料理サイトを見ながら作ってたんだな、っていうのは想像できた。この散乱ぶりは僕が見ても分かるくらいにこの人料理苦手だ、きっと。
これに泰地兄ちゃんの火が点いたみたいで、肩に掛けてた鞄をダイニングの椅子に置いてキッチンを見てた。こっちのお兄ちゃんは料理得意だからね、何でも目分量で作るからたまに変なの出来上がっちゃう事もあるんだけど……ここだけの話だよ、聞かれたら機嫌損ねちゃうから。
「差し障り無ければ僕が作って良いですか?」
へっ!?星哉お兄ちゃんはビックリして声が上ずってる。そりゃそうだよね、普通客で上がってきて住人のキッチンを使おうなんて思わないもんね、しかも実質初対面だし……。
「ちょっと待て!初めて上げる奴にそんな事させられるかよ?」
「だからと言ってこのままあなたにお任せしたら日が暮れます。これ切るだけに何分掛かりました?」
泰地兄ちゃんはまな板の上の玉ねぎを見てる。僕もチラッと覗き見……うわっ、ヘタクソ!細切り、ザク切り、どっち?ってか何作ろうとしてたのかな?ピーマンとベーコンとトマトケチャップがあって、パスタだとナポリタン、ご飯だとオムライスかなぁ?
「知らねぇよ、イチイチ時計なんて見ねえだろ?」
「ケータイそこにあるんですから見れるでしょ?それにナポリタンくらいでこんなの見ないでください」
泰地兄ちゃんは早速流し台に散らばっている玉ねぎの皮を片付けて、パスタどこです?と星哉お兄ちゃんをこき使ってる。
「皮なんて後でいいだろ?……ほれ、パスタ」
「塩入れて茹でてください、その太さですと八分くらいです。具材の方は僕がしますので」
この家のキッチンを占拠した泰地兄ちゃんは、朝のガチガチ振りが嘘みたいにその場を取り仕切ってる。この後僕も手伝いに駆り出されてお膳の準備をする。
「おい、その子にまでさせんなよ」
「僕は構いませんよ、皆で手分けした方が早いですから」
僕は泰地兄ちゃんよりも先に星哉お兄ちゃんに声を掛けた。そうしないと容赦無い一言が飛び出しそうで……。
「お気遣いなく、あなたはパスタにだけ集中しててください」
たまにそういう事言うんだよねぇ、ここ自宅じゃないのに。
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