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第二章 ニコタマ文芸部

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 グラウンドが騒がしい。何やら叫び声が聞こえる。
「なんだろう?」
 水貴は部室の窓から身を乗り出した。私も同じように窓からグラウンドを覗き込んだ。
 グラウンドの端っこで陸上部員たちが何やら揉めている。遠くてよく見えないけれど、御堂さんと誰かが口論しているようだ。
「何だろう」
「うーん……。ちょっと見てきていい? なんか御堂さん責められてるっぽいし」
「うん! 私も行くよ」
 楓子は相変わらず漫画原稿に集中していた。あきれるほど集中しているようで、私たちの会話も耳に届いていないかもしれない。
「楓子ちゃん! ちょっとグラウンド行ってくるね」
「はーい。いってらっしゃい」
 楓子は顔を上げることなくそれだけ言って左手を軽く振った……。

「まったく楓子はいつもああだね」
 水貴はあきれたように言うとため息を吐いた。
「まぁ、いつもああだからね。でもそれが楓子ちゃんの良いとこだと思うよ?」
「川村さんは甘いなぁ。一応、あれでも部員なんだからさー。いくらなんでも協調性がなさ過ぎだよ」
 協調性がない。という言葉を聞いて私は自身にも言われてるような気分になった。というよりも水貴だって決して協調性が高いほうではないと思う。
「でもさー。文芸部のメンバーってみんな協調性ないから仕方ないよ。あ、浩樹くんだけは別だけどね」
 私は遠回しに『水貴くんも協調性ないよ』と彼に伝えた。
「それは……。まぁ、そうだけどさ。でも楓子は極端じゃないかなぁ」
 おそらく水貴は楓子の個人主義に辟易しているのだと思う。小学時代はそれで面倒な目にも遭ったのかもしれない。
 水貴とそんな話をしながらグラウンドへ向かう。放課後とうこともあって、校舎内には生徒が少ないようだ。
「川村さんは御堂さんのことどう思った?」
「……。少し話しただけだけどいい人だと思ったよ。すごくフレンドリーだしさ」
「だよね……」
 私の言葉を聞くと水貴は首を横に振った。
「本当のとこは分かんないけど、私は御堂さんが悪いことしてるとは思えなかったかな。なんていうのかな……。雰囲気がそんなことする人には見えなかったから」
「僕もそう思うんだよ。だからなんであんな噂が立ったのか不思議でさ」
 きっと水貴は御堂さんが好きなのだろう。私はそう感じた。それが人としてなのか、異性としてなのかは分からないけれど、言葉の端々にそんな響きが聞き取れた。
「まぁ、とにかく行ってみよう」
 私がそう言うと「ああ、そうだね」と水貴は答えた。
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