28 / 59
第28話 高校時代。
しおりを挟むほのかは答える。
「いいえ。高校の時は本名の真夜でした。あの子、高校の時は今とは感じが違ったから……」
おれは思わず、会話に割って入った。
「どう違ったの?」
すると、ほのかは何かを言いかけて、ためらった。
そして、少し考えるような仕草をすると、咳払いをして続ける。
「う~ん、まぁ、詳しくは本人に聞いてください」
「わかった。それで、大学から今のあだ名がついたの?」
「はい。あの子、一見、明るいじゃないですか? 名前と真逆のお日様みたいだねってなって。それで、まひるって呼ばれるようになったんです」
そうか。
大学生のまひるは、中学の時と空気感は違うが、明るくて人当たりがいい点では一致している。
高校の時は違ったってことか。
どんなだったのだろう。
笑顔のまひる以外が想像できない。
それに、中学の時は本当に友達が多かった。間違っても「わたし、友達が少ないから」ではなかったはずだ。
そういう意味では、今も中学の時とは違う。
俺がそんなことを考えていると、ほのかが言葉を続けた。
「あの子。カラ元気というか。なんか危なっかしくて。心配なんです。だから、ナギさんがどんな人かなって」
確かに、それは俺も感じた。
俺と2人でいるときと、さっきの舞台に上がった大学でのまひるは、何かが違う。
あ、この機会にアレについて聞いておこうか。
「まひるに纏わりついてるヤツって、どんなヤツなの?」
ほのかは、一瞬、俺から視線を逸らし、言葉を選ぶように数秒の間、沈黙した。
「ゼミの先輩です。あの、これ、わたしが言ったこと、内緒にしてくださいね。その先輩って、まひるの元カレなんです」
やはりそうか。
分かってはいたが、やはり、こういう時って、心中穏やかではいられないものらしい。正直、かなりイライラする。
いや、これは嫉妬か。
すると、先輩が肩を組んできた。
「ナギ、まだ会ってもいないんだから、そんなにあつくなるなよ。会ったらガツンと言ってやれ。『俺の女に手を出すな』ってな」
そうだよな。
おれは、何のためにここにきた?
俺自身の嫉妬心を解消するためか?
いや、違う。
まひるのためだ。
まひるは、俺のことを信頼してくれているのだ。その期待に応えたい。
おれが1人でぶつぶつ言っていると、先輩が言葉を続ける。
「……あとな、そいつに会ったら、会話を録音しとけ。念の為な」
そうこうしているうちに、まひるの模擬店についた。
まひるは俺に気づいて、元気に手を振ってくれる。自慢のウドンを3つ注文し、店舗脇のスペースで食べた。
スープを一口すする。
すると、カツオの出汁と、醤油の香りがフワッと鼻に入ってくる。うどんもコシがあって、うどんの小麦にも透明感があって味わい深いというか。シンプルにうまい。
正直、模擬店でこんなにうまいものが食えるとは、驚きだ。
テーブルには小さなアルバムが置いてあり、刑務作業としてウドンを打つ受刑者の人達の写真が置いてある。
写真はプロのように上手ではなく、そこが逆にリアルに見える。普段、まひるがどんな勉強をしているのか、垣間見れた気がして嬉しかった。
おれが感慨に浸っているすぐ横では、先輩がほのかに連絡先を聞いている。
ほのかみたいに真面目そうな子が相手でも、先輩はまったくのマイペースだ。
この人、ある意味すごいよね。
このバイタリティ、見習いたい。
ほのかの方は……、迷惑そうにしつつも、教えている。
『これは、もしかしたらワンチャンあるのか?』
もし、先輩が心を入れ替えて真面目に付き合うのなら、応援しようじゃないか。うん。
おれが妄想を楽しんでいると、店舗の方が騒がしくなった。
まひるが困った顔をして、誰かと話している。
まひるは、不安そうな顔をしてチラチラとこちらを見ると、左手薬指をしきりにいじっている。
左手に光っているのは、おれがテーマパークであげた指輪だ。
くそ。
こんな場面で指輪を頼りにしてくれるなら、ちゃんとしたのプレゼントしておけば良かった。
まひると何か言い合ったあと、男は、のそっとした動作で、見下ろすように、こちらを睨みつけた。
身長が大きく、身体が横にも縦にもでかい男。
髪の毛はホスト崩れのようで、金髪だ。
あの男か。
あいつがまひるに付き纏ってる男か。
26
お気に入りに追加
191
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
お兄ちゃんが私にぐいぐいエッチな事を迫って来て困るんですけど!?
さいとう みさき
恋愛
私は琴吹(ことぶき)、高校生一年生。
私には再婚して血の繋がらない 二つ年上の兄がいる。
見た目は、まあ正直、好みなんだけど……
「好きな人が出来た! すまんが琴吹、練習台になってくれ!!」
そう言ってお兄ちゃんは私に協力を要請するのだけど、何処で仕入れた知識だかエッチな事ばかりしてこようとする。
「お兄ちゃんのばかぁっ! 女の子にいきなりそんな事しちゃダメだってばッ!!」
はぁ、見た目は好みなのにこのバカ兄は目的の為に偏った知識で女の子に接して来ようとする。
こんなんじゃ絶対にフラれる!
仕方ない、この私がお兄ちゃんを教育してやろーじゃないの!
実はお兄ちゃん好きな義妹が奮闘する物語です。
セカンドラブ ー30歳目前に初めての彼が7年ぶりに現れてあの時よりちゃんと抱いてやるって⁉ 【完結】
remo
恋愛
橘 あおい、30歳目前。
干からびた生活が長すぎて、化石になりそう。このまま一生1人で生きていくのかな。
と思っていたら、
初めての相手に再会した。
柚木 紘弥。
忘れられない、初めての1度だけの彼。
【完結】ありがとうございました‼
見知らぬ男に監禁されています
月鳴
恋愛
悪夢はある日突然訪れた。どこにでもいるような普通の女子大生だった私は、見知らぬ男に攫われ、その日から人生が一転する。
――どうしてこんなことになったのだろう。その問いに答えるものは誰もいない。
メリバ風味のバッドエンドです。
2023.3.31 ifストーリー追加
彼女の浮気相手からNTRビデオレターが送られてきたから全力で反撃しますが、今さら許してくれと言われてももう遅い
うぱー
恋愛
彼女の浮気相手からハメ撮りを送られてきたことにより、浮気されていた事実を知る。
浮気相手はサークルの女性にモテまくりの先輩だった。
裏切られていた悲しみと憎しみを糧に社会的制裁を徹底的に加えて復讐することを誓う。
■一行あらすじ
浮気相手と彼女を地獄に落とすために頑張る話です(●´艸`)ィヒヒ
十年越しの溺愛は、指先に甘い星を降らす
和泉杏咲
恋愛
私は、もうすぐ結婚をする。
職場で知り合った上司とのスピード婚。
ワケアリなので結婚式はナシ。
けれど、指輪だけは買おうと2人で決めた。
物が手に入りさえすれば、どこでもよかったのに。
どうして私達は、あの店に入ってしまったのだろう。
その店の名前は「Bella stella(ベラ ステラ)」
春の空色の壁の小さなお店にいたのは、私がずっと忘れられない人だった。
「君が、そんな結婚をするなんて、俺がこのまま許せると思う?」
お願い。
今、そんなことを言わないで。
決心が鈍ってしまうから。
私の人生は、あの人に捧げると決めてしまったのだから。
⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒* ゚*。*⌒*。*゚
東雲美空(28) 会社員 × 如月理玖(28) 有名ジュエリー作家
⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒* ゚*。*⌒*。*゚
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる