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11.生きていて良かったと思うよりも
私は生まれてから無性の愛を受けた覚えがない。父はDV気質のある男で、母と私はそれに怯えていた。母だけは私を愛していてくれたかもしれないが、そんな屑な父親に惹かれていた母も、いざとなれば私以上に自身を庇った。それは私が五歳の頃に露呈し、私は施設で暮らすことになった。
私は他人の痛みがわからない子供だった。なぜならその時には、私は自身の痛みにも鈍感になってしまっていた。施設で私は目の敵にされ、職員や子供たちからも避けられて行った。
里親が見つかり、中学入学前に施設を出たが、私はそこでも問題を起こした。最初のうちは私に気をかけてくれていたが、それで私の失った感情は返ってこなかった。里親は私を不気味がり、次第に無関心になって行った。
中学では問題を起こさないように気を付けていたが、私の過去を持て囃し、それを起爆剤に暴言や暴力を振るってくる輩は一定数いた。ちなみにこれは高校生になっても続いた。
そういう事態になると、私はなんの感情もなく相手の事を暴力で制した。相手は私の顔や腹を殴って来るが、私は道具を使って相手の目や喉を、蹴りで急所を潰しにかかった。奇跡的に障害が残ることは一度も無かったが、返り討ちにする回数が増えることに、世間と私の距離は離れて行った。
問題行動ばかりかつ勉強の出来も悪かった私は就職することができず、里親からも家を追い出された。今はボロアポートでアルバイトをしながら生活をしている。なんの偶然かわからないが、そのアパートは私が虐待を受けていたあの部屋にそっくりであった。
結局私は何も変わっていない。自分の痛みも他人の痛みもわからず、愛というものを知らない無知な子供だ。
私は待ち望んでいる。生きていて良かったと思うよりも、死んでも良いと思えるほどの幸福に出会うことに。
それだけを心に秘めて、今日もまた私はアルバイト先へ出かけるのであった。
12.無駄
僕は今研鑽を積んでいると思う。勉強にしろ人間関係にしろ、僕は理想の自分に近づくために頑張っていると思う。「思う」というのは、評価というものは所詮他人が決めるものであり、コップから水がこぼれて初めて目に見えるものだからである。
ただ、時折全てが嫌になり放り出してしまいたくなる時がある。真っ白なキャンバスを滅茶苦茶に汚したくなるような衝動が、丁寧に並べたドミノを蹴り飛ばしたくなるような衝動が僕を襲う。そういうのは大抵疲れている時や、何かが上手くいってない時だ。
不確かな将来の為に努力をしているが、費やした労力が確実に成果になることなんてない。本来、このような意識は切り離しておくべきだ。というより普段は切り離してそっと仕舞っているのだ。だが、歯車が狂い始めると、埃を被っていた筈の意識は姿を表す。それに苛まれるのは一時的な物であるが、その一瞬が命取りになる事は多い。
最初できないのは当たり前。最初からできるやつなんていない。皆努力してできるようになる...本当にそうなのだろうか。今できなかったら一生できないし、逆に今できてるやつはできなくなるなんてことはないだろう。脳内に雑音が多く鳴り響くが、それに辛抱強く耐え、血反吐を吐きながらも継続する事が努力であり、その努力が大輪の花を咲かせた時が喜ばしい結果なのだろう。
うだうだ抜かしたが、結局この道を選んでしまった以上、引き返すことはできない不退転の道なのだ。ぼやけた視界を擦って、私はまた筆を握った。
13.寄生虫
「あなたの頭には寄生虫が居ます」
「は?」
俺は今朝体に違和感を感じ、仕事を休んで病院に来ていた。頭が痛い、喉の痛み、節々の痛みなど、諸々の症状から普通の風邪か、季節外れのインフルエンザかと思っていたのだが、医者から言い渡されたのは意識外の言葉だった。
「頭の中に虫...僕のですか?」
「はい。柴田さんの症状から私も最初は風邪かと思っていました。しかし万が一の為に粘膜を取り検査したところ、恐らく柴田さんの脳には寄生虫が住み着いて居ます」
「...そんなことありえるんですか?というかMRIで確認したならともかく、粘膜検査から寄生虫がいるなんて分かるんですか?」
「突然のことで気になることも多いでしょうが、あくまでも可能性です。先程言い切った形になってしまったのは私も動揺していたので...申し訳ございません」
「はあ...ということはまだ確実ではないってことですね?」
「はい、今からMRIなどの精密検査をしていきます」
「わかりました」
結論をいうと俺の頭には寄生虫が一匹寄生していた。
「居ましたね、虫」
「そうですね...」
「ですが柴田さん、あなた運がいいですよ。この虫はそこまで害のある種類ではありません」
「いや滅茶苦茶体調悪くなってるんですけど」
「それは初期症状ですね。体が異物に対して拒否反応を起こしているのです。明日には治っていますよ」
「それは一安心...じゃなくて、寄生虫の駆除はできないんですか?」
「すみませんがそれは難しいです。下手に摘出すると柴田さんの脳に障害が残る可能性があります」
「そんな...なら俺は一生虫と暮らさなきゃいけないんですか?」
「そういうことになりますね」
「まじかよ...」
俺が今27だから、80まで生きるとしても50年以上は宿主として生きなきゃいけないのか...
