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第三章 秋川千鶴の場合
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上手いこと丸め込まれた気がする。私は何も言い返せなかった。経費面を盾にされるとどうしもようもないのだ。笹原常務の言っていたこと。それ自体は理解できる。おそらく営業部に対して掲載先から打診があったのだろう。
『ウチの誌面広告に穴が空きました。半値で良いので載せませんか?』
そんな感じの打診だ。魅力的な申し出だと思う。私がもし営業部だったとしても飛びつくかも知れない。(私なら広告掲載の場所に関して注文は付けるけれど)
それにしても酷い気分だ。特の広報部二人のあの顔がいけ好かなかった。勝ち誇ったような。そんな嫌や笑いが浮かんでいた。
『お前みたいに短絡的な考えでこちらは仕事をしていない』
そう言われているような気がした。
『売り込みの世界に女が口を出すな』とも。
なんで私の意見はことごとく通らないのだろう? 私は間違っていないはずだ。女性のために。それを願っただけなのに。
女性下着メーカーなら女性の意思をもっと尊重すべきではないだろうか? 彼女たちが喜ぶことを追求し、嫌がることは避ける。それが普通なことではないだろうか?
――いや、答えは出ている。全部男どものせいだ。あいつらが女性の権利を食い物にしているから悪いのだ。しかもただ食い物にするだけでは飽き足らず、女性解放の意思を踏みにじった。これは許すまじき行為だ――。
最高に気分が悪い。吐き気までする。涙まで零れた。
なんで? なんで? なんで? 私の何が問題だったんだ。どうして、どうして。
私は間違っていない。欠片も間違っていない。正義に基づいて動いた。なのにどうして……。そんな思いが口、そして喉から溢れかえってきた。
『ウチの誌面広告に穴が空きました。半値で良いので載せませんか?』
そんな感じの打診だ。魅力的な申し出だと思う。私がもし営業部だったとしても飛びつくかも知れない。(私なら広告掲載の場所に関して注文は付けるけれど)
それにしても酷い気分だ。特の広報部二人のあの顔がいけ好かなかった。勝ち誇ったような。そんな嫌や笑いが浮かんでいた。
『お前みたいに短絡的な考えでこちらは仕事をしていない』
そう言われているような気がした。
『売り込みの世界に女が口を出すな』とも。
なんで私の意見はことごとく通らないのだろう? 私は間違っていないはずだ。女性のために。それを願っただけなのに。
女性下着メーカーなら女性の意思をもっと尊重すべきではないだろうか? 彼女たちが喜ぶことを追求し、嫌がることは避ける。それが普通なことではないだろうか?
――いや、答えは出ている。全部男どものせいだ。あいつらが女性の権利を食い物にしているから悪いのだ。しかもただ食い物にするだけでは飽き足らず、女性解放の意思を踏みにじった。これは許すまじき行為だ――。
最高に気分が悪い。吐き気までする。涙まで零れた。
なんで? なんで? なんで? 私の何が問題だったんだ。どうして、どうして。
私は間違っていない。欠片も間違っていない。正義に基づいて動いた。なのにどうして……。そんな思いが口、そして喉から溢れかえってきた。
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