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第七章 水郷会児童福祉施設 あけぼし

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 そうこうしていると一階から美味しそうな匂いがしてきた。どうやら美鈴さんがフライパンで何か焼いているらしい。
「私には服飾以外何もなかったんです」
 私が階下の様子に気を取られていると不意に香澄さんがそう呟いた。そして「小さい頃からずっとそうでしたから」と付け食えるとポツリポツリと自身の生い立ちについて教えてくれた。

 鹿島香澄の話

 私の生家は京都にありました。京都府京都市。そんな観光のメッカのような場所です。まぁ……。とは言っても私の物心が付く前には千葉県に移住したのですが。
 千葉に移り住んですぐに私の両親は会社を立ち上げました。業種は振り袖の販売レンタル業。簡単に言えば成人式やハレの日に着物を貸し出して着付ける仕事です。
 開業当時の両親は多忙を極めていました。それこそ私の面倒など見ていられないといった感じで、保育園のお迎えさえ叔母に頼むほどでした。だから私の育ての親は両親というよりは叔母とその恋人(現旦那の蔵田店長)だったような気がします。
 そんなちょっと変わった家族関係の中でも私はスクスク育っていきました。たまの休みには両親も私を可愛がってくれましたし、普段は叔母が面倒を見てくれました。おそらく本来は逆なのだと思います。でも……。私にとっては叔母の方が数倍母親っぽかったのです。
 そんな日常を過ごしている内に私は小学校に入学しました。そしてその頃に叔母の恋人は私の叔父になりました。今思えばこの二人の結婚が私の将来の方向性を決めるきっかけだったのだと思います。
 叔父は結婚してすぐに私にお裁縫のイロハをたたき込んでくれました。叔母は「針なんか持たせちゃダメ!」とよく叔父を怒っていましたが叔父はそんなこと気にせず私に様々なことを教えてくれました。そして「香澄には才能がある」とまるで親馬鹿みたいに私を褒めてくれたのです。
 きっと私はそうやって褒めて貰えるのが嬉しかったのだと思います。だから……。私は叔父に憧れるようになりました。だらしなくて自分勝手でパチンコ狂いだけど……。それでもこの人みたいになりたい。そう思ったのです。
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