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第十一章 成田国際空港 北ウイング
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それから私たちはタクシーを降りて水道橋駅近くのシーフードレストランに入った。どうやらそのレストランは商業施設内にテナントとして入っているお店らしく、隣り合って別の飲食店も併設されていた。要はショッピングモール内の飲食店街みたいなものだと思う。
「前に友達とここ来たんだよね。ハワイアンな感じで雰囲気も良いとこだよ」
天音ちゃんはそう言うと店のドアに力を込めて押し開けた。そしてカウンターにいる店員さんに「お忙しいところ恐れいます。本日一九時に予約させていただいた天沢なんですが」と声を掛けた。どうやら天音ちゃんは大人相手だとやたら丁寧な口調になってしまうらしい。
「天沢様ですね。お待ちしておりました」
店員さんはそう答えると朗らかな笑顔を浮かべた。そして「こちらへどうぞ」と私たちを予約席に案内してくれた――。
「さーて。とりあえずコースは頼んであるから他に頼みたいのあったら好きに頼んでいいよ。今回は伊勢プロの奢りだから」
天音ちゃんはそう言うと「役得ってこういうときに使うもんだしねー」と続けた。この場合役得って言って良いのかな? と内心思う。
「大丈夫なん? あんたこの前もご馳走してくれたけどさ」
「大丈夫大丈夫! 社長にも『天音はもっと食え食え』とか言われるからさ。それにねぇ。交際費ってこういうときに使うもんでしょ?」
「……天沢がそう言うならいいけどさ。でもここ割と高そうな店じゃない?」
「んー。そうね。たぶん高いんじゃないかな? ま、ウチらのお小遣いで来るにはちょっとキツい値段だとは思うよ」
そんな話をしていると料理が運ばれてきた。ガーリックシュリンプとフライドポテト。あとは網焼きステーキ。そんなカロリー爆弾なメニューがテーブルいっぱいに広げられる。
「すごいボリュームだね」
不意に椎名さんがそう呟いた。
「だよねー。みのりんはシーフードとか大丈夫な民?」
「うん、好きだよ。肉よりは魚とかエビとかのほうが食べるかな」
「そっかそっか。じゃあ今日はここ選んで良かったよぉ。予約したあとにみのりんがお魚ダメだったらどうしようってちょっと心配してたんだ」
天音ちゃんはそう言うと大げさに「良かったぁ」と胸をなで下ろした。たぶん普通の女子がこんなリアクションをしたら相当イタいと思う。でも……。不思議と天音ちゃんがする分にはそこまで違和感がなかった。おそらくそれは彼女の間の取り方が絶妙だからだと思う。
「んじゃ。料理も来たことだし乾杯しようか」
天音ちゃんはそう言うとウーロン茶の入ったグラスを持って立ち上がった。そして「えーと。今日も撮影お疲れ様でした。今回はこうしてみんなで集まれてすごく嬉しいです。来月からは海外撮影が始まるので気合い入れて頑張りましょう!」と定型文みたいな挨拶をした。これ以上ないくらい普通に。ノーマルに。奇を衒うことなく。
ただ……。そんなありふれた挨拶さえも彼女が口にするだけで妙にドラマチックに聞こえた。まるでここが撮影現場みたい。そう感じるほどに。
「前に友達とここ来たんだよね。ハワイアンな感じで雰囲気も良いとこだよ」
天音ちゃんはそう言うと店のドアに力を込めて押し開けた。そしてカウンターにいる店員さんに「お忙しいところ恐れいます。本日一九時に予約させていただいた天沢なんですが」と声を掛けた。どうやら天音ちゃんは大人相手だとやたら丁寧な口調になってしまうらしい。
「天沢様ですね。お待ちしておりました」
店員さんはそう答えると朗らかな笑顔を浮かべた。そして「こちらへどうぞ」と私たちを予約席に案内してくれた――。
「さーて。とりあえずコースは頼んであるから他に頼みたいのあったら好きに頼んでいいよ。今回は伊勢プロの奢りだから」
天音ちゃんはそう言うと「役得ってこういうときに使うもんだしねー」と続けた。この場合役得って言って良いのかな? と内心思う。
「大丈夫なん? あんたこの前もご馳走してくれたけどさ」
「大丈夫大丈夫! 社長にも『天音はもっと食え食え』とか言われるからさ。それにねぇ。交際費ってこういうときに使うもんでしょ?」
「……天沢がそう言うならいいけどさ。でもここ割と高そうな店じゃない?」
「んー。そうね。たぶん高いんじゃないかな? ま、ウチらのお小遣いで来るにはちょっとキツい値段だとは思うよ」
そんな話をしていると料理が運ばれてきた。ガーリックシュリンプとフライドポテト。あとは網焼きステーキ。そんなカロリー爆弾なメニューがテーブルいっぱいに広げられる。
「すごいボリュームだね」
不意に椎名さんがそう呟いた。
「だよねー。みのりんはシーフードとか大丈夫な民?」
「うん、好きだよ。肉よりは魚とかエビとかのほうが食べるかな」
「そっかそっか。じゃあ今日はここ選んで良かったよぉ。予約したあとにみのりんがお魚ダメだったらどうしようってちょっと心配してたんだ」
天音ちゃんはそう言うと大げさに「良かったぁ」と胸をなで下ろした。たぶん普通の女子がこんなリアクションをしたら相当イタいと思う。でも……。不思議と天音ちゃんがする分にはそこまで違和感がなかった。おそらくそれは彼女の間の取り方が絶妙だからだと思う。
「んじゃ。料理も来たことだし乾杯しようか」
天音ちゃんはそう言うとウーロン茶の入ったグラスを持って立ち上がった。そして「えーと。今日も撮影お疲れ様でした。今回はこうしてみんなで集まれてすごく嬉しいです。来月からは海外撮影が始まるので気合い入れて頑張りましょう!」と定型文みたいな挨拶をした。これ以上ないくらい普通に。ノーマルに。奇を衒うことなく。
ただ……。そんなありふれた挨拶さえも彼女が口にするだけで妙にドラマチックに聞こえた。まるでここが撮影現場みたい。そう感じるほどに。
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