11 / 34
第2章
11話
しおりを挟むアラン達が王都へ出立してから数日がたった。
元通りミネア1人の生活になりしーんと静まり返った我が家に少し寂しささえ覚えていた。
うーん、やっぱり1人だと静かね。
何か気の紛れる事はないかしら…
あっ、そうだった!!
アラン達が居たから忘れてたけど薬を街に売りに行かなくちゃ。
アラン達に振る舞ったおかげで食材もほぼ空っぽだった。まぁ1人なら何とでもなるのだが、食べるものがあるに越した事はない。
ミネアは早速薬を作り街に売りに行く準備を始めた。
マクスの街には1ヶ月に一回くらいの頻度で足を運んでいる。
街に行く時ミネアは必ず羽織を着て、そのフードを被っていく。
何故ならミネアの髪色は特長的で周りの人たちが淡い茶色などの髪色をしているのに対しミネアは濃い紫色をしている。
紫は不吉の象徴と言われているのもあり、一目を避けるためにも街など人が大勢いる所に行く時はフードを被るようにしている。
そして、いつもは街に着くとまず、薬を買ってくれるギザおじさんの店に行き、次に食材や日用品を買い揃える。それが終わると家に戻るという流れだ。
今日もまずはギザおじさんのお店へと向かおうと歩きだす。マクスの街はいつ来ても活気がある。だが今日はいつもより更に賑わっていた。空にはバルーンが飛んでいて、大通りでは大道芸を行っていたり、楽しそうな笑い声が街中に飛び交っていた。
ーカランカランー
「こんちにはー、ギザおじさん今日も薬を買い取って欲しいのだけど。」
カウンター越しにギザおじさんが座って帳簿を付けていた。
「あぁ、ミネアか。いいぞ、今日は何の薬だい?」
「えっとー、傷薬と栄養剤、それと回復力を高めた同品の物をお願いしたいわ」
ミネアは鞄から小瓶を取り出しカウンターに並べ説明する。
「うーん、そうだな、この薬ならこれくらいでどうだ?」
おじさんが指を立てて金額を提示してくれる。
ええ、それでお願い。とミネアは返事をすると毎度ありーとギザおじさんがレジからお金を手渡してくれる。
「いやー、ここだけの話ミネアの薬は評判なんだよ。やっぱり魔女様の作る薬は違うのかね。またよろしく頼むよ!」
魔女様…うん、知ってはいるけど余り呼ばれたくない。けど、ギザおじさんは悪びれた様子もないのでミネアも何も言えずに少し目を逸らす。
すると、窓の外で大道芸をしている風景が目に映ってきた。
「ギザおじさん今日って何かお祭りでもあったかしら?皆んなやけに賑やかよね?」
しばらく街に来てない訳ではないから、お祭りがあるなら知っててもおかしくはないと思うが、何の告知も情報も無かった気がする。
「あぁ、あれな。実は王宮に聖女様が現れたって話なんだ!!」
えっ?!
聖女様ですか?それってラオラス王国では誰もが知ってると言うあの言い伝えの?
「聖女様が現れたって、、、本当ですか?只の言い伝えぢゃなったんですね。」
そして、言い伝えが正しければ…今この国は危機的な状況にあると言う訳だ。
「あれ?でも聖女様が現れたら魔物が減るって事ですよね?最近特に変わった印象は余りないんですけど…?」
「あぁ、まだこの国現れてからひと月経ってないって話だからこれから変わるんだろ」
王都からマクスまでは少し距離がある。
聖女様が現れたと言う街を挙げてのお祭り騒ぎも王都からしてみたら既に終わっている頃だろう。
そうよね、距離があるから対応も時差があるのよね。
「聖女様か、どんな人何でしょうね」
「さぁな、聖女様が現れたってだけで外見やらは全く伝わってこなかったからな…」
へぇ、珍しい。情報通のギザおじさんでも聖女様に関しては知らない事だらけなのか。
「ミネアも今日はそのまま帰らずに、少しお祭りでも見て回ったらどうだ?たまにはマクスの街中に長居するのもいいもんだぞ。」
ミネアは窓の外で賑わっている人々を見た。
うーん、そうね。
久しぶりに少し見て回ろうかな。
楽しそうな人々に釣られてミネアもなんだかワクワクして来た。
「そうね、すこし見て行くわ。」
ミネアは羽織のフードを被り直し、ギザおじさんに挨拶をしてお店を後にした。
0
お気に入りに追加
94
あなたにおすすめの小説
完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。
音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。
だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。
そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。
そこには匿われていた美少年が棲んでいて……
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
女官になるはずだった妃
夜空 筒
恋愛
女官になる。
そう聞いていたはずなのに。
あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。
しかし、皇帝のお迎えもなく
「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」
そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。
秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。
朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。
そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。
皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。
縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。
誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。
更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。
多分…
旦那様、最後に一言よろしいでしょうか?
甘糖むい
恋愛
白い結婚をしてから3年目。
夫ライドとメイドのロゼールに召使いのような扱いを受けていたエラリアは、ロゼールが妊娠した事を知らされ離婚を決意する。
「死んでくれ」
夫にそう言われるまでは。
貴方の愛人を屋敷に連れて来られても困ります。それより大事なお話がありますわ。
もふっとしたクリームパン
恋愛
「早速だけど、カレンに子供が出来たんだ」
隣に居る座ったままの栗色の髪と青い眼の女性を示し、ジャンは笑顔で勝手に話しだす。
「離れには子供部屋がないから、こっちの屋敷に移りたいんだ。部屋はたくさん空いてるんだろ? どうせだから、僕もカレンもこれからこの屋敷で暮らすよ」
三年間通った学園を無事に卒業して、辺境に帰ってきたディアナ・モンド。モンド辺境伯の娘である彼女の元に辺境伯の敷地内にある離れに住んでいたジャン・ボクスがやって来る。
ドレスは淑女の鎧、扇子は盾、言葉を剣にして。正々堂々と迎え入れて差し上げましょう。
妊娠した愛人を連れて私に会いに来た、無法者をね。
本編九話+オマケで完結します。*2021/06/30一部内容変更あり。カクヨム様でも投稿しています。
随時、誤字修正と読みやすさを求めて試行錯誤してますので行間など変更する場合があります。
拙い作品ですが、どうぞよろしくお願いします。
(完結)王家の血筋の令嬢は路上で孤児のように倒れる
青空一夏
恋愛
父親が亡くなってから実の母と妹に虐げられてきた主人公。冬の雪が舞い落ちる日に、仕事を探してこいと言われて当てもなく歩き回るうちに路上に倒れてしまう。そこから、はじめる意外な展開。
ハッピーエンド。ショートショートなので、あまり入り組んでいない設定です。ご都合主義。
Hotランキング21位(10/28 60,362pt 12:18時点)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる