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DISK2
第二十九話 ラジオの時間
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俺は仕事を終えると自宅へ帰った。
バンド活動と仕事でしばらく休みがなかったが、その日はに残業もなくすぐに帰れた。
自宅に戻ると洗濯機を回し簡単に部屋を掃除した。
テーブルの上には缶ビールの空き缶が無造作に置かれている。
灰皿はマルボロの吸い殻で溢れていた。
我ながらだらしなさ過ぎる。
俺は買ってきた惣菜で夕飯を済ませ、洗濯機に放り込んでおいた洗濯物をコインランドリーに持って行くことにした。
夜道をランドリーバッグを片手にコインランドリーへ向かう。
1週間分の洗濯物は俺の右手に重くのしかかる。
コインランドリーに着く頃には肩が少し痛くなっていた。
コインランドリーで洗濯物を乾かす。
俺は衣類が乾くまで間、スマホでラジオを聴くことにした。
スマホでラジオの番組表を見ながら選んでいると、そこに見覚えのある名前を見つける。
「オールナイトラジオゴールデン。アフロディーテのオールナイトゴールデン!!」
やれやれだ。『アフロディーテ』が生でラジオ放送をしているらしい。
本当は聴きたくも無い。と思った。
しかし……。気が付くと俺はそのラジオを選択していた。
我ながら嫌になる。
月子「せやからケンちゃんゆーたやん? なんで、早う起んかったんや?」
健次「悪かったゆーとるやろ! 何時までもグチグチ言うなや!」
月子「ほんまにいつまでたってもだらしないんやから、ほんまやで! ケンちゃん小学生の頃から時間にルーズ過ぎやで! マジ!」
健次「そこを言うなや!」
月子と健次さんはいつもの調子でラジオで痴話喧嘩をしていた。
やはりこの2人は仲が良い。
関係としては俺とウラの関係に近い気がする。
彼らは内輪ネタを交えながら楽しそうにトークをしていた。
気のせいか、月子の声は前に比べて幾分か老けたように聞こえる……。
月子「でな! ケンちゃん遂にウチらも武道館公演が決まったやん! いよいよやね!」
健次「そやなー。ここまで来るのにえらい時間掛かったけどなー」
月子「ほんまやねー。いやはや、ファンの皆さん、スタッフの皆さんのお陰ですー。ほんまに感謝感謝やで!」
健次「まぁ俺らも色々あったけどなー……」
月子「色々あったねー。『Desire』でデビューしてからかれこれもう25周年やで?」
健次「25年とか半端ないなー。よくお前みたいなのとここまで続けてきたわ」
月子「ちょっとぉー。ケンちゃん! なんでそんな風に言うんや? ウチやったからここまで来れたんやん?」
健次「まぁー……。否定はせーへんけどな! 努力もしたし、酷い目にも散々あったもんなー」
月子「そやでー! ウチらはここまで結構痛い目に会ってきたやん?」
健次「お前も成長したってことかな? まぁお前の周りも相当痛い目に遭わされてた気もするがな……」
月子「ちょっとー。誰のことやねんな? ウチには心当たりあらへんでー」
放送を聴きながら俺はいい加減ウンザリした。
月子はメディア露出するときは本当に善良で気さくなアーティストなのだ。
この放送だって何も知らずに聴けば好感を持てると思う。
健次さんは素のままで俺と接するときとあまり変化を感じない。
月子の方は酷く自分のキャラクターを作り込んでいる。
関西弁面白お姉さん……。実際は性悪年増女だけれど……。
俺はそこで聴くとスマホのラジオアプリを落とした。
洗濯物はまだ乾燥機の中で踊っていたが、これ以上あの女の声は聴きたくない。
1週間働いてくれた俺の衣類たちが絡み合いながら回る。
その様子は酷く退屈で、日常そのものをかき混ぜているだ。
俺は茨城に居た頃のことを何となく思い出した。
大学時代にバンドが本格始動し、ジュンと一緒に練習をして居たときのこと……。
思い返せばウラと出会った頃の俺はこんなに擦れていなかった気がする。
唯々『アフロディーテ』に憧れて練習とライブに力を入れていたのだ。
その頃の俺たちにとって『アフロディーテ』は神様のようだった。
信仰する神が少しずつ本性を晒し、その神が悪魔だと気づいたときには手遅れになっていた……。
そんなどうしようもない気持ちだ。
まぁ実際、悪魔だったのは月子だけで他のメンバーは本当に俺たちに良くしてくれた気もするけれど……。
気がつくと洗濯物は踊るの止めていた。
コインランドリーは暖房機からでる「ゴッー」という音だけが響き渡っている。
俺は乾燥機から洗濯物をランドリーバックにしまった。
おかえり。俺の日常――。
翌朝。スマホを確認すると健次さんから連絡が入っていた。
文面から察するに何か渡したい物があるらしい。
俺は仕事が終わってから彼と待ち合わせをすることにした。
いったい彼は、俺に何を渡そうというのだろうか?
