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第二章 ニコタマ文芸部
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その日は二子玉川高校にとって長い一日になった。まず一限は潰れ、代わりに体育館で全校集会が行われた。全校集会と言う名のいいわけ会。先生たちはとにかくきれい事を並べ、自分たちの行為を正当化しているように見えた。まぁ、最後に「今回の件は口外無用」と言い出すあたり語るに落ちるけれど。
集会中、村田先生はつまらなそうな顔で生徒の列の横に立っていた。彼は今回の騒動の主犯なのにまるで関係ないような顔をしている。
集会が終わるとそれからは自習時間になった。ただプリントが配られ、黒板には簡素な指示だけが書かれていた。授業という体裁をとってはいたけれど、それは放置だと思う。
「職員会議か……」
「そうみたいだね」
楓子は退屈そうに言うとプリントの端っこに落書きを始めた。
「よっぽど時間なかったんだね。このプリント先週貰ったのと一緒だよ? これじゃ丸写ししてくれって言ってるのと変わらないよ」
「あ! ほんとだ……」
楓子に言われるまで気がつかなかったけれど、たしかにそのプリントには見覚えがあった。
「面倒だし丸写しして提出するけどさ……。まぁいいや。原稿する時間できてラッキーだし。栞も校正すれば? たぶん今日一日授業ないよ?」
皮肉なことにこの楓子の読みは当たっていた。二限が終わっても先生は来なかったし、大半の生徒は三〇分も掛からずに課題を終わらせたようだ。まぁ私もそれぐらいで終わったけれど……。
担任がクラスにやってきたのはお昼休みの少し前だった。彼女は一瞬顔を出すと「悪いけど各自自習してて」とだけ言って出て行った。意訳すると「あんたらの相手をしている暇がない」だ。正直、教育者としてどうかと思う。
楓子はずっと漫画の原稿を描いていた。彼女にとってはこの環境は最高に心地良いらしい。机とペンと原稿用紙。それだけあればいいのだろう。(それに関しては私も同じだけれど)
結局、その日は一切授業らしい授業が行われなかった。最後にささやかなホームルームが行われただけだ。ホームルーム中、担任は今回の件についてオブラートに包んだ言葉で説明してくれた。
内容は教員の人事といじめ問題について。これに関しては村田先生や中原くんが言っていたことの焼き直しみたいなものだけれど。
「……。というわけで皆さんにはご迷惑をおかけしますが明日は自宅待機でお願いします。くれぐれも遊び歩かないように」
そう言って彼女はホームルームを締めた――。
集会中、村田先生はつまらなそうな顔で生徒の列の横に立っていた。彼は今回の騒動の主犯なのにまるで関係ないような顔をしている。
集会が終わるとそれからは自習時間になった。ただプリントが配られ、黒板には簡素な指示だけが書かれていた。授業という体裁をとってはいたけれど、それは放置だと思う。
「職員会議か……」
「そうみたいだね」
楓子は退屈そうに言うとプリントの端っこに落書きを始めた。
「よっぽど時間なかったんだね。このプリント先週貰ったのと一緒だよ? これじゃ丸写ししてくれって言ってるのと変わらないよ」
「あ! ほんとだ……」
楓子に言われるまで気がつかなかったけれど、たしかにそのプリントには見覚えがあった。
「面倒だし丸写しして提出するけどさ……。まぁいいや。原稿する時間できてラッキーだし。栞も校正すれば? たぶん今日一日授業ないよ?」
皮肉なことにこの楓子の読みは当たっていた。二限が終わっても先生は来なかったし、大半の生徒は三〇分も掛からずに課題を終わらせたようだ。まぁ私もそれぐらいで終わったけれど……。
担任がクラスにやってきたのはお昼休みの少し前だった。彼女は一瞬顔を出すと「悪いけど各自自習してて」とだけ言って出て行った。意訳すると「あんたらの相手をしている暇がない」だ。正直、教育者としてどうかと思う。
楓子はずっと漫画の原稿を描いていた。彼女にとってはこの環境は最高に心地良いらしい。机とペンと原稿用紙。それだけあればいいのだろう。(それに関しては私も同じだけれど)
結局、その日は一切授業らしい授業が行われなかった。最後にささやかなホームルームが行われただけだ。ホームルーム中、担任は今回の件についてオブラートに包んだ言葉で説明してくれた。
内容は教員の人事といじめ問題について。これに関しては村田先生や中原くんが言っていたことの焼き直しみたいなものだけれど。
「……。というわけで皆さんにはご迷惑をおかけしますが明日は自宅待機でお願いします。くれぐれも遊び歩かないように」
そう言って彼女はホームルームを締めた――。
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