「あの、寄生されると何かヤバかったりします?」
「そうですね、その説明をしましょうか」
こほんと軽く咳払いをした後、医者は語り出す。
「まずこの虫に寄生されても、死んだり、何かしらの病が発症したりすることはありません。この虫は脳に寄生する為、影響を及ぼすのは体ではなく精神の方です」
「精神?え、俺鬱病とかになるんですか?」
「いえ、鬱病などの精神疾患に罹ることはありません。むしろ逆というか...」
「...逆?」
「そうですね、まず私服が劇的にダサくなります」
「は?」
「それから異常なまでに笑い上戸になります。あまり人前でアルコールを摂取しない方がいいですね。それから親父ギャグに過剰反応するようになります。自分が思いついたものにはもちろん、誰かが無意識で発言したものにすら脊髄反射のように意識が向いてしまうようになります。あとは食の好みがややメリカンになります。バケツみたいなコーラやスネアドラムくらいでかいピザが食べたくなりますが、我慢してくださいね。あ、あとは...」
「いやいやもういいっすよ。なんすかその大喜利の答えみたいな症状は」
「冗談みたいですよね?笑」
「笑じゃないっすよ、冗談じゃないっすよまじで」
「そうですよね。だからこの虫は[joke]って呼ばれてるんですよ」
はっはっはと医者は笑うが、俺はそれどころではない。
「それじゃあ、俺はこれからアメリカンコメディの主人公みたいな性格になるってことですか?」
「細かい症状を挙げるとキリがないので一概にそうとは言えませんが、大体そんな感じです。でもよかったですね、危ない虫じゃなくて」
「良くないですよ全然。そんなアホくさい虫なら他の虫に寄生された方が良かった」
「代表的な虫に寄生された場合、遠藤憲一と古田新太のモノマネを交互に12時間した後に[交通事故]と呼ばれるほどの腹痛を起こして、そのままトイレであしたのジョーのように燃え尽きて死にますが、本当にそっちの方が良かったですか?」
「jokeに寄生されてよかったです」
「ちなみに今説明した虫は[black joke]と呼ばれています」
「紙一重っすね」
それからもくだらない話がだらだらと続いたが、それらが終わる頃には体調は良くなっていた。
薬を飲む必要はない為、高めの診察代だけを払って病院を後にする。明日以降自分が底抜けに明るい人間になってしまうと考えるとある意味恐怖で震えたが、なってしまったものは仕方ない。食の好みが変わる前に寿司を食べようと思ってパックの寿司をスーパーで購入する。帰宅して早々に電気ケトルにスイッチを入れてインスタントの味噌汁を準備する。最後の晩餐を楽しみ、柴田宏章が柴田宏章でいられる最後の日を盛大に祝った。風呂上がりには冷蔵庫の奥で冷やしておいたアルコールも一気に飲み干し、気持ち良くなった所で急激に睡魔が襲ってきた。
さようなら今日までの俺、おはよう、これからの俺。
次の日以降の話は...するまでもないだろう。俺は奇抜なスーツで出社し、胃もたれするようなアメリカンジョークを連発するかと思えば、日本の親父のようなギャグも挟みまくる。昼飯はそれこそ胃もたれするような油と糖質の塊をコーラーで流し込み、周りを軽くドン引きさせた。
みんなの周りにも久しぶりに会ったら性格が突き抜けて明るくなった人など、いるだろ?違うかい?そういうやつはきっと頭に虫が入っちまったんだな。虫の影響は無視できるものじゃないから、受け入れるしかないだろ?違うかい?大学デビューも脳に寄生した虫のせいだと俺は思ってる。あいつら地味な顔の割に、髪の毛だけはネオンくらいビカビカしてるからな。
余談だが俺は会社を辞めた。タレントの世界に飛び込んで、運良くブレイクした。人生どうなるかなんてわからないものだな。そうだろ兄弟?違うかい?
14.推しは推せる時に推せ
私という人間には趣味と呼べるものがなかった。好きなものがなく、嫌いなものだけは人並み以上に多い厄介な人間だった。だが、それは数年前までの話。私はある事がきっかけでVtuberにハマった。金銭的余裕はないのでスーパーチャットやメンバーシップに入る事はなかったが、配信があれば何よりも優先して見に行ったし、Xで何かがポストされればいいねをした。
俗にいう推し活を私は楽しんでいたのだが、昨日のバイト帰りにXを確認すると、推しが突然引退を発表した。私は生まれて初めて足元がふらつくような喪失感を味わった。
引退する場合、通常は期限を設ける。今月いっぱいで~、次の配信で~等、推しとの別れを惜しむ時間が、普通はある。だが、私の推しは何の前触れもなく電子の世界から姿を消すこととなった。夕立が運んできた悪い冗談だと、私は思い込みたかった。
〇〇ロス、と耳にする事は少なくはないだろう。私は今まさにそのロス状態にある。体から臓器が全部抜けて空っぽになってしまったのではないかと感じる。心臓の音は空っぽの体に寂しく響いた。
推しの引退に対して私ができる事は、推しの引退後の生活を応援する事と、無責任に再会を待ち望む事くらいだ。Vtuberには転生と言って、姿を変えてまた別のチャンネルを別途作成する場合がかなりある。私は必ず見つけて見せる。私の人生に彩りを与えてくれた彼女をまた、この目に映したいから。
15.君の隣
私は捨てられた子供だった。近くに海のある孤児院で育った。私は誰とも馴染めなかったが、ある日1人の子が私に話しかけてくれた。それがきっかけで私はその子と友達になった。
潮風を感じる堤防で、何気ない話をたくさんした。小学校であった嬉しい話、怒った話、哀しかった話、楽しかった話。私たちは感情を共有し合った。
その子がいる世界で、私は心の底から笑えていたと思う。思えばあの子は私に感情を与えてくれた。
それでも、お別れの時は突然来た。私が小学5年生の時だ。
「私、来月には孤児院を出て行くんだ」
その子からその言葉を聞いた時、驚きのあまり声すら出なかった。私の声は響くどころか鳴らないのに、その子の透き通った声は残酷なほどに鼓膜を叩いた。
おかげさまで私は感情こそあったが、泣いた記憶のない人間だった。でも、その話を聞いた時は止めどなく涙が溢れ出た。
色々話し合ったが、最後の日が来るまでは今まで通りに遊ぼうと2人で決めた。
お別れの前日の話だ。
もう2人に明日は無かった。今までの幸福は嘘ではないが、きっと私たちが大きくなったら未来には、そんなこともあったな程度の1ページになる。私はその日は泣かないと決めていた。旅立つその子を不安にしてはいけないからだ。嫌だ嫌だと思っていても、時間は過ぎ去って行く。結局私もその子も最後には泣きながら抱き合った。
お別れはあっという間だった。その子の背中はどんどん小さくなっていったし、私の視界はみるみる滲んでいった。
孤児院の職員さんから手紙を貰ったのはその次の日の事だった。
~しぃちゃんへ~
「しぃちゃん、まずは今までありがとう。それからごめんね。もうちょっと前から孤児院を出る事は決まっていたんだけど、中々言い出せなかった。職員さんから伝えて貰おうとも思ったけど、私が直接伝えたいって思って職員さんにはしぃちゃんには言わないで貰っていました。
あの時しぃちゃんに話しかけて本当によかった。私も親に捨てられて孤児院に来たけど、しいちゃんのいる世界で本当に良かったです。いっぱい幸せでした。
