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第2章
12話①
しおりを挟むお店を出るとミネアは先程通りかかった時に露店が沢山出ていたのを思い出し大広場へと向かった。
大広場へ着くとミネアは適当に人混みを避けお店を見て回る。
お店には異国のアクセサリーや食べ物。ラオラス王国の特産物に野菜や果物など様々なものが並んでいた。
ミネアがお店を物色していると一際目についたものがあった。
あっ、あれはテェリーのパイ!!
テェリーは程よい酸味と爽やかな甘さがとても美味しいのよね。異国の果物だから滅多にお見かけしないけど、以前食べたパイもとっても美味しかったし、さっきお金貰ったから一つくらい買ってもいいよね。
ミネアはパイを一つ頼みお金を店員さんに渡してパイを受け取ると、そのまま広場の端にある木陰に腰を下ろし直ぐに一口かぶりついた。
サクッといい音がする。
「んんん。やっぱり最高!テェリーって何でこんなに美味しいのかしら」
パクパクとパイをひたすら口へ運び、テェリーに舌鼓を打っているとクスクスと隣で笑う声が聞こえた。
ミネアは声のする方を振り向くとそこには青い髪に白い肌、瞳までも薄い青色をした明らかに異国の青年が座ってこちらを見て笑っていた。
「フフフ、ごめん。笑うつもりは無かったんだ。ただ、余りに美味しそうにテェリーを食べているもんだから遂見惚れてしまってね」
「見惚れたって…そう言う割には今笑ってませんでしたか…」
ミネアは少し恥ずかしそうに答える。
「いやいや、本当だよ。とても美味しそうにテェリーを食べるね。我が国としても喜ばしい事だよ」
我が国?あっ、そうか青い髪に薄い青の瞳は隣国ラナの国民の特長だったっけ。
あれ?瞳は青いって聞いた事があったかもだけど髪もだったかしら?
外界には疎いミネアは隣国の特長など頭の片隅にしかないのでうろ覚えだがこれだけはわかる。
そう、テェリーはラナの特産物だ!!
「そうだ!この先の露店にテェリーを扱ってる美味しいお店があるんだ!!笑ってしまったお詫びに、是非ご馳走させてよ!!ほら、こっち」
「えっ、ちょっと待って下さいー」
青い髪の青年にグイッと手を引かれてミネアはそのまま後をついて行く形となった。
「そう言えば名前聞いてなかったよね。僕はミラ、君は?」
手を引きながらミラと名乗る青年が振り返る
「あっ、わっ、私ミネアです。あの…手、、、私一人で歩けますので…」
何故かずっと手を引かれてる。
その光景に急に恥ずかしくなって手を離して貰えるように伝えてみた。
「あぁ、そうだね。でも着いたよ、ここなんだ。ここのテェリーのケーキが絶品でね。」
ん?ここ?!
いやいや、ここ露店ぢゃないんですけど!!
着いた。と言われてお店を見ればそこには大広場の近くだというのに、お祭りの露店とは雰囲気が全く違い高級そうな外観のお店だった。
「あの、ここ露店じゃないですよね?ってか、私こんな高級そうなお店入れません!」
丁重にお断りしようと思いぺこりと頭を下げ立ち去ろうとするが、何故かまた手を取られてしまう。
「大丈夫だよ。僕の奢りだから。この国に来た時の行きつけなんだ。」
そう言うと半ば強引にお店の中へと連れて行かれてしまった。
「いらっしゃいませ。これはよくおいで下さいました。」
「あぁ、連絡もなく急にすまない。席はあるかな?」
「はい、直ぐにご用意させて頂きます。少々お待ち下さい。」
凄い。お店も混んでいて待ってる人もいるのに直ぐに席を用意して貰えるなんて、やっぱり行きつけのお店になるとこう言う対応をしてくれるものなのね!!
ミネアには当然行きつけのお店などありはしないので、本来の対応が分からない。それどころか、こんな高級なお店は生まれて初めてで自分はどうすれば良いのかすらよくわからない。
こちらへどうぞ。
店員さんに促され着いていこうとするとミラがミネアの背中に手を添えて、行こう。とエスコートしてくれる。
!?
これがエスコートと言うやつかしら!!
凄いミラったらとっても自然で違和感が無かったわ。
あまりにも自然すぎて照れすらも無かった。
ふとミネアは周りの視線に気付いた。皆が皆ミネアを見ていた。
そうよね、明らかに場違いな格好をしているよね。ってか、ここってこんな格好で入っていいお店なのかしら?
急に自分の格好が恥ずかしくなり下を向くとそれを察したのかミラがトントンっとエスコートしてくれてる背中を軽く叩いてくれた。
どうぞ。と通された部屋はこれまたミネアには場違いな高級家具が置かれている個室だった。
「えっ、待ってミラ、私こんな高級な部屋に入れないよ!だってこんな格好だし…」
「大丈夫、大丈夫。この部屋には僕たちしか居ないし、人目も気にならないから。ねっ」
ニコっと微笑みかけられミネアは渋々部屋の中へと入った。
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