バンド活動と仕事でしばらく休みがなかったが、その日はに残業もなくすぐに帰れた。
自宅に戻ると洗濯機を回し簡単に部屋を掃除した。
テーブルの上には缶ビールの空き缶が無造作に置かれている。
灰皿はマルボロの吸い殻で溢れていた。
我ながらだらしなさ過ぎる。
俺は買ってきた惣菜で夕飯を済ませ、洗濯機に放り込んでおいた洗濯物をコインランドリーに持って行くことにした。
夜道をランドリーバッグを片手にコインランドリーへ向かう。
1週間分の洗濯物は俺の右手に重くのしかかる。
コインランドリーに着く頃には肩が少し痛くなっていた。
コインランドリーで洗濯物を乾かす。
俺は衣類が乾くまで間、スマホでラジオを聴くことにした。
スマホでラジオの番組表を見ながら選んでいると、そこに見覚えのある名前を見つける。
「オールナイトラジオゴールデン。アフロディーテのオールナイトゴールデン!!」
やれやれだ。『アフロディーテ』が生でラジオ放送をしているらしい。
本当は聴きたくも無い。と思った。
しかし……。気が付くと俺はそのラジオを選択していた。
我ながら嫌になる。
月子「せやからケンちゃんゆーたやん? なんで、早う起んかったんや?」
健次「悪かったゆーとるやろ! 何時までもグチグチ言うなや!」
月子「ほんまにいつまでたってもだらしないんやから、ほんまやで! ケンちゃん小学生の頃から時間にルーズ過ぎやで! マジ!」
健次「そこを言うなや!」
月子と健次さんはいつもの調子でラジオで痴話喧嘩をしていた。
やはりこの2人は仲が良い。
関係としては俺とウラの関係に近い気がする。
彼らは内輪ネタを交えながら楽しそうにトークをしていた。
気のせいか、月子の声は前に比べて幾分か老けたように聞こえる……。
月子「でな! ケンちゃん遂にウチらも武道館公演が決まったやん! いよいよやね!」
健次「そやなー。ここまで来るのにえらい時間掛かったけどなー」
月子「ほんまやねー。いやはや、ファンの皆さん、スタッフの皆さんのお陰ですー。ほんまに感謝感謝やで!」
健次「まぁ俺らも色々あったけどなー……」
月子「色々あったねー。『Desire』でデビューしてからかれこれもう25周年やで?」
健次「25年とか半端ないなー。よくお前みたいなのとここまで続けてきたわ」
月子「ちょっとぉー。ケンちゃん! なんでそんな風に言うんや? ウチやったからここまで来れたんやん?」
健次「まぁー……。否定はせーへんけどな! 努力もしたし、酷い目にも散々あったもんなー」
月子「そやでー! ウチらはここまで結構痛い目に会ってきたやん?」
健次「お前も成長したってことかな? まぁお前の周りも相当痛い目に遭わされてた気もするがな……」
月子「ちょっとー。誰のことやねんな? ウチには心当たりあらへんでー」
放送を聴きながら俺はいい加減ウンザリした。
月子はメディア露出するときは本当に善良で気さくなアーティストなのだ。
この放送だって何も知らずに聴けば好感を持てると思う。
健次さんは素のままで俺と接するときとあまり変化を感じない。
月子の方は酷く自分のキャラクターを作り込んでいる。
関西弁面白お姉さん……。実際は性悪年増女だけれど……。
俺はそこで聴くとスマホのラジオアプリを落とした。
洗濯物はまだ乾燥機の中で踊っていたが、これ以上あの女の声は聴きたくない。
1週間働いてくれた俺の衣類たちが絡み合いながら回る。
その様子は酷く退屈で、日常そのものをかき混ぜているだ。
俺は茨城に居た頃のことを何となく思い出した。
大学時代にバンドが本格始動し、ジュンと一緒に練習をして居たときのこと……。
思い返せばウラと出会った頃の俺はこんなに擦れていなかった気がする。
唯々『アフロディーテ』に憧れて練習とライブに力を入れていたのだ。
その頃の俺たちにとって『アフロディーテ』は神様のようだった。
信仰する神が少しずつ本性を晒し、その神が悪魔だと気づいたときには手遅れになっていた……。
そんなどうしようもない気持ちだ。
まぁ実際、悪魔だったのは月子だけで他のメンバーは本当に俺たちに良くしてくれた気もするけれど……。
気がつくと洗濯物は踊るの止めていた。
コインランドリーは暖房機からでる「ゴッー」という音だけが響き渡っている。
俺は乾燥機から洗濯物をランドリーバックにしまった。
おかえり。俺の日常――。
翌朝。スマホを確認すると健次さんから連絡が入っていた。
文面から察するに何か渡したい物があるらしい。
俺は仕事が終わってから彼と待ち合わせをすることにした。
いったい彼は、俺に何を渡そうというのだろうか?
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