俺は誰？

事故現場

この頃、豊は泊まり込みで俺の記憶が戻るようにサポートしてくれている。

「なぁ、、俺が撃たれたって言う現場に行ってみたいんだけど、どこだか聞いてるか？」

「あぁ、よし！じゃ連れてってやる」

豊がそう言うと、初めての時のように走り出した。
彼を追いかけるだけで精一杯だ。

数分後。
やっと目的地に到着した。

「ここだ。ーーお前はここで撃たれたんだ」

あたりを見渡す。
意外と人通りがある。
撃った犯人は、この人の群れを掻い潜って逃げたのかーー。

「おい、あれ」
通行人が俺を指差す。

「あの人ってまさかーー」
通行人同士で話している。

通行人たちが足早に駆け寄ってくる。

「いきなりすいません。無事だったんですね、、良かった」
通行人が突然そう言った。

「ーーありがとうございます。俺、記憶を無くしちゃってるようで、まったく思い出せないんですが、もしかして、事件を目撃された方ですか？」

「ーーはい」

「その時の事を何でもいいから教えて下さいーー俺、記憶を取り戻したいんです」

「確かあの時、銃を持った人がいて危ないと思ったので、警察を呼んでいたんです。そしたら、、目の前であなたが撃たれて、犯人はあなたを狙っている様でしたよ？」

「無差別殺人とかじゃないんですか？」

「そんな事はないと思います。むしろ、あなただけを狙ってる感じでした」

「犯人はその時、何か言ってました？」

「ちゃんとは聞き取れなかったんですが、裕美の恨みとか言ってたと思いますが、、」

ーー裕美、、ですか。

馴染みのある名前だった。
昨日、夜中まで眺めていた記事に、イヤってくらい乗っていた。
田中裕美、、その名前だろうか？

それより恨みって、、俺は恨まれる事をしたんだろうか？
恨まれる事をしていなければ、俺は撃たれなかった。
それならその恨みの理由を知らなければーー。