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面会室

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「こちらでお待ち下さい」

看守さんが橋爪さんを呼びに行く。
するとすぐ、橋爪さんが現れた。拘置所の中はそんなにも密着しているのだろうか?

出てきた時の橋爪さんは、手を拘束されていたが、面会室の椅子に座る前に、拘束をほどかれていた。

「ーーは、橋爪さん」

拓海が笑った。
直人には、以前よりも清潔感があった。ホームレスとして生きていた時よりも、目がイキイキとしている。

「ーー拓海、、手紙が遅くなってごめんな」

直人が呟くように言った。

「それはいいんですけど、、どーしてこんな事をーー?」

それは、罪を押し付ける台詞ではない。
看守の前では言えないが、どーして俺の身代わりになって捕まったのか?
そう言う意味だ。

「ーー拓海、俺はな、、」

直人の口から大きな吐息が漏れる。
俺は黙って、次の言葉を待っていた。

「ーー退かないで聞いてくれるか?」

真面目な面持ちで、直人が言う。

「はい。そんなに改まって、どうしたんですか??」

俺は答える。

「俺な、拓海の事を「友達」とか「同僚」とか「後輩」ーーそんな風に思った事ないんだ」

ーーえ?じゃ、どんな関係なんだ?
疑問符を浮かべたまま、直人が話す言葉を待った。
面会時間は15分まで。
少しでも直人の言葉を聞いておかないと。
次は会ってくれないかも知れない。

「俺、、オレ、、拓海の事が、、す、、好きなんだ」

ーー好き?
ーー人間として??
ーーん?

「ーー好きって、人間として、でしょ?知ってますよ。俺も橋爪さんの事、人間として好きですよ」

「ーー違う。俺が言ってるのは、そう言う意味じゃないんだ」

ーーどういう事だ??
ーー俺の思考がその言葉の意味を、探しているうちに、面会時間が終わってしまった。

それは「面会終了」と言う看守の言葉で、15分が経過した事を知った。

「ーーごめんな。今日はこれまでだ、、」

直人が呟く。
そして俺も言った。

「直人さん、また会いに来ます。必ずーー」

「あぁ。待っている」

そう言った直人さんの表情に、暗い影が落ちた気がした。
結局、俺はこの日、そのままの俺を生きる、と言う事すら、橋爪さんに伝えられなかった。
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