しぃちゃんも私と同じくらい寂しくて悲しい気持ちだと思います。でも、しぃちゃんには前を向いて生きて欲しいです。私は誰よりもしぃちゃんの幸せを願っています...」
手紙には続きがあったが、私はそれ以上読む事はできなかった。滲んでしまったらいけないので、手紙を封筒に入れて、大切な物をしまっている箱に丁寧に入れた。
私は結局18歳まで孤児院で育った。就職のタイミングで孤児院を出る時、職員さんからその話を聞いた時、私はあの日と同じか、それ以上に驚愕した。
「みぃちゃんが...死んだ?」
話はこうだ。みぃちゃんが孤児院を離れたのは里親が見つかったからではなく、深刻な病が見つかったかららしい。治療のために病院に入院することになったのだが、みぃちゃんの病気は悪化し、死んでしまったらしい。
孤児院を出る際、みぃちゃんのお墓がある場所を教えてもらった。そのため、私は今10年ぶりに親友との再会を果たしている。
そこにはみぃちゃんのお墓があった。誰も掃除をしてないのだろう、他のお墓と比べるとみぃちゃんのお墓は汚れていた。私は念入りに掃除をした。
歳月が巡って私が死んで、生まれ変わったらあの声を辿ってまた逢いに行こう。
16.愛
私が言ったさよならのはずなのに、涙で頬を濡らしていたのは私の方だった。一方的にそれを告げられて傷ついたのは貴方の方なのに、最後まで私は自分勝手だった。貴方は優しいから、今日のことも昨日のことも消せないで生きて行くのでしょう。
でも私は自分勝手だから。自分勝手に貴方には幸せになって欲しいから、私は笑った。貴方の瞼に映し出される私が、最後に見た情景が悲観的なものにならないように泣きながら笑った。
帰り道、私は途方もない寂しさを感じていた。デートの終わりに感じる次に会う日の遠さを感じての寂しさではない。もう戻れない日常を惜しんでの寂しさだった。私は自分の影を見下ろした。
私は彼との理想の未来を心に浮かべる。私が普通の人間で、彼と別れる必要がなかったらどれだけ幸せだっただろうか。
今だけは彼の心が伽藍堂であることを願った。私と別れたことに何も感じることなく、2人で作り上げたキャンバスを真っ白に染め上げていて欲しかった。でも、彼はきっと違う。優しい彼は自分の何が悪かったのだろうと悩み、その場に立ち尽くしているかもしれない。そして、彼が染まるのは許しを乞うような白ではなく、深い藍の色だろう。
私は彼へのどうしようもない愛情を謳った。彼にはもう届かないとわかっているから一層、声を大きく謳った。同じ空の下にいる彼に届かなくても、私は声を枯らすまで謳った。誰がなんと言おうと私の彼への愛情は真実な物だった。それでも神様は残酷だ。やっと手に入れた幸せを手放さなければならないのだから。
私にはもう時間がなかった。それ以上でもそれ以下でもなく、言葉通り私に残された時間はもう底が見えていた。
私を夜空を睨みつけた。こんなに近くにあるのに手が届かないほど遠い物を私は呪った。
愛していたよ、誰よりも。
何よりも君を、愛していた。
それでも、さようなら。
彼女は僕に嘘をつき続けていた。最後は自分勝手な自分を演じて、僕を突き放した。それでも僕は、彼女の真意には気がついていた。ある日彼女のカバンから出ていた一枚の紙。それは病院から出された検査結果の用紙だった。彼女は癌だった。
僕はいつかお別れの日が来ることを覚悟していた。癌のことを知ったことを知られれば、彼女はすぐにでも別れを切り出すと思っていたから、僕は無知を装った。
今日という日がそのお別れの日だった。彼女は泣いていた。泣いていたが、最後には笑っていた。それが意味することを僕は知っている。
本当は引き留めたかった。病気と闘う君の隣にいたかった。けど君の覚悟を、僕の我儘な感情で踏み躙りたくなかった。
彼女の癌がどれほど深刻なレベルなのかはわからない。だが、もしも奇跡が起こって彼女の命が燃え尽きることがなかったら。彼女が生きてくれたら。自分勝手かもしれないけど、会いに行こう。
17.自由に話す部活
「昨今の恋愛っていかがなものじゃない?」
「急にどうした童貞」
部室にて今日最初の会話はこれだった。
「いや考えてみろよ。最近のカップルって3ヶ月は続けば良いみたいな風潮がないか?」
「ちょっとわかるけど、それは俺らみたいな学生の話だろ」
「そう。俺は今学生の恋愛について語らっている」
「すごーく気が乗らないけど、この部活の趣旨ってそれだし、聞くよ」
ちなみに俺(風真宏樹)と悪友である結城純平は、ボードゲーム部である。うちの高校は部活動に入るのが原則なため、俺がサボるために部活を作りたいと言ったら純平ともう卒業したある先輩が力を貸してくれた。ちなみに俺らは今2年で、部員は後輩にもう1人いる。
「進級のタイミングで付き合った星野の相澤いるだろ?」
「バスケ部のお似合いカップルじゃねえか、それがどうした」
「俺は星野とまあまあ仲が良くてな、たまにあいつから惚気話を聞かされるんだ」
「そりゃ御愁傷様なこった」
「確かにあの喉が痛くなるほど甘ったるい惚気を聞かされた時は人中に拳を入れようとも思ったが、今はそうじゃない。最近になってあいつの愚痴が増えたことだ」
「楽しくなってきたな、続けて」
「LINEで[本当に好きなの?]とか、[まだ起きてる?]とか、[電話しよ]とか、最初のうちは嬉々として受け取ったメッセージも最近ではうざったいらしい」
「典型的だな。カップル、というか女ってどうしてあんなに愛情を試すような、確かめるような言動が多いんだろうな」
「好きじゃなきゃ付き合ってないだろ!俺は声を大にしていうぞ。お前が止めようとな」
「止めないし俺もその意見に賛同してるぞ。俺も高校に入ってから一度だけ付き合ったことがあったけど、ちょうど3ヶ月くらい経つと面倒に感じることが多くなるんだよな」
「なんなんだろうなその魔性の3ヶ月目。神の思し召し?」
「そんな大層なもんじゃないだろ。ただの倦怠期みたいなもんじゃろ、知らんけど」
「知らんけどっていうなよ関東人」
「生まれは関西なんだわ」
「まじ?」
「嘘」
「時間無駄にしたわ」
そんな話をしてると部室の扉が勢い良く開いた。
「おはようございまーす!」
後輩の阿久津真希がショートヘアーを揺らしながら入ってきた。
「おはよう阿久津。ちょうど今女性の意見が欲しかったところなんだ」
「なんの話してたんですかー?」
「いや宏樹、阿久津にそんな繊細な気持ちがあるとは思えない、この話はやめよう」
「めっちゃ失礼じゃないですか?」
そこはかとなくキレた視線で俺を睨みつける。いや、なんで俺?
とりあえず先ほど純平と話した内容を阿久津にも話した。
「あーなるほどです」
『まさか阿久津に繊細な乙女心があるってのか!?』
「そんなことでハマらないでください!それにどちらかというと、私もそういう面倒臭い女は苦手です」
「やっぱりか」
「さすがにな」
「さすがボードゲーム部のいかれたメンバーだぜ」
「さすまき」
「先輩たちオセロ盤で殴りますよ?」
それから俺たちはクソみたいな恋愛話に限らず、世の中の面倒臭いことについて語り合った。副教科のくせにやばい量の課題を押し付けてくる教師、バイト先で社員がやるべき仕事を押し付けられる瞬間、カレイの煮付け、ベッドに寝転んだ瞬間に喉の乾きに気がついた時、風真宏樹...
