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第二章 《友好舞踏会》の騒乱編
第46話 《紫志封じ》
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ツォーンが取り出したのは、拳銃のグリップのような形をした起動装置のようなものだった。
SF映画とかでよく見る、ボタンを押すと爆弾が作動したりするアレだ。
「それは? 何かの起動装置みたいだが……」
「流石に察しが良いな。これは……この会場に仕掛けた爆弾の起動装置だ」
ツォーンは、口の端を吊り上げて得意げに言ってみせる。
「なんだと……!?」
「ちなみに、どう頑張っても解除は不可能だ。探し出して破壊することもできん」
「その理由は?」
「爆弾の設置場所は……私の部下達の体内だからだ」
「!?」
俺が目を見開くと、ツォーンはこれ見よがしに満足そうな顔をした。
「ふははっ、驚いただろう? しかも、爆弾は心臓と完全に融合している。どう頑張っても解除は不可能だ。本来なら、私自身が独自で考えたこの作戦を使うこともなかったが……貴様というイレギュラーが現れてしまったからな。致し方あるまい」
「念には念を押していた、ということ?」
「そういうことさ。作戦指揮官とは、常に最悪の状況を想定して動くもの。だが、誇っていいぞ? 貴様は……この私に切り札を使わせたのだ」
俺は、状況を瞬時に分析する。
「……もし爆弾がすべて爆発すれば、爆弾となった公国の人間はもちろん、王国の人間も俺の部下達も全滅する。リスクは負うが、確実に戦争は起こせるテロ計画だな」
「そういうことだ。どう足搔いても貴様に勝ち目はないと、理解しただろう?」
ツォーンは、勝ち誇ったように力説する。
「ああ。だけど、お前がそのスイッチを押すより早く、俺がお前を倒せばいいだけの話だ」
「なに?」
「《紫志封じ》っ!」
刹那、俺を中心に紫色の光が波及する。
《紫炎》で生み出した紫色の炎を薄く広げた、結界のようなものだ。
その光は瞬きをするよりも短い、ほんの僅かな時間で、《友好舞踏会》の会場全体を覆い尽くした。
「っ、しまっ――」
ツォーンは、警戒して一歩後ずさる。
が――何も起きない。
紫色の光模様が、辺り一帯屋外プールの底のように揺らめいているだけ。
ツォーンを焼き尽くしたり、縛り付けたりする様子が全くない。
「ふふ、ははは……あはははははっ!」
ツォーンは、不意に高笑いをすると、装置を握りしめて勝ち誇ったように言った。
「どうやら貴様の技は不発だったようだな!」
「ちぃっ! 《紫志封――」
「遅いわぁ! 爆破ッ!」
俺が再び《紫志封じ》を起動するより早く、ツォーンはスイッチを押した。
その瞬間、会場にいるツォーンの部下達の身体が青白く輝き、周囲の人々も巻き込む大爆発が――起きなかった。
「……は?」
ツォーンは、再びスイッチを押す。
カチリ。
確かに、奥まで押し込んだ証拠のクリック音が聞こえるのに、やはり何も起きない。
「ん? ……は、え?」
カチカチカチカチカチカチカチカチ。
壊れたロボットのように、スイッチを押しまくるツォーン。
が、その連打も虚しく、やはり何も変化が起きない。
「な、なぜだ……まさか壊れたのか? いや、そんなはずはない。壊れるほど複雑な構造はとっていない。ならば何故……まさか!?」
ツォーンは、ようやくソレに気付いたらしく、俺の方を睨みつけた。
「貴様が何かしたのか!?」
「ご名答。《紫志封じ》は、お前を攻撃しようとして放った技じゃない。だから、魔法の起動に失敗して不発に終わったわけでもないんだ」
「では、まさかこれは……爆破を妨害する結界だとでも言うのか!」
「当たらずとも遠からずってとこかな。厳密には、お前がスイッチを押して爆弾に爆破命令を送るのを妨害している」
「なんだと!? それこそバカな!」
ツォーンは、動揺も露わに肩を振るわせる。
四天王のくせに、随分と情けない狼狽《うろた》え方だ。
「爆破命令は、私の固有魔力波長で送っているんだぞ! 妨害が可能だとすれば、私の固有魔力波長を寸分違わず解析し、それを打ち消せる専用の魔力相殺暗号を開発しなければ、実現不可能な芸当! そんなことが、一人間にできるものか!!」
