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第六章 ヘリオス幕張
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――千歳ちゃんはそこまで話すと今にも死にそうな顔で俯いた。おそらく彼女は包み隠さず本心を語ったのだ。醜いし卑劣だし最悪だし犯罪だけれど……。それでもこうして話したこと自体は彼女なりの誠意なのだと思う。
「引いたよね」
千歳ちゃんは俯いたままそう呟いた。
「いや、引いてはないよ」
私はそれにそう返した。本当に千歳ちゃんの話を聞いて引きはしなかったのだ。この子ならやりかねない。そう思ったから。
「香澄さぁ。これから私はどうしたらいいかな?」
「……普通なこと言うけどいい?」
「うん」
「あのね」
それから私は千歳ちゃんの隣に座って当たり前のことを淡々と話した。
「まず悪いことしたんだよね? だったらまずはそれで迷惑掛けた人たちに謝った方がいいよ」
「うん」
「それと法律違反したならそれもちゃんとしなきゃだね。自首……。出頭? まぁどっちでもいいけど警察にはちゃんと行った方が良いと思う」
「それは……。そうだね」
「それで……。それが済んだら反省すること。それで同じことは二度としない。そんなとこかな?」
私がそこまで話すと千歳ちゃんが悲しい笑みを浮かべた。そして「香澄は……。私を許してくれる?」と震えながら言った。その口調はさっきまで挑発的に話していた彼女とはまるで別人のようだ。矮小で脆弱で泣き虫。そんな彼女本来の顔が見え隠れする。
「それは……」
私はそこまで口にして言葉に詰まった。どうしよう……。このまま千歳ちゃんが反省さえしてくれればそれでいい。これから先学校で後ろ指指され続けるであろう彼女と友達なのは構わない。それはそう思うのだ。でも……。現実的にはそうはいかないだろう。おそらく彼女はまた何かあれば似たようなことを起こす。そう思うのだ。
だから私は喉まで出かかった「もう! しょうがないなぁ。今回だけだよ」という言葉を飲み込んだ。ここが引き際。これ以上は彼女の為にならない。そう思ったから。
「ごめん。無理だよ。だって千歳ちゃん……。もう何回も同じようなことしてるよね? それで信じろとか許せとかは……。虫が良すぎるって」
私はできうる限り冷たい口調で彼女にそう伝えた。千歳ちゃんはそれを聞いてその場に崩れ落ちた。そして「やだやだやだ! 香澄がいなくなるなんてやだ!」と泣きじゃくった。酷い有様だ。ここまで取り乱した彼女を見るのは初めてかも知れない。
私はそんな彼女を優しく抱き起こした。そして「泣いたって結果は変わらないよ……。ごめんね千歳ちゃん」と彼女の感情にトドメを刺した――。
「引いたよね」
千歳ちゃんは俯いたままそう呟いた。
「いや、引いてはないよ」
私はそれにそう返した。本当に千歳ちゃんの話を聞いて引きはしなかったのだ。この子ならやりかねない。そう思ったから。
「香澄さぁ。これから私はどうしたらいいかな?」
「……普通なこと言うけどいい?」
「うん」
「あのね」
それから私は千歳ちゃんの隣に座って当たり前のことを淡々と話した。
「まず悪いことしたんだよね? だったらまずはそれで迷惑掛けた人たちに謝った方がいいよ」
「うん」
「それと法律違反したならそれもちゃんとしなきゃだね。自首……。出頭? まぁどっちでもいいけど警察にはちゃんと行った方が良いと思う」
「それは……。そうだね」
「それで……。それが済んだら反省すること。それで同じことは二度としない。そんなとこかな?」
私がそこまで話すと千歳ちゃんが悲しい笑みを浮かべた。そして「香澄は……。私を許してくれる?」と震えながら言った。その口調はさっきまで挑発的に話していた彼女とはまるで別人のようだ。矮小で脆弱で泣き虫。そんな彼女本来の顔が見え隠れする。
「それは……」
私はそこまで口にして言葉に詰まった。どうしよう……。このまま千歳ちゃんが反省さえしてくれればそれでいい。これから先学校で後ろ指指され続けるであろう彼女と友達なのは構わない。それはそう思うのだ。でも……。現実的にはそうはいかないだろう。おそらく彼女はまた何かあれば似たようなことを起こす。そう思うのだ。
だから私は喉まで出かかった「もう! しょうがないなぁ。今回だけだよ」という言葉を飲み込んだ。ここが引き際。これ以上は彼女の為にならない。そう思ったから。
「ごめん。無理だよ。だって千歳ちゃん……。もう何回も同じようなことしてるよね? それで信じろとか許せとかは……。虫が良すぎるって」
私はできうる限り冷たい口調で彼女にそう伝えた。千歳ちゃんはそれを聞いてその場に崩れ落ちた。そして「やだやだやだ! 香澄がいなくなるなんてやだ!」と泣きじゃくった。酷い有様だ。ここまで取り乱した彼女を見るのは初めてかも知れない。
私はそんな彼女を優しく抱き起こした。そして「泣いたって結果は変わらないよ……。ごめんね千歳ちゃん」と彼女の感情にトドメを刺した――。
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