「いや、なんで俺?」
「お前は自覚がないかもしれんが、お前の性格は屈折しまくってるからな。面倒臭いぞ」
「だから彼女できないんじゃないですか?」
「はいキレた。刻み海苔ふりかけた」
「どういうことです?」
「乗り切ったって言いたいんだと思う。意味わからないし何も乗り切れてはないが」
「うるさい!俺は彼女なんか...」
『彼女なんか?』
俺の中の俺はそれを口に出すべきか悩んだ。それを叫ぶことによって自分の中の信念が折れてしまう恐怖、しかしそれを言うことによって有言実行につながるかもしれないという期待、俺はまさに天秤にかけられて「欲しいです」いた。
「心情描写に本音が漏れちゃってるよ」
「必死なんですね宏樹先輩も」
はーあ。彼女ほしいな。
18.絵画
その街の公園には、女性の顔を描き続けているお爺さんがいる。私が観察を続けた結果、そのお爺さんの描く女性の顔は表情や周りの風景などは変わっていたが、女性自体は一貫していた。お爺さんは「誰か」を描き続けていた。
私は美大生だ。街で噂になるほどの絵描きがいれば気になるのが性だろう。私がこの街に来て半年、私は観察だけを続けていたが、今日は思い切ってお爺さんに話を聞いてみようと思う。
「すみません、ちょっといいですか?」
私が声をかけるとお爺さんは筆を止めた。
「なんでしょうか」
とても優しい声音をしていた。
「突然すみません。実は私お爺さんが絵を描いている所ずっと見ていたんです」
「あゝ、そうですか。つまらないでしょう、老耄が描く絵なんて...」
「そんなことないです。とても素敵な絵です」
これはお世辞ではなく本心だ。実際お爺さんの描く絵は熟年故の技術が巧みに使われていた。
「ありがとうございます...それで、どういったご用件でしょうか?」
「失礼でしたら申し訳ないんですけど、ずっと同じ女性の顔を描いていますよね?その理由を教えて頂きたいのですが」
お爺さんはどこかハッとした表情で驚いていた。
「気がつきますか。そうですね、私はずっと同じ女性の顔を描き続けています」
一拍置いて、お爺さんは言葉を続ける。
「昔話になりますが、あまり面白いものではないですよ?」
「ぜひ聞かせてください」
話をまとめると、お爺さんには若い頃生涯を誓った恋人がいた。その女性とは大学で出会い、同じ美術の道を志すものとして互いに惹かれていった。
その女性は俗にいう天才だったらしい。絵のタッチやアイデアに色使いなど、あらゆる技術が卓越していたとお爺さんは言った。
大学在学中に交際を始め、大学卒業後も関係を続けていた。才能のあった女性は無事に画家となり、お爺さんは出版社に就職をした。決してお爺さんに才能がなかったわけではないが、とてつもない逸材が隣にいるということで自分自身は一般企業への就職を決めた。
社会人となり2年目、2人が25歳の時にお爺さんからプロポーズをした。そのプロポーズは無事に成功し、2人は結婚する事になった。
しかし不幸が起きた。女性が急逝したのだ。死因はくも膜下出血だった。お爺さんは悲しみに暮れた。
「それから私は彼女との日々を働きながら絵にしていきました。その時にはカメラもありませんでしたから、自分の大切な記憶を頼りに描き続けました。彼女の声や体温、性格などは正直遠い過去なのであまり覚えていませんが...笑った顔や怒った顔、悲しそうな顔に嬉しそうな、幸せそうな顔...彼女の様々な表情だけはいまだに忘れずに済んでいます。だから私は瞼の裏で微笑む彼女を描き続けています。
それでもいつか忘れてしまう時が来たら、自分の描いた絵を見返そうと思っています。彼女のことを思い出すために...」
19.偏見
「手でくしゃみとか咳抑えた後に、そのまま手すり掴む奴おるやん?あれどういうつもりなんだろうな」
「マスクしてるのに、くしゃみのタイミングだけマスク外すやついるよな。ああいうやつって射精するときにゴム外すんかな」
「大事なことなので一度しか言いませんっていう先生、どういう気持ちであれ言ってるんだろうな。大事なことなら二回言うとかプリントにするとか、それこそ現代なら電子化するとかあるのにな」
「カラオケ行った時に真っ先に君が代歌うやついるやん?あれが一番つまらないんだよな。滑ってる自分が面白いみたいなあの面を殴っていい法律はできていいと思う」
「ムカつくと言えばあれもだよな。新幹線でグリーン車乗ってるガキ。あれは将来人を収入で判断するぜ」
「にわかやんとか言ってくる界隈オタクいるけどさ、にわかじゃない時期ってなんやねん。最初から詳しいやつなんているわけがないじゃんか、それなのに馬鹿の一つ覚えみたいににわかにわかって、人生にわかやん」
「海外への無謀な憧れを抱く奴とかもいるよな。ああいうのは海外のお国柄があるから成りなっているのであって、我が国日本じゃ通用しないんだよな。まあでも勘違いしないでもらいたいのは例えここが海外でもお前じゃ無理やってことだな」
「一蘭で逆張りでラーメン食べない奴とかいるよな。そこに希少価値はないというのに」
「おい待てそれはこの文章を書いてる奴の話だ。1000円だけ持っていったら足りなくて涙を流しながら焼豚と米食ったんだぞ、美味かった」
「まあつまり、あれだよな。俺らがおかしいと思っている行動にも何かしらの理由があって、偏見で語る俺らが1番悪ってことだよな」
「全然まとまってないわ。でも、偏見で語らないようにってのは賛成だな」
「でも俺の人生観は統計に基づいた偏見、未知なるものはまず先入観のみで語る、だぞ」
「クソ野郎だなお前、一遍死んでから蘇ってもう一遍死ね」
「みんなは暴言を口に出さないようにしよう!心の中で言うなら自由だぞ⭐︎」
20.呼吸
どこまで行っても他人は他人で、自分以外の人間は蚊帳の外なのだろう。現代社会ではそのことを強く実感する。
生きるための嘘はいつの日か嘘なのか本音なのかわからなくなってしまった。浅い呼吸は仕方なしに行なっている。
必死になって頑張ったところで、味方がいるとは限らないし、傷の舐め合いをすることさえ叶わない。二色に分けることが困難になった時代で、人々は有り余る矛盾を秘めている。
電灯がゆらめく夜の街で、かすかに見えるのはあの日の自分の影だろうか。蜃気楼を前に命の価値を測ろうとするも、触れようとする前に手から溢れてしまう。
