上 下
53 / 64
第二章 ニコタマ文芸部

38

しおりを挟む
 翌日。やはり校門の前にはマスコミが集まっていた。服装から察するに昨日から帰っていないらしい。そう考えるとすごい執念だ。プロ意識。それを感じさせられる。
 多くの生徒がマスコミに呼び止められていた。どういうわけか今日は先生の姿が見えない。
「おはよう」
 呼ばれて振り返るとそこには水貴がいた。
「おはよう……」
「昨日はごめんね。部活休んで」
 彼はそう言うと申し訳なさそうに頭を下げた。
「大丈夫だよ。それよりどうしようか……」
 私は正直うんざりしていた。昨日みたいに校門でマスコミに囲まれると思うとため息が出る。
「突っ切ろう!」
「へ?」
 呆気にとられていると水貴は私の左手を握った。冷たい手。彼の指先のペンだこが手のひらに当たる。
「うわぁぁ」
 思わず声が出る。それと同時に彼は走り出した。
 それから私たちはマスコミの横をすり抜けた。他の生徒と一瞬目が合ったけれど仕方ない。
「はぁ……。はぁ」
 玄関までたどり着く頃には水貴の息が完全に上がっていた。もともと体力がないのだ。
「ちょっと! 急に走らないでよ!」
「はぁ……。ごめんごめん。でも、ああでもしないと入れないからさ」
 水貴はそう言うと「ふぅ」と笑い声ともため息ともとれるような声をだした。
「もう……」
 まぁいい。課程はどうあれ無事玄関までたどり着けたのだから良しとしよう。そう自分に言い聞かす。
「それより昨日はごめんね。最近部活行けなくて……」
「それはいいよ。お母さん大丈夫なの?」
「うーん……。あんまり良くはないかな」
 水貴はそれだけ言うと苦笑いを浮かべた。おそらくあんまり良くないどころではないくらいには悪いのだろう。
「そっか……。早く元気になるといいね」
「うん。ありがとう」
 『早く元気になるといいね』と『ありがとう』。もうこの会話はルーティンかもしれない――。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

連れ子が中学生に成長して胸が膨らむ・・・1人での快感にも目覚て恥ずかしそうにベッドの上で寝る

マッキーの世界
大衆娯楽
連れ子が成長し、中学生になった。 思春期ということもあり、反抗的な態度をとられる。 だが、そんな反抗的な表情も妙に俺の心を捉えて離さない。 「ああ、抱きたい・・・」

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

タイは若いうちに行け

フロイライン
BL
修学旅行でタイを訪れた高校生の酒井翔太は、信じられないような災難に巻き込まれ、絶望の淵に叩き落とされる…

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

処理中です...