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第六章 ヘリオス幕張
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――澪ちゃんはそこまで話すと深いため息を吐いた。そして「香澄ちゃん大丈夫?」と聞いてきた。正直に言えば大丈夫ではない。でも……。それと同時にある種の納得もあった。あの子ならやりかねない。そう思ったのだ。
だから私は「大丈夫ではないよ。でも千歳ちゃんならそれくらいするかもね」とそのまま心の内を答えた。我ながら肝の据わった返答だと思う。
「……そっか。それ聞いてちょっと安心したよ。ほら、香澄ちゃんと羽田さんって幼なじみじゃん? だからすんごいショック受けるかなぁって思ってたんだ」
澪ちゃんはそう言うと脱力したみたいに肩を落とした。どうやら彼女的には私がこの話を聞いたら酷く傷つくと思っていたらしい。
「そりゃぁ……。ショックだよ。裏切られたって思うしさ。でもね……。あの子は昔からああいうとこあったんだ。だから……。まぁ何ていうか慣れちゃっててね」
そう。私にとって羽田千歳は絵に描いたようなトラブルメーカーなのだ。たまたま私には危害を加えないから一緒にいられる幼なじみ。今更ながらそう割り切っていたように思う。
「それで? さっきの澪ちゃんの話的にはヘリオスまで行って欲しいってことでOK?」
「う、うん。そう。なんかね。七時半からオフ会と生配信があるんだって……」
「分かったよ。じゃあ……。そろそろ行った方がいいね」
私は二人にそう告げると席を立った。そしてそのまま地底人のママに「お会計お願いします」と声を掛けた――。
それから私たちは太田さんの家の車に乗せてもらった。そしてヘリオス幕張という複合商業施設に向かった。目的地はその商業施設のイベントホール。たしか数ヶ月前にも千歳ちゃんがオフ会をしていた場所だ。
「……それにしても鹿島さんすごいね。なんかすごい冷静じゃない?」
車が大通りに出ると太田さんにそんなことを言われた。それに対して私は「まぁね」と軽く返した。いや……。冷静は冷静だけれど内心はらわたが煮えくりかえってはいるのだ。また千歳ちゃんに騙され、振り回され、裏切られた。その事実だけは揺るがないと思う。
「澪ちゃんも太田さんも知らないだろうけど私はあの子に散々振り回されて来たんだ。だから今更……。驚きはないんだよね」
私はそこで一旦話を区切った。そして……。少しだけ羽田千歳の話をした――。
だから私は「大丈夫ではないよ。でも千歳ちゃんならそれくらいするかもね」とそのまま心の内を答えた。我ながら肝の据わった返答だと思う。
「……そっか。それ聞いてちょっと安心したよ。ほら、香澄ちゃんと羽田さんって幼なじみじゃん? だからすんごいショック受けるかなぁって思ってたんだ」
澪ちゃんはそう言うと脱力したみたいに肩を落とした。どうやら彼女的には私がこの話を聞いたら酷く傷つくと思っていたらしい。
「そりゃぁ……。ショックだよ。裏切られたって思うしさ。でもね……。あの子は昔からああいうとこあったんだ。だから……。まぁ何ていうか慣れちゃっててね」
そう。私にとって羽田千歳は絵に描いたようなトラブルメーカーなのだ。たまたま私には危害を加えないから一緒にいられる幼なじみ。今更ながらそう割り切っていたように思う。
「それで? さっきの澪ちゃんの話的にはヘリオスまで行って欲しいってことでOK?」
「う、うん。そう。なんかね。七時半からオフ会と生配信があるんだって……」
「分かったよ。じゃあ……。そろそろ行った方がいいね」
私は二人にそう告げると席を立った。そしてそのまま地底人のママに「お会計お願いします」と声を掛けた――。
それから私たちは太田さんの家の車に乗せてもらった。そしてヘリオス幕張という複合商業施設に向かった。目的地はその商業施設のイベントホール。たしか数ヶ月前にも千歳ちゃんがオフ会をしていた場所だ。
「……それにしても鹿島さんすごいね。なんかすごい冷静じゃない?」
車が大通りに出ると太田さんにそんなことを言われた。それに対して私は「まぁね」と軽く返した。いや……。冷静は冷静だけれど内心はらわたが煮えくりかえってはいるのだ。また千歳ちゃんに騙され、振り回され、裏切られた。その事実だけは揺るがないと思う。
「澪ちゃんも太田さんも知らないだろうけど私はあの子に散々振り回されて来たんだ。だから今更……。驚きはないんだよね」
私はそこで一旦話を区切った。そして……。少しだけ羽田千歳の話をした――。
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