命に歯止めは効かない。一度の失敗で死に至る場合を少なくはない。人は他人を必要以上に吊し上げ、悪ではないというだけの立場を利用して他人に銃を突きつける。こうなってしまうと誰が正義で誰が悪かわからなくなってしまう。いや、もしかしたらどちらも悪、はたまた正義なのかもしれない。
私たちは臆病で卑怯な性格をしている。常に窓を閉め切って外界からの接触を拒否している。換気もされてなく内側は嫌な空気を漂わせている。窓の外から見える景色が安全だとわかれば得意顔で窓を開けて声を挙げる。その瞬間に初めて換気がされ気分は晴れやかになる。それが他者の吐いた恨み言だとしてもだ。
ふと、今の世界は子供の頃におもちゃで散らかした部屋に似ていると思った。子供は数多のおもちゃに押しつぶされてるようにも見えるが、本人は好きなものに囲まれていて幸せな気分だ。自分から片付けようと、親の指示で片付けようと翌日にはまた遊んで散らかしてしまう。
一人ぼっちで孤独を抱えてでも膝を曲げて飛ぶべきか、棒立ちで薄汚れた酸素を吸い続けるか、どちらが健全かは私程度にはわからない。
私は生まれてから無性の愛を受けた覚えがない。父はDV気質のある男で、母と私はそれに怯えていた。母だけは私を愛していてくれたかもしれないが、そんな屑な父親に惹かれていた母も、いざとなれば私以上に自身を庇った。それは私が五歳の頃に露呈し、私は施設で暮らすことになった。
私は他人の痛みがわからない子供だった。なぜならその時には、私は自身の痛みにも鈍感になってしまっていた。施設で私は目の敵にされ、職員や子供たちからも避けられて行った。
里親が見つかり、中学入学前に施設を出たが、私はそこでも問題を起こした。最初のうちは私に気をかけてくれていたが、それで私の失った感情は返ってこなかった。里親は私を不気味がり、次第に無関心になって行った。
中学では問題を起こさないように気を付けていたが、私の過去を持て囃し、それを起爆剤に暴言や暴力を振るってくる輩は一定数いた。ちなみにこれは高校生になっても続いた。
そういう事態になると、私はなんの感情もなく相手の事を暴力で制した。相手は私の顔や腹を殴って来るが、私は道具を使って相手の目や喉を、蹴りで急所を潰しにかかった。奇跡的に障害が残ることは一度も無かったが、返り討ちにする回数が増えることに、世間と私の距離は離れて行った。
問題行動ばかりかつ勉強の出来も悪かった私は就職することができず、里親からも家を追い出された。今はボロアポートでアルバイトをしながら生活をしている。なんの偶然かわからないが、そのアパートは私が虐待を受けていたあの部屋にそっくりであった。
結局私は何も変わっていない。自分の痛みも他人の痛みもわからず、愛というものを知らない無知な子供だ。
私は待ち望んでいる。生きていて良かったと思うよりも、死んでも良いと思えるほどの幸福に出会うことに。
それだけを心に秘めて、今日もまた私はアルバイト先へ出かけるのであった。
12.無駄
僕は今研鑽を積んでいると思う。勉強にしろ人間関係にしろ、僕は理想の自分に近づくために頑張っていると思う。「思う」というのは、評価というものは所詮他人が決めるものであり、コップから水がこぼれて初めて目に見えるものだからである。
ただ、時折全てが嫌になり放り出してしまいたくなる時がある。真っ白なキャンバスを滅茶苦茶に汚したくなるような衝動が、丁寧に並べたドミノを蹴り飛ばしたくなるような衝動が僕を襲う。そういうのは大抵疲れている時や、何かが上手くいってない時だ。
不確かな将来の為に努力をしているが、費やした労力が確実に成果になることなんてない。本来、このような意識は切り離しておくべきだ。というより普段は切り離してそっと仕舞っているのだ。だが、歯車が狂い始めると、埃を被っていた筈の意識は姿を表す。それに苛まれるのは一時的な物であるが、その一瞬が命取りになる事は多い。
最初できないのは当たり前。最初からできるやつなんていない。皆努力してできるようになる...本当にそうなのだろうか。今できなかったら一生できないし、逆に今できてるやつはできなくなるなんてことはないだろう。脳内に雑音が多く鳴り響くが、それに辛抱強く耐え、血反吐を吐きながらも継続する事が努力であり、その努力が大輪の花を咲かせた時が喜ばしい結果なのだろう。
うだうだ抜かしたが、結局この道を選んでしまった以上、引き返すことはできない不退転の道なのだ。ぼやけた視界を擦って、私はまた筆を握った。
13.寄生虫
「あなたの頭には寄生虫が居ます」
「は?」
俺は今朝体に違和感を感じ、仕事を休んで病院に来ていた。頭が痛い、喉の痛み、節々の痛みなど、諸々の症状から普通の風邪か、季節外れのインフルエンザかと思っていたのだが、医者から言い渡されたのは意識外の言葉だった。
「頭の中に虫...僕のですか?」
「はい。柴田さんの症状から私も最初は風邪かと思っていました。しかし万が一の為に粘膜を取り検査したところ、恐らく柴田さんの脳には寄生虫が住み着いて居ます」
「...そんなことありえるんですか?というかMRIで確認したならともかく、粘膜検査から寄生虫がいるなんて分かるんですか?」
「突然のことで気になることも多いでしょうが、あくまでも可能性です。先程言い切った形になってしまったのは私も動揺していたので...申し訳ございません」
「はあ...ということはまだ確実ではないってことですね?」
「はい、今からMRIなどの精密検査をしていきます」
「わかりました」
結論をいうと俺の頭には寄生虫が一匹寄生していた。
「居ましたね、虫」
「そうですね...」
「ですが柴田さん、あなた運がいいですよ。この虫はそこまで害のある種類ではありません」
「いや滅茶苦茶体調悪くなってるんですけど」
「それは初期症状ですね。体が異物に対して拒否反応を起こしているのです。明日には治っていますよ」
「それは一安心...じゃなくて、寄生虫の駆除はできないんですか?」
「すみませんがそれは難しいです。下手に摘出すると柴田さんの脳に障害が残る可能性があります」
「そんな...なら俺は一生虫と暮らさなきゃいけないんですか?」
「そういうことになりますね」
「まじかよ...」
俺が今27だから、80まで生きるとしても50年以上は宿主として生きなきゃいけないのか...
