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第2章

18話

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お店を出ると外は既に暗く街灯には灯りが灯っていた。

「どうする?食事でもしてから帰るか?」

「そうですね…あれ?でも宿で食事でるんじょないですか?」

「一応付いてるが、まぁ食べなくても問題はない。」

問題はないと言われミネアは少し考える。
お腹は空いてるがこの賑わいの中で食事ができるかが不安だった。

また人に当たってフードが取れたりしたらどうしよう…アランにも迷惑をかけてしまう事になる。よし、ここは断って宿でゆっくり食べよう!!

「あのっ….」

ドサッ

キャーーー!!

「えっ?何?!」

声のした方を振り向くと既に人だかりが出来ており、その中心には男性を心配そうに抱く女性の姿があった。

「誰か、この人を助けて下さい!お医者さんを呼んでください!」

男の人を抱き抱え悲痛な叫び声が聞こえる。

「どうしたんでしょうか?」

「行ってみるか?」

はい。と頷きいつもなら自ら近づこうとはしないが、なぜかとても気になりミネアは人だかりから覗くように中心の男性を見た。

あれ?これって…

「あっ、おい!待てっ!」

アランの声は既に耳に届いていなかった。
ミネアは男性の隣にしゃがみ込む。

「やっぱり、この人…」

「あの、お医者様でしょうか?!この人いきなり胸を押さえて苦しんで…それでそれで…あの!!どうか助けて下さい!!私たちまだ結婚したばかりなんです…なのにこんなのあんまりよ…」

男性を抱き抱えたまま女性は涙を流した。

どうしよう、、
私は医者ではない。病は治すことは出来ない。が、この人を治すことは出来る。
そう、この男性は呪に犯せれているのだ。
黒い影が蛇のように体に巻きつき、胸の辺りをに頭を噛みつかせている。
これは…余り時間が経つと手遅れになる…
ミネアはチラッとアランを見るとコクンと頷き決意した。

「あの、、私は医者ではありません。ですが、この人を治すことは出来ます!!
時間がありませんのでここで対処させて貰います。」

少し離れて下さい、と女性に伝えて男性を地面の上に寝かせる。
苦しそうに歪んだ顔をして地面へと寝そべる男性に向けミネアは呪文を放った。

「彼の者を包みし闇よ。邪悪の根を消しさり、あるべき姿へ戻れ。」

ミネアが手をかざし呪文を唱えると男性の体を黒い光が覆い尽くした。
その光景に見ていた街の人達がざわつくのがわかる。
でも、ミネアは集中を切らさない様にしていた。呪を消す為には取り巻いている影を全て消し去る必要がある。もし、集中を切らして解呪魔法が霧散してしまえば完全に呪を消すことが出来なくなってしまう。

ミネアは頭の中で影を消すイメージを作りそれを魔力に載せ解呪していく。
暫くすると黒い光がパンっと弾けた。

「ふぅ、終わりました。これでもう大丈夫ですよ。」

男性を見るとさっきまで苦しそうにしていた顔は穏やかになりゆっくりと目を開けた。

「あなた!!大丈夫なの?!良かったぁ!!この方が助けてくれたのよ。本当なんて言ったらいいのか…」

女性は感謝で目を潤ませていたが、周りの人達はそうでは無かった。

「あっの、ではこれで、、」

「待って!!お礼だけでも!!」

「!!!」


咄嗟に手を引かれ後ろへ尻餅をついた拍子にフードが外れてしまった。

あぁ、、、またこのパターン…


「まぁ、なんて不気味なのかしら…」

「見ろよあの髪。不吉だろ。さっきの魔法も見たことねーし、気味悪いな!」

「さっさと街から出てって欲しいわね…」

「あぁ、街から出てけ!!」

「この化け物!!」

ヒュンー

「いたっ、なっ何?」

ミネアは痛みの走った頬に触れてみると手には微かに血がついていた。
何が起こったのかと辺りを見るとそこには一片が少し鋭利になっている小石が落ちていた。

あぁ、これが当たったのね…
ここに居てはまずいわね、早く行かないと…

ミネアはフードをかぶり直し立ち上がろうとした。

あっあれ、、?

思うように足に力が入らず立ち上がることが出来ない。よく見ると全身が小刻みに震えていた。
こう言う事もあるかもと決意して助けに出たものの、いざ目の当たりにするとどうやら駄目だったらしい。

どうしよう…


「おい、しっかりしろ!!大丈夫だ。ミネアお前は何も悪いことはしてない。寧ろ人を助けたんだ!立派だと胸を張れ!!」

アランはミネアの手を取りグイッと体を起こすとそのままギュッと抱き寄せた。

「もう大丈夫だ。悪い助けに入るのが遅くなった…」

「い、え、、」


不思議、さっきまでの震えがなくなってる…


「落ち着いたか?なら、ここに長居は要らないな。さぁ、帰るぞ。」


「あっ、あの!もし良かったら家に来ませんか!助けて貰ったお礼もしたいし…」

「えっ、ダメでっ」

「あぁ、助かる。その言葉に甘えよう。」

アランは躊躇するミネアの手を引き、周囲の目も気にせず案内してくれる夫婦について行った。


「あの!!気持ちは嬉しいんですが、、私なんかと一緒にいたら貴方達まで嫌な目で見られてしまいます!!だからっ」

「いいえ、私はどうしてもあなたにお礼がしたいの!!周りの人なんて関係ないわ!だって最愛の人を助けてくれたんだもの。」


そんな風に言われたのは初めてだった。


「なっ、胸を張れっていったろ?」


アランが優しく微笑む。


どうしてだろう…
今日のアランはいつもと違う気がする。いや、気のせいかしら?
でもどうしてだろう。隣にいるとホッとするような気持ちになるのは…
うーん、うん、気のせいね。

ミネアは無理やり納得することにし、案内してくれる夫婦の後をついて行った。


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