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第六章 ヘリオス幕張

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 百合娃メサの話⑥

 夏休み明け。B組内では私の思惑通りことが進み始めた。太田まりあ破滅計画。それは私の予想より遙かにスムーズに進んでいたと思う。おそらく彼らはこの手の裏工作が並の子供よりはずっと上手いのだ。ロイヤルヴァージンの子供たち故の性。他人を蹴落としてのし上がろうとするその姿勢は流石の一言に尽きると思う。
 ただ……。ひとつ計算外のことが起きた。スケープゴートの選定。それを彼らに一任したのは明らかに私のミスだったのだ。
 だから私は多少の計画変更を余儀なくされた。フジやんへのいじめの続行と太田まりあの公開処刑。それら全てを遅くとも一〇月中には終えなければならない。私にだって良心と情はあるのだ。特にフジやんに関しては……。死ぬほど後悔したし、計画の実行を中止しようとも思った。でも……。私はもう止まれなくなっていたのだ。まるで猛スピードで線路を脱線した蒸気機関車のように。動き出した計画を中止するという選択肢を選べなかった――。

 それからの話は正直したくない。でもこうして香澄を呼び出した以上するほかないだろう。悔しいけれどそれが私が犯した罪への報いだ。ここまでのことをしてしまったけれど本気でそう思う。
 結論から言えば……。私の計画はフジやんと香澄が会った段階で破綻した。私の大切な二人が出会ったことで全ての歯車が狂った。太田まりあのことも。そして奥寺澪……。彼女には完全にしてやられたと思う。
 だから私は詰み将棋のように逃げ回ることしかできなくなった。毎日ビクビク怯えた。居心地の良い場所を得るために居心地の悪い毎日を過ごす。それはあまりにも息苦しく、あまりにも神経をすり減らす日々だった。
 でも……。今になって思えばそれは当然の報いだったのだ。だって私は……。大切な人を自らの手を汚すこともなくただただ自殺に追い込んだのだから――。
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