「あの、寄生されると何かヤバかったりします?」
「そうですね、その説明をしましょうか」
こほんと軽く咳払いをした後、医者は語り出す。
「まずこの虫に寄生されても、死んだり、何かしらの病が発症したりすることはありません。この虫は脳に寄生する為、影響を及ぼすのは体ではなく精神の方です」
「精神?え、俺鬱病とかになるんですか?」
「いえ、鬱病などの精神疾患に罹ることはありません。むしろ逆というか...」
「...逆?」
「そうですね、まず私服が劇的にダサくなります」
「は?」
「それから異常なまでに笑い上戸になります。あまり人前でアルコールを摂取しない方がいいですね。それから親父ギャグに過剰反応するようになります。自分が思いついたものにはもちろん、誰かが無意識で発言したものにすら脊髄反射のように意識が向いてしまうようになります。あとは食の好みがややメリカンになります。バケツみたいなコーラやスネアドラムくらいでかいピザが食べたくなりますが、我慢してくださいね。あ、あとは...」
「いやいやもういいっすよ。なんすかその大喜利の答えみたいな症状は」
「冗談みたいですよね?笑」
「笑じゃないっすよ、冗談じゃないっすよまじで」
「そうですよね。だからこの虫は[joke]って呼ばれてるんですよ」
はっはっはと医者は笑うが、俺はそれどころではない。
「それじゃあ、俺はこれからアメリカンコメディの主人公みたいな性格になるってことですか?」
「細かい症状を挙げるとキリがないので一概にそうとは言えませんが、大体そんな感じです。でもよかったですね、危ない虫じゃなくて」
「良くないですよ全然。そんなアホくさい虫なら他の虫に寄生された方が良かった」
「代表的な虫に寄生された場合、遠藤憲一と古田新太のモノマネを交互に12時間した後に[交通事故]と呼ばれるほどの腹痛を起こして、そのままトイレであしたのジョーのように燃え尽きて死にますが、本当にそっちの方が良かったですか?」
「jokeに寄生されてよかったです」
「ちなみに今説明した虫は[black joke]と呼ばれています」
「紙一重っすね」
それからもくだらない話がだらだらと続いたが、それらが終わる頃には体調は良くなっていた。
薬を飲む必要はない為、高めの診察代だけを払って病院を後にする。明日以降自分が底抜けに明るい人間になってしまうと考えるとある意味恐怖で震えたが、なってしまったものは仕方ない。食の好みが変わる前に寿司を食べようと思ってパックの寿司をスーパーで購入する。帰宅して早々に電気ケトルにスイッチを入れてインスタントの味噌汁を準備する。最後の晩餐を楽しみ、柴田宏章が柴田宏章でいられる最後の日を盛大に祝った。風呂上がりには冷蔵庫の奥で冷やしておいたアルコールも一気に飲み干し、気持ち良くなった所で急激に睡魔が襲ってきた。
さようなら今日までの俺、おはよう、これからの俺。
次の日以降の話は...するまでもないだろう。俺は奇抜なスーツで出社し、胃もたれするようなアメリカンジョークを連発するかと思えば、日本の親父のようなギャグも挟みまくる。昼飯はそれこそ胃もたれするような油と糖質の塊をコーラーで流し込み、周りを軽くドン引きさせた。
みんなの周りにも久しぶりに会ったら性格が突き抜けて明るくなった人など、いるだろ?違うかい?そういうやつはきっと頭に虫が入っちまったんだな。虫の影響は無視できるものじゃないから、受け入れるしかないだろ?違うかい?大学デビューも脳に寄生した虫のせいだと俺は思ってる。あいつら地味な顔の割に、髪の毛だけはネオンくらいビカビカしてるからな。
余談だが俺は会社を辞めた。タレントの世界に飛び込んで、運良くブレイクした。人生どうなるかなんてわからないものだな。そうだろ兄弟?違うかい?
14.推しは推せる時に推せ
私という人間には趣味と呼べるものがなかった。好きなものがなく、嫌いなものだけは人並み以上に多い厄介な人間だった。だが、それは数年前までの話。私はある事がきっかけでVtuberにハマった。金銭的余裕はないのでスーパーチャットやメンバーシップに入る事はなかったが、配信があれば何よりも優先して見に行ったし、Xで何かがポストされればいいねをした。
俗にいう推し活を私は楽しんでいたのだが、昨日のバイト帰りにXを確認すると、推しが突然引退を発表した。私は生まれて初めて足元がふらつくような喪失感を味わった。
引退する場合、通常は期限を設ける。今月いっぱいで~、次の配信で~等、推しとの別れを惜しむ時間が、普通はある。だが、私の推しは何の前触れもなく電子の世界から姿を消すこととなった。夕立が運んできた悪い冗談だと、私は思い込みたかった。
〇〇ロス、と耳にする事は少なくはないだろう。私は今まさにそのロス状態にある。体から臓器が全部抜けて空っぽになってしまったのではないかと感じる。心臓の音は空っぽの体に寂しく響いた。
推しの引退に対して私ができる事は、推しの引退後の生活を応援する事と、無責任に再会を待ち望む事くらいだ。Vtuberには転生と言って、姿を変えてまた別のチャンネルを別途作成する場合がかなりある。私は必ず見つけて見せる。私の人生に彩りを与えてくれた彼女をまた、この目に映したいから。
15.君の隣
私は捨てられた子供だった。近くに海のある孤児院で育った。私は誰とも馴染めなかったが、ある日1人の子が私に話しかけてくれた。それがきっかけで私はその子と友達になった。
潮風を感じる堤防で、何気ない話をたくさんした。小学校であった嬉しい話、怒った話、哀しかった話、楽しかった話。私たちは感情を共有し合った。
その子がいる世界で、私は心の底から笑えていたと思う。思えばあの子は私に感情を与えてくれた。
それでも、お別れの時は突然来た。私が小学5年生の時だ。
「私、来月には孤児院を出て行くんだ」
その子からその言葉を聞いた時、驚きのあまり声すら出なかった。私の声は響くどころか鳴らないのに、その子の透き通った声は残酷なほどに鼓膜を叩いた。
おかげさまで私は感情こそあったが、泣いた記憶のない人間だった。でも、その話を聞いた時は止めどなく涙が溢れ出た。
色々話し合ったが、最後の日が来るまでは今まで通りに遊ぼうと2人で決めた。
お別れの前日の話だ。
もう2人に明日は無かった。今までの幸福は嘘ではないが、きっと私たちが大きくなったら未来には、そんなこともあったな程度の1ページになる。私はその日は泣かないと決めていた。旅立つその子を不安にしてはいけないからだ。嫌だ嫌だと思っていても、時間は過ぎ去って行く。結局私もその子も最後には泣きながら抱き合った。
お別れはあっという間だった。その子の背中はどんどん小さくなっていったし、私の視界はみるみる滲んでいった。
孤児院の職員さんから手紙を貰ったのはその次の日の事だった。
~しぃちゃんへ~
「しぃちゃん、まずは今までありがとう。それからごめんね。もうちょっと前から孤児院を出る事は決まっていたんだけど、中々言い出せなかった。職員さんから伝えて貰おうとも思ったけど、私が直接伝えたいって思って職員さんにはしぃちゃんには言わないで貰っていました。
あの時しぃちゃんに話しかけて本当によかった。私も親に捨てられて孤児院に来たけど、しいちゃんのいる世界で本当に良かったです。いっぱい幸せでした。