「そんな話はどうでもいい。実際に、それができたから、お前は窮地に立たされている。それだけだろ?」
俺は、挑発するようにツォーンへ言い放った。
SF映画とかでよく見る、ボタンを押すと爆弾が作動したりするアレだ。
「それは? 何かの起動装置みたいだが……」
「流石に察しが良いな。これは……この会場に仕掛けた爆弾の起動装置だ」
ツォーンは、口の端を吊り上げて得意げに言ってみせる。
「なんだと……!?」
「ちなみに、どう頑張っても解除は不可能だ。探し出して破壊することもできん」
「その理由は?」
「爆弾の設置場所は……私の部下達の体内だからだ」
「!?」
俺が目を見開くと、ツォーンはこれ見よがしに満足そうな顔をした。
「ふははっ、驚いただろう? しかも、爆弾は心臓と完全に融合している。どう頑張っても解除は不可能だ。本来なら、私自身が独自で考えたこの作戦を使うこともなかったが……貴様というイレギュラーが現れてしまったからな。致し方あるまい」
「念には念を押していた、ということ?」
「そういうことさ。作戦指揮官とは、常に最悪の状況を想定して動くもの。だが、誇っていいぞ? 貴様は……この私に切り札を使わせたのだ」
俺は、状況を瞬時に分析する。
「……もし爆弾がすべて爆発すれば、爆弾となった公国の人間はもちろん、王国の人間も俺の部下達も全滅する。リスクは負うが、確実に戦争は起こせるテロ計画だな」
「そういうことだ。どう足搔いても貴様に勝ち目はないと、理解しただろう?」
ツォーンは、勝ち誇ったように力説する。
「ああ。だけど、お前がそのスイッチを押すより早く、俺がお前を倒せばいいだけの話だ」
「なに?」
「《紫志封じ》っ!」
刹那、俺を中心に紫色の光が波及する。
《紫炎》で生み出した紫色の炎を薄く広げた、結界のようなものだ。
その光は瞬きをするよりも短い、ほんの僅かな時間で、《友好舞踏会》の会場全体を覆い尽くした。
「っ、しまっ――」
ツォーンは、警戒して一歩後ずさる。
が――何も起きない。
紫色の光模様が、辺り一帯屋外プールの底のように揺らめいているだけ。
ツォーンを焼き尽くしたり、縛り付けたりする様子が全くない。
「ふふ、ははは……あはははははっ!」
ツォーンは、不意に高笑いをすると、装置を握りしめて勝ち誇ったように言った。
「どうやら貴様の技は不発だったようだな!」
「ちぃっ! 《紫志封――」
「遅いわぁ! 爆破ッ!」
俺が再び《紫志封じ》を起動するより早く、ツォーンはスイッチを押した。
その瞬間、会場にいるツォーンの部下達の身体が青白く輝き、周囲の人々も巻き込む大爆発が――起きなかった。
「……は?」
ツォーンは、再びスイッチを押す。
カチリ。
確かに、奥まで押し込んだ証拠のクリック音が聞こえるのに、やはり何も起きない。
「ん? ……は、え?」
カチカチカチカチカチカチカチカチ。
壊れたロボットのように、スイッチを押しまくるツォーン。
が、その連打も虚しく、やはり何も変化が起きない。
「な、なぜだ……まさか壊れたのか? いや、そんなはずはない。壊れるほど複雑な構造はとっていない。ならば何故……まさか!?」
ツォーンは、ようやくソレに気付いたらしく、俺の方を睨みつけた。
「貴様が何かしたのか!?」
「ご名答。《紫志封じ》は、お前を攻撃しようとして放った技じゃない。だから、魔法の起動に失敗して不発に終わったわけでもないんだ」
「では、まさかこれは……爆破を妨害する結界だとでも言うのか!」
「当たらずとも遠からずってとこかな。厳密には、お前がスイッチを押して爆弾に爆破命令を送るのを妨害している」
「なんだと!? それこそバカな!」
ツォーンは、動揺も露わに肩を振るわせる。
四天王のくせに、随分と情けない狼狽《うろた》え方だ。
「爆破命令は、私の固有魔力波長で送っているんだぞ! 妨害が可能だとすれば、私の固有魔力波長を寸分違わず解析し、それを打ち消せる専用の魔力相殺暗号を開発しなければ、実現不可能な芸当! そんなことが、一人間にできるものか!!」
「そんな話はどうでもいい。実際に、それができたから、お前は窮地に立たされている。それだけだろ?」
俺は、挑発するようにツォーンへ言い放った。
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