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第2章

11話

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アラン達が王都へ出立してから数日がたった。
元通りミネア1人の生活になりしーんと静まり返った我が家に少し寂しささえ覚えていた。

うーん、やっぱり1人だと静かね。
何か気の紛れる事はないかしら…

あっ、そうだった!!
アラン達が居たから忘れてたけど薬を街に売りに行かなくちゃ。

アラン達に振る舞ったおかげで食材もほぼ空っぽだった。まぁ1人なら何とでもなるのだが、食べるものがあるに越した事はない。

ミネアは早速薬を作り街に売りに行く準備を始めた。




マクスの街には1ヶ月に一回くらいの頻度で足を運んでいる。
街に行く時ミネアは必ず羽織を着て、そのフードを被っていく。
何故ならミネアの髪色は特長的で周りの人たちが淡い茶色などの髪色をしているのに対しミネアは濃い紫色をしている。
紫は不吉の象徴と言われているのもあり、一目を避けるためにも街など人が大勢いる所に行く時はフードを被るようにしている。

そして、いつもは街に着くとまず、薬を買ってくれるギザおじさんの店に行き、次に食材や日用品を買い揃える。それが終わると家に戻るという流れだ。



今日もまずはギザおじさんのお店へと向かおうと歩きだす。マクスの街はいつ来ても活気がある。だが今日はいつもより更に賑わっていた。空にはバルーンが飛んでいて、大通りでは大道芸を行っていたり、楽しそうな笑い声が街中に飛び交っていた。

ーカランカランー

「こんちにはー、ギザおじさん今日も薬を買い取って欲しいのだけど。」

カウンター越しにギザおじさんが座って帳簿を付けていた。

「あぁ、ミネアか。いいぞ、今日は何の薬だい?」

「えっとー、傷薬と栄養剤、それと回復力を高めた同品の物をお願いしたいわ」

ミネアは鞄から小瓶を取り出しカウンターに並べ説明する。

「うーん、そうだな、この薬ならこれくらいでどうだ?」

おじさんが指を立てて金額を提示してくれる。

ええ、それでお願い。とミネアは返事をすると毎度ありーとギザおじさんがレジからお金を手渡してくれる。

「いやー、ここだけの話ミネアの薬は評判なんだよ。やっぱり魔女様の作る薬は違うのかね。またよろしく頼むよ!」

魔女様…うん、知ってはいるけど余り呼ばれたくない。けど、ギザおじさんは悪びれた様子もないのでミネアも何も言えずに少し目を逸らす。
すると、窓の外で大道芸をしている風景が目に映ってきた。

「ギザおじさん今日って何かお祭りでもあったかしら?皆んなやけに賑やかよね?」

しばらく街に来てない訳ではないから、お祭りがあるなら知っててもおかしくはないと思うが、何の告知も情報も無かった気がする。

「あぁ、あれな。実は王宮に聖女様が現れたって話なんだ!!」

えっ?!
聖女様ですか?それってラオラス王国では誰もが知ってると言うあの言い伝えの?

「聖女様が現れたって、、、本当ですか?只の言い伝えぢゃなったんですね。」

そして、言い伝えが正しければ…今この国は危機的な状況にあると言う訳だ。

「あれ?でも聖女様が現れたら魔物が減るって事ですよね?最近特に変わった印象は余りないんですけど…?」

「あぁ、まだこの国現れてからひと月経ってないって話だからこれから変わるんだろ」

王都からマクスまでは少し距離がある。
聖女様が現れたと言う街を挙げてのお祭り騒ぎも王都からしてみたら既に終わっている頃だろう。

そうよね、距離があるから対応も時差があるのよね。


「聖女様か、どんな人何でしょうね」

「さぁな、聖女様が現れたってだけで外見やらは全く伝わってこなかったからな…」

へぇ、珍しい。情報通のギザおじさんでも聖女様に関しては知らない事だらけなのか。

「ミネアも今日はそのまま帰らずに、少しお祭りでも見て回ったらどうだ?たまにはマクスの街中に長居するのもいいもんだぞ。」


ミネアは窓の外で賑わっている人々を見た。

うーん、そうね。
久しぶりに少し見て回ろうかな。


楽しそうな人々に釣られてミネアもなんだかワクワクして来た。

「そうね、すこし見て行くわ。」


ミネアは羽織のフードを被り直し、ギザおじさんに挨拶をしてお店を後にした。






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