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第一章 《英雄(不本意)の誕生編》
第4話 いざ、編入試験
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《リクス視点》
「はぁ……だりぃ」
俺は、ただただ無気力にそう呟いた。
英雄学校は、王都の中央にある。
リクスの家は王都郊外にあるため、そこそこの距離があるのだ。
別に体力を奪われるわけではないが、ただひたすら歩く時間がダルすぎる。
今暮らしている家は、両親の遺産。
姉さんの給料なら、王都の一等地にドデカい家を買えるはずなのに、頑なに引っ越そうとはしない。
姉さんいわく「毎日走って登校することで、体力をつけるため」という理由で、引っ越しをしないのだとか。
『受験票持ちましたか?』
ふと、頭の中に直接声が響く。
俺は胸にぶら下げたルビーのペンダントを見ながら、「ああ。持ったよ」と答えた。
声の主はマクラ。
今は姿を小さくして、ペンダントの宝石の中にいるのだ。
『剣は?』
「持ったよ。安物だけど」
腰に下げた剣の柄に触れる。
満足そうに笑うマクラの気配を感じながら、俺は英雄学校へ向かった。
△▼△▼△▼
ラマンダルス王立英雄学校。
三年制で全校生徒は3822名。優れた魔法剣士や魔法使いを育成することを目的とした、歴史ある学校である。
王国でも200はある英雄学校の頂点にして最難関。
定員1200名と多いにもかかわらず、入試倍率は脅威の70倍。入学するだけでも誉れとなる、まさに誰しも憧れる名門校なのだ。
それだけに、年二回行われる編入試験さえ、倍率は50倍を超える。
そんなとんでもない場所に、俺は来てしまったのだ。
「なんだこれ。城かよ」
とてつもなく大きな白塗りの校舎を見上げ、俺はそうぼやいた。
デカい。
無駄にデカすぎる。
校舎にバカみたいな金額を費やすなら、少しくらい俺に分けてくれと思った。
敷地のど真ん中に我が物顔で立っている噴水とか石像、絶対いらんだろ。
そんな冷めた感想を抱きながら、俺は受付を済ませた。
――編入試験の内容は、面接と実技試験の二つ。
まずは面接。
俺は係の女生徒に連れられて、教室前の廊下に待機した。
やがて、面接官が「どうぞ」と入室を促す。
俺は一言「失礼しまーす」と言って扉を開け、中に入った。
中にいたのは、初老のじいさんだ。
長い髭を蓄え、目元には深い皺が刻まれている。
たぶん偉い人だ。
俺は面接官のじいさんの前にあるイスに腰を下ろす。
すると、それを待っていたかのようにじいさんが口を開いた。
「えーでは、名前を教えてください」
「リクスです」
「リクスくん。本校を志望した動機は何かな?」
「えーと……」
動機?
動機ってなんだ。
俺は家で寝て、ゲームして、タダ飯喰らって生きていたいだけなんだ。
この学校に入りたい理由なんてないんだけど。
あ、でもこの学校の編入試験を受けなければならなくなった動機なら答えられる。
俺は、面接官の方を向いて自信たっぷりに答えた。
「はい。姉に無理矢理受験させられました!」
「はぁ……だりぃ」
俺は、ただただ無気力にそう呟いた。
英雄学校は、王都の中央にある。
リクスの家は王都郊外にあるため、そこそこの距離があるのだ。
別に体力を奪われるわけではないが、ただひたすら歩く時間がダルすぎる。
今暮らしている家は、両親の遺産。
姉さんの給料なら、王都の一等地にドデカい家を買えるはずなのに、頑なに引っ越そうとはしない。
姉さんいわく「毎日走って登校することで、体力をつけるため」という理由で、引っ越しをしないのだとか。
『受験票持ちましたか?』
ふと、頭の中に直接声が響く。
俺は胸にぶら下げたルビーのペンダントを見ながら、「ああ。持ったよ」と答えた。
声の主はマクラ。
今は姿を小さくして、ペンダントの宝石の中にいるのだ。
『剣は?』
「持ったよ。安物だけど」
腰に下げた剣の柄に触れる。
満足そうに笑うマクラの気配を感じながら、俺は英雄学校へ向かった。
△▼△▼△▼
ラマンダルス王立英雄学校。
三年制で全校生徒は3822名。優れた魔法剣士や魔法使いを育成することを目的とした、歴史ある学校である。
王国でも200はある英雄学校の頂点にして最難関。
定員1200名と多いにもかかわらず、入試倍率は脅威の70倍。入学するだけでも誉れとなる、まさに誰しも憧れる名門校なのだ。
それだけに、年二回行われる編入試験さえ、倍率は50倍を超える。
そんなとんでもない場所に、俺は来てしまったのだ。
「なんだこれ。城かよ」
とてつもなく大きな白塗りの校舎を見上げ、俺はそうぼやいた。
デカい。
無駄にデカすぎる。
校舎にバカみたいな金額を費やすなら、少しくらい俺に分けてくれと思った。
敷地のど真ん中に我が物顔で立っている噴水とか石像、絶対いらんだろ。
そんな冷めた感想を抱きながら、俺は受付を済ませた。
――編入試験の内容は、面接と実技試験の二つ。
まずは面接。
俺は係の女生徒に連れられて、教室前の廊下に待機した。
やがて、面接官が「どうぞ」と入室を促す。
俺は一言「失礼しまーす」と言って扉を開け、中に入った。
中にいたのは、初老のじいさんだ。
長い髭を蓄え、目元には深い皺が刻まれている。
たぶん偉い人だ。
俺は面接官のじいさんの前にあるイスに腰を下ろす。
すると、それを待っていたかのようにじいさんが口を開いた。
「えーでは、名前を教えてください」
「リクスです」
「リクスくん。本校を志望した動機は何かな?」
「えーと……」
動機?
動機ってなんだ。
俺は家で寝て、ゲームして、タダ飯喰らって生きていたいだけなんだ。
この学校に入りたい理由なんてないんだけど。
あ、でもこの学校の編入試験を受けなければならなくなった動機なら答えられる。
俺は、面接官の方を向いて自信たっぷりに答えた。
「はい。姉に無理矢理受験させられました!」
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