【完結】サマーナイト・レポート

予備校の夏期講習で知り合ったボカロ好きの女の子と、自転車で夜明けの海を目指したあの夏の日――

「私は日本人でも地球人でもありません。銀河政府の目的に基づいて生成された人工生命体です。それがわかりにくければ、宇宙人だと思っていただいても差し支えありません」

市ケ谷から麹町へと続く坂道の、ありふれたチェーンの喫茶店で、彼女は私に奇妙な依頼を持ちかけた。

「明日の夜明けまでに私を相模湾に移送してください」

妄想か、現実か、あるいは受験生の灰色の夏を彩るための、ちょっとした遊びだったのか。
市ケ谷から江ノ島まで六〇キロメートル。
通学用自転車の荷台に彼女を乗せて、夜の旅が始まった。

「私には、過去も未来もないんですよ」

夜の街を走りながら、私は気づく。
彼女はもしかしたら、死のうとしているのではないか――?

※この物語はフィクションです。実体験に基づくものではありません。
※作中、法律・法令に反する行為の描写を含みますが、そうした行為を容認・推奨するものではありません。
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