しぃちゃんも私と同じくらい寂しくて悲しい気持ちだと思います。でも、しぃちゃんには前を向いて生きて欲しいです。私は誰よりもしぃちゃんの幸せを願っています...」
手紙には続きがあったが、私はそれ以上読む事はできなかった。滲んでしまったらいけないので、手紙を封筒に入れて、大切な物をしまっている箱に丁寧に入れた。
私は結局18歳まで孤児院で育った。就職のタイミングで孤児院を出る時、職員さんからその話を聞いた時、私はあの日と同じか、それ以上に驚愕した。
「みぃちゃんが...死んだ?」
話はこうだ。みぃちゃんが孤児院を離れたのは里親が見つかったからではなく、深刻な病が見つかったかららしい。治療のために病院に入院することになったのだが、みぃちゃんの病気は悪化し、死んでしまったらしい。
孤児院を出る際、みぃちゃんのお墓がある場所を教えてもらった。そのため、私は今10年ぶりに親友との再会を果たしている。
そこにはみぃちゃんのお墓があった。誰も掃除をしてないのだろう、他のお墓と比べるとみぃちゃんのお墓は汚れていた。私は念入りに掃除をした。
歳月が巡って私が死んで、生まれ変わったらあの声を辿ってまた逢いに行こう。
16.愛
私が言ったさよならのはずなのに、涙で頬を濡らしていたのは私の方だった。一方的にそれを告げられて傷ついたのは貴方の方なのに、最後まで私は自分勝手だった。貴方は優しいから、今日のことも昨日のことも消せないで生きて行くのでしょう。
でも私は自分勝手だから。自分勝手に貴方には幸せになって欲しいから、私は笑った。貴方の瞼に映し出される私が、最後に見た情景が悲観的なものにならないように泣きながら笑った。
帰り道、私は途方もない寂しさを感じていた。デートの終わりに感じる次に会う日の遠さを感じての寂しさではない。もう戻れない日常を惜しんでの寂しさだった。私は自分の影を見下ろした。
私は彼との理想の未来を心に浮かべる。私が普通の人間で、彼と別れる必要がなかったらどれだけ幸せだっただろうか。
今だけは彼の心が伽藍堂であることを願った。私と別れたことに何も感じることなく、2人で作り上げたキャンバスを真っ白に染め上げていて欲しかった。でも、彼はきっと違う。優しい彼は自分の何が悪かったのだろうと悩み、その場に立ち尽くしているかもしれない。そして、彼が染まるのは許しを乞うような白ではなく、深い藍の色だろう。
私は彼へのどうしようもない愛情を謳った。彼にはもう届かないとわかっているから一層、声を大きく謳った。同じ空の下にいる彼に届かなくても、私は声を枯らすまで謳った。誰がなんと言おうと私の彼への愛情は真実な物だった。それでも神様は残酷だ。やっと手に入れた幸せを手放さなければならないのだから。
私にはもう時間がなかった。それ以上でもそれ以下でもなく、言葉通り私に残された時間はもう底が見えていた。
私を夜空を睨みつけた。こんなに近くにあるのに手が届かないほど遠い物を私は呪った。
愛していたよ、誰よりも。
何よりも君を、愛していた。
それでも、さようなら。
彼女は僕に嘘をつき続けていた。最後は自分勝手な自分を演じて、僕を突き放した。それでも僕は、彼女の真意には気がついていた。ある日彼女のカバンから出ていた一枚の紙。それは病院から出された検査結果の用紙だった。彼女は癌だった。
僕はいつかお別れの日が来ることを覚悟していた。癌のことを知ったことを知られれば、彼女はすぐにでも別れを切り出すと思っていたから、僕は無知を装った。
今日という日がそのお別れの日だった。彼女は泣いていた。泣いていたが、最後には笑っていた。それが意味することを僕は知っている。
本当は引き留めたかった。病気と闘う君の隣にいたかった。けど君の覚悟を、僕の我儘な感情で踏み躙りたくなかった。
彼女の癌がどれほど深刻なレベルなのかはわからない。だが、もしも奇跡が起こって彼女の命が燃え尽きることがなかったら。彼女が生きてくれたら。自分勝手かもしれないけど、会いに行こう。
17.自由に話す部活
「昨今の恋愛っていかがなものじゃない?」
「急にどうした童貞」
部室にて今日最初の会話はこれだった。
「いや考えてみろよ。最近のカップルって3ヶ月は続けば良いみたいな風潮がないか?」
「ちょっとわかるけど、それは俺らみたいな学生の話だろ」
「そう。俺は今学生の恋愛について語らっている」
「すごーく気が乗らないけど、この部活の趣旨ってそれだし、聞くよ」
ちなみに俺(風真宏樹)と悪友である結城純平は、ボードゲーム部である。うちの高校は部活動に入るのが原則なため、俺がサボるために部活を作りたいと言ったら純平ともう卒業したある先輩が力を貸してくれた。ちなみに俺らは今2年で、部員は後輩にもう1人いる。
「進級のタイミングで付き合った星野の相澤いるだろ?」
「バスケ部のお似合いカップルじゃねえか、それがどうした」
「俺は星野とまあまあ仲が良くてな、たまにあいつから惚気話を聞かされるんだ」
「そりゃ御愁傷様なこった」
「確かにあの喉が痛くなるほど甘ったるい惚気を聞かされた時は人中に拳を入れようとも思ったが、今はそうじゃない。最近になってあいつの愚痴が増えたことだ」
「楽しくなってきたな、続けて」
「LINEで[本当に好きなの?]とか、[まだ起きてる?]とか、[電話しよ]とか、最初のうちは嬉々として受け取ったメッセージも最近ではうざったいらしい」
「典型的だな。カップル、というか女ってどうしてあんなに愛情を試すような、確かめるような言動が多いんだろうな」
「好きじゃなきゃ付き合ってないだろ!俺は声を大にしていうぞ。お前が止めようとな」
「止めないし俺もその意見に賛同してるぞ。俺も高校に入ってから一度だけ付き合ったことがあったけど、ちょうど3ヶ月くらい経つと面倒に感じることが多くなるんだよな」
「なんなんだろうなその魔性の3ヶ月目。神の思し召し?」
「そんな大層なもんじゃないだろ。ただの倦怠期みたいなもんじゃろ、知らんけど」
「知らんけどっていうなよ関東人」
「生まれは関西なんだわ」
「まじ?」
「嘘」
「時間無駄にしたわ」
そんな話をしてると部室の扉が勢い良く開いた。
「おはようございまーす!」
後輩の阿久津真希がショートヘアーを揺らしながら入ってきた。
「おはよう阿久津。ちょうど今女性の意見が欲しかったところなんだ」
「なんの話してたんですかー?」
「いや宏樹、阿久津にそんな繊細な気持ちがあるとは思えない、この話はやめよう」
「めっちゃ失礼じゃないですか?」
そこはかとなくキレた視線で俺を睨みつける。いや、なんで俺?
とりあえず先ほど純平と話した内容を阿久津にも話した。
「あーなるほどです」
『まさか阿久津に繊細な乙女心があるってのか!?』
「そんなことでハマらないでください!それにどちらかというと、私もそういう面倒臭い女は苦手です」
「やっぱりか」
「さすがにな」
「さすがボードゲーム部のいかれたメンバーだぜ」
「さすまき」
「先輩たちオセロ盤で殴りますよ?」
それから俺たちはクソみたいな恋愛話に限らず、世の中の面倒臭いことについて語り合った。副教科のくせにやばい量の課題を押し付けてくる教師、バイト先で社員がやるべき仕事を押し付けられる瞬間、カレイの煮付け、ベッドに寝転んだ瞬間に喉の乾きに気がついた時、風真宏樹...
