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第六章 ヘリオス幕張
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百合娃メサの話⑤
六月中旬。私はウェブ上のボイスチャットにB組の中心メンバーを呼び出した。こうして彼らと直接話すのは初めてだ。
『桜井蓮奈。ありがとう。お膳立て感謝する』
私はボイスチェンジャーを使って桜井蓮奈にそう伝えた。桜井蓮奈はそれに「いえ」と素っ気なく返した。やはり愛想がない。おそらくは少しでもボロが出ないように気を付けているのだろう。
『諸君とこうして話す機会が持てて嬉しく思う。では……。本題に入ろう』
私はそこまで話すと彼らに添付ファイルを送りつけた。そして『ファイルを開いてくれ』と伝えた。淡々と。感情の起伏が全くないように。
その後。私はファイル内の文章に沿って計画を説明した。計画内容は至ってシンプル。太田まりあをいじめの主犯に仕立て上げる。それだけだ。
「あの……。このいじめのターゲットの選定はそちらに一任するって言うのは……」
私の説明が一通り終わると小御門研人にそう聞かれた。私はそれに『そのままの意味だ』と返した。要は太田まりあが破滅すればそれでいいのだ。あの女をいじめの主犯に仕立て上げた後は……。それをネットの海にばらまくだけ。それだけで全て上手くいくと思う。
「分かりました」
小御門研人は短くそれだけ言った。私はそれに『では九月から計画開始だ。健闘を祈る』と返して通話を終えた。我ながらずいぶん辺鄙なキャラクターになりきっていると思う――。
その後。私は学校生活とゲーム配信者としての生活。そして脅迫者『自裁の魔女』としての夜の顔を使い分けて過ごした。学校では主に香澄にウザ絡みし、ゲーム配信者としてはFPSゲーマー『百合娃メサ』としてリアルイベントも含めて精力的に活動した。傍から見たらただ単に遊び回っている高校生。そんな風に見えたと思う。
でも……。そんな中でも私は『自裁の魔女』としての自分を決して緩めなかった。定期的に彼らのLINEにお伺いという名の脅迫も送り続けた。人間の心なんて案外簡単にコントロールできるのだ。特に素行の悪い人間に関しては写真一枚でどうとでもなると思う。
思えば……。ミクのときもそうだったな。今更ながらそのことを思い出した。中学までミクは私にとっては大切な友達だったのだ。決して裏切らない。私の悩みを自分のことのように思い悩んでくれる。そんな優しい子だと本気で信じていた。まぁ……。それは私がそう思っていただけでただの幻想だったのだけれど。
ミクは本当に最悪な女だった。今はそう思っている。太田まりあの伝書鳩。その程度の存在だと割り切っている。だからミクのことは私の目の前から消してやったのだ。永遠に戻って来られないように。ネットの海の力を借りて――。
そうこうしていると花見川高校にも夏休みがやってきた。計画実行まであと一月半。そう思うと胸が躍った。やっと太田まりあも消せる。私の中から完全にアンインストールできる。そして……。花見川高校には平和が訪れる。ハッピーエンド。綺麗な終わり。
――と夏休み入りたての私は楽観的に考えていた。
残念ながらその甘い目算はフジやんがスケープゴートにされたことで崩れてしまったのだけれど。
六月中旬。私はウェブ上のボイスチャットにB組の中心メンバーを呼び出した。こうして彼らと直接話すのは初めてだ。
『桜井蓮奈。ありがとう。お膳立て感謝する』
私はボイスチェンジャーを使って桜井蓮奈にそう伝えた。桜井蓮奈はそれに「いえ」と素っ気なく返した。やはり愛想がない。おそらくは少しでもボロが出ないように気を付けているのだろう。
『諸君とこうして話す機会が持てて嬉しく思う。では……。本題に入ろう』
私はそこまで話すと彼らに添付ファイルを送りつけた。そして『ファイルを開いてくれ』と伝えた。淡々と。感情の起伏が全くないように。
その後。私はファイル内の文章に沿って計画を説明した。計画内容は至ってシンプル。太田まりあをいじめの主犯に仕立て上げる。それだけだ。
「あの……。このいじめのターゲットの選定はそちらに一任するって言うのは……」
私の説明が一通り終わると小御門研人にそう聞かれた。私はそれに『そのままの意味だ』と返した。要は太田まりあが破滅すればそれでいいのだ。あの女をいじめの主犯に仕立て上げた後は……。それをネットの海にばらまくだけ。それだけで全て上手くいくと思う。
「分かりました」
小御門研人は短くそれだけ言った。私はそれに『では九月から計画開始だ。健闘を祈る』と返して通話を終えた。我ながらずいぶん辺鄙なキャラクターになりきっていると思う――。
その後。私は学校生活とゲーム配信者としての生活。そして脅迫者『自裁の魔女』としての夜の顔を使い分けて過ごした。学校では主に香澄にウザ絡みし、ゲーム配信者としてはFPSゲーマー『百合娃メサ』としてリアルイベントも含めて精力的に活動した。傍から見たらただ単に遊び回っている高校生。そんな風に見えたと思う。
でも……。そんな中でも私は『自裁の魔女』としての自分を決して緩めなかった。定期的に彼らのLINEにお伺いという名の脅迫も送り続けた。人間の心なんて案外簡単にコントロールできるのだ。特に素行の悪い人間に関しては写真一枚でどうとでもなると思う。
思えば……。ミクのときもそうだったな。今更ながらそのことを思い出した。中学までミクは私にとっては大切な友達だったのだ。決して裏切らない。私の悩みを自分のことのように思い悩んでくれる。そんな優しい子だと本気で信じていた。まぁ……。それは私がそう思っていただけでただの幻想だったのだけれど。
ミクは本当に最悪な女だった。今はそう思っている。太田まりあの伝書鳩。その程度の存在だと割り切っている。だからミクのことは私の目の前から消してやったのだ。永遠に戻って来られないように。ネットの海の力を借りて――。
そうこうしていると花見川高校にも夏休みがやってきた。計画実行まであと一月半。そう思うと胸が躍った。やっと太田まりあも消せる。私の中から完全にアンインストールできる。そして……。花見川高校には平和が訪れる。ハッピーエンド。綺麗な終わり。
――と夏休み入りたての私は楽観的に考えていた。
残念ながらその甘い目算はフジやんがスケープゴートにされたことで崩れてしまったのだけれど。
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