「いや、なんで俺?」
「お前は自覚がないかもしれんが、お前の性格は屈折しまくってるからな。面倒臭いぞ」
「だから彼女できないんじゃないですか?」
「はいキレた。刻み海苔ふりかけた」
「どういうことです?」
「乗り切ったって言いたいんだと思う。意味わからないし何も乗り切れてはないが」
「うるさい!俺は彼女なんか...」
『彼女なんか?』
俺の中の俺はそれを口に出すべきか悩んだ。それを叫ぶことによって自分の中の信念が折れてしまう恐怖、しかしそれを言うことによって有言実行につながるかもしれないという期待、俺はまさに天秤にかけられて「欲しいです」いた。
「心情描写に本音が漏れちゃってるよ」
「必死なんですね宏樹先輩も」
はーあ。彼女ほしいな。
18.絵画
その街の公園には、女性の顔を描き続けているお爺さんがいる。私が観察を続けた結果、そのお爺さんの描く女性の顔は表情や周りの風景などは変わっていたが、女性自体は一貫していた。お爺さんは「誰か」を描き続けていた。
私は美大生だ。街で噂になるほどの絵描きがいれば気になるのが性だろう。私がこの街に来て半年、私は観察だけを続けていたが、今日は思い切ってお爺さんに話を聞いてみようと思う。
「すみません、ちょっといいですか?」
私が声をかけるとお爺さんは筆を止めた。
「なんでしょうか」
とても優しい声音をしていた。
「突然すみません。実は私お爺さんが絵を描いている所ずっと見ていたんです」
「あゝ、そうですか。つまらないでしょう、老耄が描く絵なんて...」
「そんなことないです。とても素敵な絵です」
これはお世辞ではなく本心だ。実際お爺さんの描く絵は熟年故の技術が巧みに使われていた。
「ありがとうございます...それで、どういったご用件でしょうか?」
「失礼でしたら申し訳ないんですけど、ずっと同じ女性の顔を描いていますよね?その理由を教えて頂きたいのですが」
お爺さんはどこかハッとした表情で驚いていた。
「気がつきますか。そうですね、私はずっと同じ女性の顔を描き続けています」
一拍置いて、お爺さんは言葉を続ける。
「昔話になりますが、あまり面白いものではないですよ?」
「ぜひ聞かせてください」
話をまとめると、お爺さんには若い頃生涯を誓った恋人がいた。その女性とは大学で出会い、同じ美術の道を志すものとして互いに惹かれていった。
その女性は俗にいう天才だったらしい。絵のタッチやアイデアに色使いなど、あらゆる技術が卓越していたとお爺さんは言った。
大学在学中に交際を始め、大学卒業後も関係を続けていた。才能のあった女性は無事に画家となり、お爺さんは出版社に就職をした。決してお爺さんに才能がなかったわけではないが、とてつもない逸材が隣にいるということで自分自身は一般企業への就職を決めた。
社会人となり2年目、2人が25歳の時にお爺さんからプロポーズをした。そのプロポーズは無事に成功し、2人は結婚する事になった。
しかし不幸が起きた。女性が急逝したのだ。死因はくも膜下出血だった。お爺さんは悲しみに暮れた。
「それから私は彼女との日々を働きながら絵にしていきました。その時にはカメラもありませんでしたから、自分の大切な記憶を頼りに描き続けました。彼女の声や体温、性格などは正直遠い過去なのであまり覚えていませんが...笑った顔や怒った顔、悲しそうな顔に嬉しそうな、幸せそうな顔...彼女の様々な表情だけはいまだに忘れずに済んでいます。だから私は瞼の裏で微笑む彼女を描き続けています。
それでもいつか忘れてしまう時が来たら、自分の描いた絵を見返そうと思っています。彼女のことを思い出すために...」
19.偏見
「手でくしゃみとか咳抑えた後に、そのまま手すり掴む奴おるやん?あれどういうつもりなんだろうな」
「マスクしてるのに、くしゃみのタイミングだけマスク外すやついるよな。ああいうやつって射精するときにゴム外すんかな」
「大事なことなので一度しか言いませんっていう先生、どういう気持ちであれ言ってるんだろうな。大事なことなら二回言うとかプリントにするとか、それこそ現代なら電子化するとかあるのにな」
「カラオケ行った時に真っ先に君が代歌うやついるやん?あれが一番つまらないんだよな。滑ってる自分が面白いみたいなあの面を殴っていい法律はできていいと思う」
「ムカつくと言えばあれもだよな。新幹線でグリーン車乗ってるガキ。あれは将来人を収入で判断するぜ」
「にわかやんとか言ってくる界隈オタクいるけどさ、にわかじゃない時期ってなんやねん。最初から詳しいやつなんているわけがないじゃんか、それなのに馬鹿の一つ覚えみたいににわかにわかって、人生にわかやん」
「海外への無謀な憧れを抱く奴とかもいるよな。ああいうのは海外のお国柄があるから成りなっているのであって、我が国日本じゃ通用しないんだよな。まあでも勘違いしないでもらいたいのは例えここが海外でもお前じゃ無理やってことだな」
「一蘭で逆張りでラーメン食べない奴とかいるよな。そこに希少価値はないというのに」
「おい待てそれはこの文章を書いてる奴の話だ。1000円だけ持っていったら足りなくて涙を流しながら焼豚と米食ったんだぞ、美味かった」
「まあつまり、あれだよな。俺らがおかしいと思っている行動にも何かしらの理由があって、偏見で語る俺らが1番悪ってことだよな」
「全然まとまってないわ。でも、偏見で語らないようにってのは賛成だな」
「でも俺の人生観は統計に基づいた偏見、未知なるものはまず先入観のみで語る、だぞ」
「クソ野郎だなお前、一遍死んでから蘇ってもう一遍死ね」
「みんなは暴言を口に出さないようにしよう!心の中で言うなら自由だぞ⭐︎」
20.呼吸
どこまで行っても他人は他人で、自分以外の人間は蚊帳の外なのだろう。現代社会ではそのことを強く実感する。
生きるための嘘はいつの日か嘘なのか本音なのかわからなくなってしまった。浅い呼吸は仕方なしに行なっている。
必死になって頑張ったところで、味方がいるとは限らないし、傷の舐め合いをすることさえ叶わない。二色に分けることが困難になった時代で、人々は有り余る矛盾を秘めている。
電灯がゆらめく夜の街で、かすかに見えるのはあの日の自分の影だろうか。蜃気楼を前に命の価値を測ろうとするも、触れようとする前に手から溢れてしまう。
命に歯止めは効かない。一度の失敗で死に至る場合を少なくはない。人は他人を必要以上に吊し上げ、悪ではないというだけの立場を利用して他人に銃を突きつける。こうなってしまうと誰が正義で誰が悪かわからなくなってしまう。いや、もしかしたらどちらも悪、はたまた正義なのかもしれない。
私たちは臆病で卑怯な性格をしている。常に窓を閉め切って外界からの接触を拒否している。換気もされてなく内側は嫌な空気を漂わせている。窓の外から見える景色が安全だとわかれば得意顔で窓を開けて声を挙げる。その瞬間に初めて換気がされ気分は晴れやかになる。それが他者の吐いた恨み言だとしてもだ。
ふと、今の世界は子供の頃におもちゃで散らかした部屋に似ていると思った。子供は数多のおもちゃに押しつぶされてるようにも見えるが、本人は好きなものに囲まれていて幸せな気分だ。自分から片付けようと、親の指示で片付けようと翌日にはまた遊んで散らかしてしまう。
一人ぼっちで孤独を抱えてでも膝を曲げて飛ぶべきか、棒立ちで薄汚れた酸素を吸い続けるか、どちらが健全かは私程度にはわからない。
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